教育研修

病院薬剤業務における人材育成

当薬剤部では、将来地域医療を支えるリーダーとなる人材を育成するために、病院薬剤業務における人材育成に力を入れています。人材育成は、「初期教育」「キャリアアップ教育」「業務マネジメント教育」を育成の3本柱として3つの期間に分け行っています(図1参照)。「初期教育」は新入職者が薬剤師の基本的スキルを身に着けた薬剤師になるために、室ローテーション・集合研修により、病棟業務、夜勤業務に必要な基本的業務を習得します。次に、入職後5年目までの薬剤師に対しては「キャリアアップ教育」として、自立し活躍できる薬剤師になる事を目指します。そのために、5室以上の臨床薬剤業務(調剤室、注射薬払出室、製剤室等)を経験します。また、病棟業務においても内科系外科系含めた8診療科以上の複数診療科を経験することにより、幅広い疾患に対する薬物療法を習得することを目指します。最後に「業務マネジメント教育」として業務推進・改善能力を身に着けた薬剤師となることを目指します。そのために、各室長の下で室業務の課題解決や、薬剤部内や病院内の各部署との業務調整を経験することで、組織ガバナンスを理解した上での業務推進・改善能力を習得します。
これら育成の3本柱により、病院薬剤業務における人材育成を行い、将来地域医療を支えるリーダーとなる人材を目指すための育成を行っています。

薬剤師キャリア形成(認定資格や学位など)の支援

当薬剤部では、「入職時の薬剤師の夢を育てる」を育成のコンセプトとして、入職時に新人薬剤師が思い描く夢を持ち続けるために、認定・専門薬剤師や博士号といった薬剤師キャリア形成の組織的な支援をしています(図2参照)。昨今、多くの病院薬剤師は日々のタイムスケジュールに沿った臨床薬剤業務に追われています。入職3-4年目あたりになると、多忙な業務をこなす中で目標を見失う薬剤師が自然と現れてきます。そのような薬剤師を生み出さないために、初期教育後のキャリアアップ教育の中で認定・資格制度の教育やそれを目指すための職員管理を行い、本来、病院薬剤師として取得すべき日病薬病院薬学認定薬剤師などの認定資格やキャリアアップ教育修了後の数年先を見据えた専門薬剤師を取得させるための支援を行っています。具体的には、薬剤師職員の人材育成を組織的に推進する部署として、部内にキャリア支援室を設置しています。キャリア支援室員には、学位や認定・専門薬剤師を取得している薬剤主任3名を兼務で配置し、主に薬剤師職員の初期教育やキャリアアップ教育の進捗の定期的な把握や助言に加え、施設における診療報酬の算定とも関連付けた認定・専門薬剤師の育成計画の作成を担当しています。このようないくつかの実効性を高める仕組みを取り入れることで、認定・資格取得者も徐々に増えています。

初期教育

当薬剤部では、初期教育に特に力を入れています。初期教育は「集合研修」と「ローテーション研修」より構成されています。「集合研修」では、医療安全や感染症などの内容を、講義形式もしくは症例を用いた演習形式で学びます(表1参照)。 4月より、調剤室、注射薬払出室を中心に薬剤部の様々な部署を一期間ずつ「ローテーション研修」で学びます(表2参照)。ローテーション研修では、部署ごとに教育プログラムを組んでいるため、教育内容が均一になるようにしています。さらに、新人と指導薬剤師が面談する機会を設け、進捗状況を定期的に確認します。 新人は病棟薬剤業務も行います。ローテーション研修期間中より、入院患者さんの面談や持参薬の鑑別業務、服薬指導を行っています。 初期教育では、各部署での業務の実践にとどまらず、一つ一つの業務の意義を理解してもらうことを目的としています。

表1

項目研修内容
処方せん監査 過去の疑義照会事例の検討・処方解説
接遇 接遇・マナーに関する事項
キャリア支援 キャリア支援、認定専門薬剤師について
麻薬 麻薬の取り扱い
医療安全 インシデントレポートの記載方法
薬に関する医療事故事例
TDM(血中濃度解析) TDMにおける薬剤師の役割・症例検討
吸入指導 吸入指導の手順と実践
ICT(感染制御) ICTにおける薬剤師の役割・症例検討
NST(栄養療法) NSTにおける薬剤師の役割・症例検討
がん・緩和ケア がん領域における薬剤師の役割
緩和ケアにおける薬剤師の役割
臨床研究・倫理 当院における臨床研究と倫理
学会発表・論文投稿
・研究
その必要性について
日常業務での研究項目(過去の実績等)

表2

4/3~
4/7
4/10~
4/14
4/17~
4/21
4/24~
4/28
5/1~
5/2
調剤
(内服・外用)
注射払出 病棟
(持参薬鑑別)
調剤
(内服・外用)
病棟
(持参薬鑑別)
5/8~
5/12
5/15~
5/19
5/22~
7/14
7/18~
調剤
(内服・外用)
病棟
(鑑別・初回面談)
調剤・注射払出、
病棟関連
医薬品情報管理室、
通院治療室など

薬剤部セミナー(論文紹介・症例報告)

高度医療・先進医療を担う大学病院において薬剤業務の質的向上を目指して、論文紹介および症例報告を行っています。
論文紹介では、薬物治療に関する最新の知見を紹介し、皆で活発に議論しています。
症例報告では、直近で関わった症例を提示し、薬物治療の様々な問題点の洗い出しや解決方法について議論し、情報交換や知識の習得を図っています。先輩の薬剤師や各種認定・専門の資格を有する薬剤師が専門知識を活かして適切なアドバイスや質問をしてくれます。
2019年までは、参加者全員対面で行っていましたが、現在はzoomと対面のハイブリッドにてセミナーを開催し、実習生や他施設薬剤師の参加も可能となりました。
薬剤部ではそのような自己研鑽や研究活動を行うスペースとして、個人の机を利用することができます。

薬学部実務実習

実務実習

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当薬剤部では、薬学部5年生の実務実習生を積極的に受け入れています。モデルコアカリキュラムに準拠した内容にとどまらず、当院で実施している業務にも積極的に取り組んでもらっています。以下に内容の一部を示します。

項目研修内容
調剤室 内服薬、外用薬、注射薬の調剤実習を行います。基本的な業務ですが、患者さんの臨床検査値やバイタルサイン等を確認し、患者さん一人一人にとって適切な処方であるかを検討の上で調剤を行います。
医薬品管理室 毒薬、劇薬、麻薬、向精神薬、特定生物由来製剤等の取り扱いを、薬事関連法規と関連づけながら理解していきます。また、納品の際に医薬品卸売業者と話す機会があり、医療機関と医薬品卸売業者との関係を学ぶ機会もあります。
周術期薬物治療管理室 手術室における薬剤師業務を学びます。手術室には、厳重な管理を要する薬が数多くあります。手術室での薬剤師業務を学ぶことは、多くの薬学生にとって興味深い内容のようです。
医薬品情報管理室 当院での採用医薬品を決定する「薬事委員会」に参加します。そのための処方データ抽出、既存薬と比べた時の新薬の優劣の評価等を行います。また、「副作用報告」を行うことで、当院で発生した副作用が、どのように厚生労働省まで報告されるのかを学びます。
製剤室 中心静脈栄養(TPN)や院内製剤の調製等を学びます。特に、院内製剤は市販されていない薬を学生たちが自ら調製するため、多くの薬学生にとって興味深い内容のようです。
試験室 実際の患者さんの血中濃度を測定し、その結果を医師や病棟薬剤師にフィードバックし、処方提案や、今後の治療方針を検討します。
入院薬物治療管理室 病棟担当薬剤師の指導の下、患者さんを担当し、服薬指導、治療効果や副作用モニタリングを行います。病棟では医師や看護師とコミュニケーションをとることで、患者さんにとって最適な薬物療法の実践を学ぶことができます。
チーム医療 病棟業務を学ぶ中で、カンファレンスや回診に参加してもらうことがあります。また、救命救急センターのカンファレンスや、精神科病棟の回診にも参加してもらい、多職種間での意見交換を行います。
他部署見学 病院には薬剤部以外にも様々な部署があります。輸血部、放射線部、臨床検査部等を見学することにより、医療の全体像を理解することができます。
報告会 実務実習の最終週には、報告会を行います。報告会の前には、指導薬剤師によるプレゼンテーションの資料チェックやプレゼンテーションの練習を行うことで、分かりやすく伝える方法や質疑応答の技術を学びます。薬剤部員や教員達を前にした報告会では、薬学生の皆さんは緊張の中発表しますが、やり遂げた後の学生は皆、達成感に満ちあふれています。

アドバンスト実習

薬学部6年生によるアドバンスト実習に関しても、実務実習同様に積極的に受け入れています。病棟実習や研究テーマを含む実習内容は、学生自身と所属大学、当院薬剤部との話し合いの上で決定します。
これまでにアドバンスト実習で取り組んだ調査・研究の成果を学術大会や学術雑誌に発表しています(下記参照)。興味のある方はぜひご連絡下さい。

橋本麻衣子,瀬角りほ,三村享,春日恵理子,松本剛,本田孝行,濱本知之,山折 大,大森栄:基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生Escherichia coliを原因菌とする尿路感染症リスク因子の探索.日化療法誌.66;749-757,2018.

橋本麻衣子,瀬角りほ,三村享,春日恵理子,松本剛,本田孝行,濱本知之,山折 大,大森栄:ESBL産生E.coliを起因菌とする尿路感染症のリスク因子の探索.第25回日本医療薬学会年会,一般演題(口演),横浜市,2015年11月.

Hashimoto M, Maniwa N, Katsuyama Y, Mimura A, Kasuga E, Matsumoto T, Kanai S, Honda T, Takano A, Momose Y, Yamaori S, Ohmori S: The relationship between the use of meropenem, a carbapenem antimicrobial agent, and the P. aeruginosa resistance for meropenem. The 28th International Congress of Chemotherapy and Infection, Poster presentation, Yokohama (Japan), June 2013.

薬剤部研修生の募集

・薬剤師免許を有する者(もしくは取得予定者)
研修内容および期間につきましては、ご希望に沿って対応いたします。

希望者は下記にご連絡下さい。
TEL 0263-37-3021
メール hosp-pharmacy(at)shinshu-u.ac.jp

医学部臨床実習

臨床実習

医学科学生に対する臨床実習(クリニカルクラークシップ)を、4年次後半から5年次前半にかけて、隔週木、金曜日に行っています。
薬物療法時の薬剤部の役割を理解し、また処方から与薬までの各過程を把握し、適切な薬物療法を行う上で必要な注意点を知ることを目的として、実習を行っています。
主な実習項目は、調剤(処方せんの読み方、内服・外用薬・注射薬の調剤)、医薬品管理、医療安全と薬、処方鑑査、医薬品情報、バンコマイシンの薬物投与設計法、臨床研究におけるインフォームドコンセント、薬物代謝酵素の遺伝子多型解析です。

薬剤師の再教育

信大病院は薬剤師の再教育に積極的に取り組んでおり、薬局薬剤師に対して在宅TPNの無菌調製技術等を教育しています。これからは薬局でも在宅TPNの調製が必要になるため、TPNの知識、技術の習得は重要になると考えています。

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