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村井 淳 先生(東京急行電鉄株式会社 執行役員 人材戦略室長)の講義が行われました

村井 淳 先生(東京急行電鉄株式会社 執行役員 人材戦略室長)の講義が行われました

2018. 05.23

  • 現代産業論

 平成30年5月23日、平成30年度現代産業論 (産業論特論) 第5回の講義として、東京急行電鉄株式会社 執行役員 人材戦略室長 村井 淳氏から『東急の働き方改革 経営計画で目指す「ワークスタイル・イノベーション」』と題して講義が行われました。

 まず、御自身の紹介として、入社後1年間の鉄道現場研修をされたのち、主にブランドマネジメント(グループのブランドを担当)やホスピタリティ(ホテル・リゾート・海外を担当)にかかわる畑を経て、現在は東急電鉄本社の人事戦略を担当する人材戦略室長をしている旨述べられました。

 はじめに、東急グループの事業を紹介されました。東急グループは交通、不動産、生活サービスの3つの事業を核に、ホテル・リゾート事業など幅広く、お客様の生活環境創造にかかわる事業を展開しています。セグメント別営業収支比率をみると、鉄道が中核であるものの、交通事業は営業収益の18%であり、59%が生活サービス事業(百貨店やチェーンストア、CATVや広告など)を占めるなど、人々の暮らしに密着した「街づくりの会社」であると解説されました。
 社員構成としては、本社の従業員約4500人中、女性社員比率16%、女性管理職比率は5.7%となっています。
 中期3か年経営計画(2018年度~2020年度)に「サステナブルな人づくり」による「日本一働き続けたい会社」の実現を掲げています。そのキーワードとなるのは「ダイバーシティ」、「生産性向上」、「健康」、「イノベーション」であり、職住近接、子育てと仕事の両立など、働き方改革を自ら実践し、社会へ展開していると述べられました。

 数々の取り組みに対しては、社外からも高い評価を受けており、「イクメン企業アワード2015」には運輸業界初の特別奨励賞に選定、フレキシブルな勤務体系やマネジメント層への働きかけ、男性育休取得者数増加などの取り組みが評価されました。また、女性活躍推進に優れた上場企業を選定し発表される「なでしこ銘柄」には6年連続で選定され、今後も多様な人材が活躍できるダイバーシティマネジメント推進が期待されます。こうした非財務的指標が企業価値向上に貢献する時代となり、魅力ある企業として紹介することで投資価値の促進や、採用にも効果があると述べられました。

 これまで、時代と社員ニーズに応えて様々な制度の充実を図ってきており、1990年代に柔軟な休み方を導入し始め、2010年頃にはワークライフバランスの実現のためのスライド勤務やカムバック制度などを導入し、現在は企業価値向上を目的にダイバーシティマネジメントを推進しています。その背景として、女性の社会進出拡大や少子・高齢化の進行、グローバリゼーションの加速などの社会環境や東急の経営環境の変化を挙げられ、それに対応し、顧客マーケティング力の向上や質の高い労働力の確保、イノベーションに向けて、必然的にダイバーシティマネジメントの推進が必要となると述べられました。

 「ワークスタイル・イノベーション」を実現させるには、単に制度をつくればいいというものではなく、①制度(多様な人材が活躍できる制度設計)、②風土(あらゆる単位の組織で風通しが良い職場)、③マインド(社員全員が高い意欲と働きがいを持っている)の3点をうまく構築することが重要であると述べられました。そのためには、単に女性・外国人などの多様化(ダイバーシティ)が実現するだけでは不十分であり、それらの人々が受容・協力(インクルージョン)するようになって初めて、風土に根づきます。そのためには、多様な人材同士の「職場コミュニケーション活動」の再構築がカギとなることから、「トークto 〇〇」ではなく「トークwith 〇〇」を目指す新たなコミュニケーション活動(トークwith活動)を推進しているとお話しされました。

 次に、「東急版働き方改革」の具体的な取り組みを御紹介いただきました。
 時間に捉われない働き方として、スライド勤務や半日・時間休暇、バリュータイム、また、それらを組み合わせることで柔軟な働き方が実現され、業務効率化を促進することにもつながっています。在宅勤務の運用は、場所に捉われず通常勤務と同じ働き方が可能となり、今後さらに拡大が検討されています。
 その中でも特に、女性の働きやすい職場に向けた制度改革は、「女性だけが対象となる制度」であってはならないとの考え方が重要です。例えば、女性だけが育休を取りやすくても、それだけでは女性の働きやすい職場は実現せず、男性の育休取得も100%を目指すことが必要であると述べられ、具体的に、8か月の育休を取得中の男性社員のドキュメントを御紹介いただきました。
 また、風土改革のためには、単に制度を導入するだけではだめで、管理職から意識改革を図っていくことの重要性を指摘されました。そのため、役員および全管理職を対象としたイクボスセミナー、女性管理職フォーラムを開催したり、若手女性と女性管理職と交流会(かがやきwith)を開催しています。
 生産性向上のための取り組みとしては、鉄道事業におけるiPad・iPhoneの導入などICT環境の整備・拡充、会員制シェアオフィスの導入などを行っている旨説明されました。

 最後に、創立100周年を迎える2022年度に向け、働きがいがある仕事と働きやすい環境の整備、生産性向上とイノベーションの創出により「日本一働き続けたい会社」を実現するとともに、「ワークスタイル・イノベーションの進化」へ取り組み、御尽力されていかれると述べられ、講義を締めくくられました。

  • 東京急行電鉄(株) 執行役員 人材戦略室長 村井淳氏
  • 講義風景

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