信州大学附属図書館 信州大学附属図書館

過去・現在を未来へと架橋する「知のインフラ」を考えていくために

2020年6月4日

2020年の冬から、新型コロナウイルス感染症が世界中を席巻し、初夏が訪れた現在も、甚大な影響を及ぼし続けています。この感染症に関連して、亡くなられた世界中の方々に哀悼の意を表します。また、医療現場をはじめとする最前線の仕事に従事されている方々に深く感謝するとともに、私たちも含めたすべての生活者に、平穏な日常が戻ることを願っております。

私たちは今、新型コロナウイルス感染症対策の只中にいますが、過去には何度も、人類を脅かす感染症との闘いの歴史がありました。私たちは、先人の経験・叡知を礎にして、幾多の危機を乗り越え、社会の営為を積み重ねて来ました。この営みが形になった現物としての史・資料を、収集し、保存し、整理し、発信する役割を担っているのが、博物館・美術館、図書館・文書館などの文化施設、MLA(Museum, Library, Archives)です。今現在、この時も、記録し、保存されていく対象です。私たちMLAには、過去・現在を、未来へと架橋する責務があります。

しかし、新型コロナウイルス感染症拡大防止対策において、2020年4月から5月は、長野県内でも多くの社会活動が休止されました。MLA は、展示や資料・情報の提供、生涯学習・学校教育の場としての活用、収蔵物の保存も含め、いわゆる「三密」の環境を有しています。人々の健康と命を守ることが最優先である状況下、公衆衛生の観点からMLAも多くの施設と同様に、休館を余儀なくされました。この間、人々の生活に不可欠な文化施設として、それぞれの館が「オンラインでできること」等を工夫し、情報を発信し続けました。しかしながら、その役割を充分に果たすことができたとは言い難い状況です。

一方で、コロナ以前から、インターネットの普及は、MLAが相互に関わりながら新たな文化的貢献を果たす可能性を開いています。信州大学附属図書館、長野県立歴史館、長野県信濃美術館、県立長野図書館は、2016年に「信州 知の連携フォーラム」を発足させました。「長野県における知と学びに関わる各種機関が、信州における価値ある地域資源の共有化をはかり、新たな知識化・発信を通して、地域住民の学びを豊かにし、地域創生につなげていく」ことを目的とし、議論と実践の場を設けてきました。

その成果が「知のインフラ」として形になったのが、2020年4月1日に県立長野図書館からリリースした「信州ナレッジスクエア」です。自宅等に居ながらにして、「信州」を切り口としたMLAの情報探索が可能です。また、デジタル情報をきっかけに現物を知るナビゲーションの役割をも果たすものであり、今後さらに内容を充実させていく予定です。

MLAの活動が止まることは、楽しみを失うばかりでなく、未来を失うことに他なりません。withコロナと呼ばれる時代にあって、私たちは「信州 知の連携フォーラム」を通じて、皆さまとともに、新しい「知のインフラ」のあり方を考えていきたいと思っています。

皆さまのご支援を引き続き賜りますよう、どうぞよろしくお願いいたします。

信州 知の連携フォーラム
信州大学附属図書館長 渡邉 匡一
長野県立歴史館長   笹本 正治
長野県信濃美術館長  松本  透
県立長野図書館長   森 いづみ
前県立長野図書館長  平賀 研也