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理科学分野

概要

物理学、化学、生物学、地球学、物質循環学等の基礎科学をふまえて多様な分野の教育研究を行なっています。高度な専門知識と研究手法を身につけるため、主に講義と特別研究からなるカリキュラムにより教育を行います。学位論文のテーマに関する特別研究は、指導教員による綿密な指導・討論のもとで進められ、観察、実験、シミュレーション、理論、考察、プレゼンテーション、論文作成等の実践的研究手法を身につけることができます。これらを通して、さまざまな課題に対処できる、高度専門職業人としての見識と課題解決能力を獲得することができます。さらに、専門知識に基づいた論理的、批判的思考によって物事の本質を理解し、また説明する能力を身につけることができます。


主な研究テーマ



物理学ユニット


過去から未来、極大から極小、広汎な時空と物質の謎を理論的、実験的に解き明かすことを目指しています。


物性理論


私たちの身の回りにある物は多数の原子が集まってできています。原子1つを見てもその中には陽子や電子,中性子といったものがたくさん集まってできていますが、そこまで(それよりもっと)細かく考えるのが素粒子物理学であるのに対して、物性物理学では、多数の原子の集まりとして作られ、私たちが(だいたい)直接その多様性を実感できるような物の性質について研究を行っています。


磁性物理学


磁石が示す磁性(磁力)の主な原因は磁石を構成する原子に含まれる電子のスピンです。つまり電子をもつすべての元素が磁性を示すのですが、元素によって電子の数が異なり、磁性の種類や強さが異なります。たとえば鉄に代表される遷移元素の多くは磁気モーメントを持つため強い磁性を示し、磁石には必ず遷移元素が入っています。しかし、元素1つ1つの磁性が分かっても、物質の磁性を理解したことにはなりません。元素の組み合わせや、距離や配列により、お互いに及ぼしあう作用が異なってくるからです。電子が膨大な数(10の23乗個程度)集まった物質が作り出す磁性の多様性は無限にあるといって良いでしょう。同様に物質中の電子が作り出す興味深い現象としては超伝導がありますが、近年そのメカニズムに磁性が重要な役割を担うとして活発に議論されています。このように磁性は独立した研究分野ではなく、様々な物性現象と絡んで広がっていく魅力があり、応用面でも、磁石のみならず磁気冷凍材料や磁気記録など、多方面で新しい磁性材料の開発が求められています。


光物性


本研究室では,近年まで未開拓領域として取り残されていた唯一の電磁波領域である,"テラヘルツ領域"の電磁波における分光装置を開発し,その装置を用いて様々な物質の光学応答特性を研究しています。 さらに,人工的な微細構造を作製することにより,光・電磁波の自由なコントロール技術の確立を目指しています。具体的には,メタマテリアルや時間壁という新しい概念を用いて,テラヘルツ波を自在に制御することを目的として研究を行っています。

素粒子理論

素粒子物理学は,素粒子の運動や相互作用を支配する原理や法則を解明し,総合的・統一的に記述する理論体系を構築することを主な目標とします。その研究領域は,大統一理論,超対称理論,量子重力,超弦理論,M理論などの標準模型を超える理論の構築に留まらず,宇宙創成,インフレーション,宇宙の大規模構造や加速膨張,暗黒物質といった宇宙に関する謎の解明から量子基礎論,量子計算,量子情報の分野との学際的研究まで多岐に渡ります。

高エネルギー物理学

素粒子物理学(高エネルギー物理学)は自然のもっとも根元的な姿を追い求めています。現在,その研究は粒子加速器という謂わば「顕微鏡」により,原子の1億分の1程度の小ささまで「見る」ことができます。より小さな世界を見るため,粒子加速器には,粒子を加速し衝突させ,より高いエネルギー状態を作り出すことが求められています。この高エネルギー状態は小さな「ビッグバン」を再現しています。小さな世界を見ることは,ビッグバンに始まる宇宙の成り立ちを解明することにつながります。宇宙を創る実験,それが粒子加速器です。

宇宙線観測実験

当研究室では,宇宙線の観測を通して太陽地球間,太陽圏スケールの空間における物理を研究しています。 宇宙線は宇宙空間に存在する高エネルギーの荷電粒子(主に陽子)で,地球へは銀河磁場の影響によってほぼ等方的に飛来するのですが,その到来方向にはほんの僅かに異方性(等方的でないこと)が観測されます。 このような異方性を長期間にわたって観測することで太陽圏スケールの磁場構造やその変動を調べることができます。

観測天文学

宇宙には星や銀河のように明るく輝く天体がある一方で、自ら明るく輝かない物質(星間ガス、銀河間ガスなど)も大量に漂っています。このような物質は背後にある明るい天体(星やクェーサー)からの光を部分的に遮る効果を持つため、地球からは光の減衰(吸収線)として検出することができます。この吸収線を利用して、クェーサー自身の内部構造、宇宙の物質変遷の歴史、星間空間に漂う巨大分子、などを調べる研究を行なっています。 教員一覧



化学ユニット


分子及びその集合系の構造・性質・機能と、刺激に対する応答性・反応の基礎的な研究を通して、持続的発展の可能な社会の構築に寄与できる人材の養成を行っています。


分析化学


分析化学は、対象物がどのような元素や化合物から成るか、あるいはどのような性質をもっているか知るための、分離や計測といった実験法にかかわる学問領域です。化学のあらゆる分野における方法論的基盤を与えるだけでなく、臨床分析、食品分析、環境分析等、社会の様々な場面に貢献しています。当分野は、分析化学関連の授業・実験・演習を担当しています。また、電気化学分析を中心に、レーザー光、超音波、化学発光、油水界面、酵素反応などを組み合わせた、新しい分析法の研究を行っています。


無機化学


無機化学では周期表に並んでいる全ての元素を扱いますが、元素とその化合物は無限に存在するので、これらの性質をひとつひとつ理解するこすることは到底できません。そこでまず、原子の構造や成り立ち、原子間に形成される化学結合、分子構造とそれに関連する性質についての基本原理を習得します。その後、各元素・同位体とその代表的な化合物の性質を理解しながら、多岐にわたる化合物や化学現象に対する洞察力も身につけます。無機化合物の合成や精製・同定に必要な基礎的な実験操作も習得し、固体の結晶構造や分子運動の解析、同位体の分離・濃縮、生体関連無機化合物の構造と性質についての研究に取り組みます。


有機化学


有機化学は、炭素および水素を主たる構成元素とする有機化合物を対象とする研究分野です。「有機」という名称は元々生物を起源とする物質を示していたことに由来しますが、現代では、起源にかかわらず上記のように炭素および水素を主たる構成元素とし、窒素、酸素、硫黄、リン、ハロゲン、ケイ素、ホウ素などの元素からなる幅広い化合物群が有機化合物の範囲に含まれます。より具体的には、生体内の化合物から、医農薬品、香料・化粧品・洗剤、色素・染料、高分子原料、燃料・潤滑油類等身の回りのあらゆるところにある様々物質が有機化合物です。
大学の研究では、新しい有機化合物を合成して、その性質や機能性を調べることに主眼をおいています。未知物質の合成は容易でない場合が多く、合成の際には新しい手法を検討したり、合成反応の機構を詳しく調べることもあります。困難が多い程、学ぶことも多く、達成できた時は大きな喜びが得られます。


物理化学


物理化学はさまざまな化学現象をモデル化し、精密な機器測定や数式の力を借りてその本質を解き明かそうとする学問です。近年、物質科学はめざましく発展しており、新しい化学物質や化学現象が私たちの生活の中で利用されています。それらの性質や効率を決める重要な現象の多くが、物質と物質が接する「界面」にあるわずか数分子分の厚さの領域で生じています。
私たちは、新しい測定法を開発してこの界面で生じている分子現象を理解し、また磁場をはじめとする外場を利用して界面や物質内部での現象を制御し、新しい現象や物質を見出すことを目指しています。
教員一覧



地球学ユニット


地殻に現れるさまざまな現象と歩んできた歴史の解明を研究目標に掲げ、地圏システムを支配する法則を導き出す。フィールドに見られる複雑な自然現象を把握し、物理学をはじめ様々な分野の知識と方法論を駆使して、自然の複雑な問題を解決できる人材の養成を行っています。


地層科学


地層科学分野は、地球の過去・現在の姿を理解して、地球歴史から私たちの将来を考えるうえで必要な情報を発見し、それを社会に提供していく学問分野です。地球環境の急激な変化やさまざまな災害から身を守り地球規模の課題に取り組むために、地球に関する知識を蓄え、自然の営みを解明することが私たちに求められています。
地球の活動は地殻変動や台風、地震、旱魃(かんばつ)と多岐にわたります。しかも、それぞれの現象はお互いに無関係に見えても、実はさまざまなところで密接な関係を持っています。日本で見られる気候変動が、南アメリカ沖の海水温と関係していること(エルニーニョやラニーニャ)はその好例です。こういった地球の活動の複雑さは、お互いに全く無関係に見える現象が、最終的には密接に関連していることを示しています。
地層科学分野では過去の環境やその歴史を記録した地層や岩石、そして化石などから、地球環境の変遷を解明し、お互いの現象の関連性を解明して、未来への道しるべを導き出します。


地球物質科学


地球の活動を知ることは、私たちの現在や未来を知ることでもあります。地球の活動は目に見えない地殻変動から大規模な火山活動や大地震といったものまで様々です。
北アルプスを作る岩石は過去のプレートテクトニクスによる地殻変動やマグマ活動を記録しながら、焼岳のような新たな火山活動の土台となっています。美しい田園風景として知られる松本盆地は、非常に活動的な断層によって作られた地形であり、その変動は現在も継続しています。
これらの地球の活動は、人間の生存期間よりも遙かに長い時間をかけて生じています。現在、地下で起こっているマグマ活動や地殻変動を知るには、岩石や鉱物に記録された事実を見いだし、そのメカニズムを解明する必要があります。まさに、地球の活動記録の地道な探求が、現在や未来を知る鍵となります。
教員一覧



生物学ユニット


多様な生態・進化のしくみを考えるマクロの視点、生命にユニークな遺伝・発生・生理を考えるミクロの視点から、世界を驚かす生きもの研究に挑んでいます。




植物生態学


自然の植物群集では多くの種が共存しており,たがいに影響しあっています.また,気象条件なども植物群集に大きく影響しています.植物生態学分野では,植物個体群の維持機構,植物の群集構造の形成機構,植物個体の環境適応,植生分布の形成機構,温暖化の植生分布への影響評価,外来植物の在来植物への影響などを,幅広く調べています.亜高山帯や高山帯の木本と草本植物を中心に研究していますが,低地の植物も研究しています.研究手法として,野外での植物個体群の個体群動態の測定,光合成や蒸散などの生理生態,年輪年代学,遺伝学的な方法などさまざまです.また,野外での測定,室内実験,栽培実験などを組み合わせて研究を行っています.


系統進化学


今日の多様な生物の世界は,38億年にもおよぶ永い生命史におけるたくさんの試行錯誤があり,自然選択や偶然性も作用して築かれたと考えられます.過去に起こったこれらの進化プロセスを精確に究明することは困難な作業ですが,表現型の類似性やその形態形成(発生)プロセスの類似性,遺伝情報の類似性などといった多方面からのアプローチを行いながら,より信頼性の高い系統進化のプロセスを解き明かすのが系統進化学です.昆虫類がどのようにして起源したのか? 飛翔能力をどのように獲得したのか? などといった「大進化」から,種分化や地域集団レベルでの遺伝的分化などに至るまでの様々なスケールでの系統進化現象の解明に取り組んでいます.




生殖生物学


多くの脊椎動物には雄と雌がおり、種によっては外観から見分けることができます。これは主に成熟した個体に発達する二次性徴によります。一方、二次性徴とは別に繁殖期にだけ見られる婚姻色という形態も存在します。これらはどのように生殖行動へ関わっているのでしょうか。さらにヒトのように性染色体の構成により遺伝的に性が決まる種でも、下等脊椎動物の場合には人為的に遺伝的性とは異なる性へ分化させる、つまり性転換を誘導することができます。そのメカニズムはどうなっているのでしょうか。メダカ属のいろいろな種を用いてこれらについて研究を進めています。


分子共生生物学


「共生」と「代謝産物」をキーワードにして、植物のもつ様々な不思議を分子生物学的、生化学的に解明しようと研究を進めています。


遺伝教育


遺伝の仕組みを体験するための教材開発と、DNAの「動き」に関わる様々な経路の関係について研究しています。


植物寄生菌学


植物に寄生する菌類についてその分類や生態を明らかにするとともに、宿主と寄生者の相互作用や共進化に関する研究を進めています。


分子光遺伝学


光で生命現象を操作する研究をしています。


鳥類生態学


おもに河川や湖沼に棲む鳥類を対象に、環境利用や食物、遺伝子など、さまざまな研究に取り組んでいます。鳥たちがそこにあり続けるのはどんな要素が必要なのでしょうか。それを考えることは、人間社会と自然とのつき合い方を考えるきっかけになるかもしれません。


進化人類学


進化人類学(Evolutionary Anthropology)は、「我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこへ行くのか」を探る学問です。ヒトを含む霊長類の行動観察を軸とし、研究目的に応じてゲノム解析、安定同位体分析、非接触バイタルセンシング技術等を組み合わせて、ヒトを含む霊長類の生態と進化史の解明に取り組んでいます。
教員一覧




物質循環学ユニット


地球表層における、地圏・水圏・気圏および生物圏の諸現象を物質循環の視点から研究を行っています。


地球システム解析


大気圏・水圏・地圏における物質循環を軸とした地球科学的研究。侵食・堆積による地表環境の形成過程および堆積環境の復元,大気環境の形成や大気と地表面間のガス交換,森林・山岳・雪氷域の水文循環の研究を含む。信州の地の利を活かした山岳地域をフィールドにした研究が多いのも特徴。


生態システム解析


生態系における物質循環を生物過程の視点から研究。微生物群集の役割,湖沼生態系における毒性物質の挙動,有害化学物質汚染など人為的環境改変が水域生態系に及ぼす影響の評価,地下圏における微生物活動,鳥類を取り巻く生態系,森林生態系における根系の発達と機能に関する研究など。
教員一覧


基礎となる学部・学科

理学部理学科物理学コース
理学部理学科化学コース
理学部理学科地球学コース
理学部理学科生物学コース
理学部理学科物質循環学コース