ナノ材料で環境、エネルギー問題に挑む

杉本 渉
教員氏名 杉本 渉
職名 教授
所属 化学・材料学科
研究分野

材料化学 (無機工業材料、機能材料・デバイス)、材料工学 (無機材料・物性)

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一言コメント

燃料電池やスーパーキャパシタは持続可能な水素エネルギー社会と低炭素社会の構築に貢献すると期待されています。電気化学エネルギー変換と蓄積に用いる新規無機材料やその合成プロセスの研究開発を行っています。

研究紹介

小は大を兼ねる? 次世代の電池技術の最前線。燃料電池やスーパーキャパシタ用ナノ材料開発

"小さなモノで大きなエネルギー ~ナノ材料で環境・エネルギー問題に挑む~" このキャッチフレーズを合言葉に、日々教育研究に励んでいます。例えば私たちがつくる燃料電池の心臓部ともいえるナノ触媒は、数ナノメートル (1ナノメートルは10億分の1メートル) しかありません。つくった電気は、瞬時にスーパーキャパシタに貯めます。スーパーキャパシタはナノ材料の表面を利用した新しい蓄電技術であり、秒単位での蓄電が可能になります。小さいからこそ良いことだってあるんです。

 

 
燃料電池に使用される白金ナノ触媒。燃料電池はCO2を排出せず、水素エネルギー社会を可能にするキーテクノロジーの1つ。   究極のナノ材料ともいえる酸化物ナノシートの原子間力顕微鏡像。一枚のナノシートの厚みは1ナノメートルに満たない。このナノ材料を使って一瞬で電気を貯める「超」急速充電可能なスーパーキャパシタを開発している。3秒で携帯電話が充電できるのも夢じゃない?

 

≪研究から広がる未来≫


資源に乏しい我が国の美しい自然環境を守りたい。環境負荷が少ない電気化学反応を利用することで、クリーンなエネルギーを生み出し、蓄積できます。私たちはこの反応を担う新しいナノ材料やその合成法、利用法を開拓しています。研究室では、基礎から応用まで深くかつ広く展開することで、学生は「生きる力」「グローバルマインド」を身に着け、+αの力をもった人財として社会に貢献しています。

白金触媒のムダを無くせ! モッタイナイ精神から産まれた「ナノシート触媒」

抜群の安定性と触媒活性を誇り、"触媒の王様" とも称される白金ですが、埋蔵量が限られ、高価であるという問題があります。そのため、ムダを出来るだけ無くすために、実用触媒は直径数nmのナノ粒子を用います。しかしながら、それでも表面に露出している白金は50%程度で、それよりも小さいナノ粒子は不安定です。平成31年4月、本学部で初めて "卓越教授 (DP)" の称号を授与された化学・材料学科の杉本 渉 教授の研究グループは、このモッタイナイ問題に対する解決策として『ナノシート触媒』を開発しました。このナノシート触媒は、従来のナノ粒子よりも白金利用率が高いだけでなく、二次元ナノ構造に由来する高い安定性を誇ります。

燃料電池触媒として用いた場合、従来よりも10~20倍高性能化 (白金使用量を90%カット) できます。現在、国家プロジェクトとして他大学や企業などと協同し、『ナノシート触媒』のさらなる高活性化に取り組んでいます。本研究に対する社会的注目度は高く、平成28年12月20日付の日本経済新聞や信濃毎日新聞に紹介記事が掲載されました。杉本教授の今後の実用化へ向けた取り組みに大きな期待が寄せられています。

(掲載期間 令和 2年 1・2月)