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トランスサイレチン型遺伝性アミロイドーシスの発症を早期に治療開始するための調査
2024年06月10日 [研究]
信州大学医学部内科学第三教室(関島良樹教授、中村勝哉講師、吉長恒明助教)、同附属病院遺伝子医療研究センター(古庄知己教授)らの研究グループは、指定難病のひとつであるトランスサイレチン型遺伝性アミロイドーシス(ATTRvアミロイドーシス、旧病名:家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP))に対する遺伝医療の現状を調査報告しました。近年、ATTRvアミロイドーシスに対する核酸医薬品など疾患の進行を抑制可能な新規医薬品の投与が可能になりました。 これらの治療薬は、発症早期に投与することでより高い効果が得られやすいことが期待されています。本研究では、ATTRvアミロイドーシスのat risk者に注目し、まだ発症が確認される前に十分な遺伝カウンセリングと遺伝子診断を行い、検査が陽性であった者に対するモニタリングを継続しました。この結果、臓器障害がまだ生じていない発症早期の時期から有効な治療を導入できていました。
さらに、遺伝子の変化を保有していた方では、発症する以前より血清中トランスサイレチン値が減少し始めていることが明らかになりました。
現在、他の遺伝性疾患においても病気の進行を抑制する疾患修飾薬の開発が進んでいますが、ATTRvアミロイドーシスと同様に、なるべく発症後の早い時期に治療を開始する必要があります。本研究により、遺伝カウンセリングと発症前遺伝子診断で自身の遺伝リスクを十分に理解し、発症早期の治療導入を目指す臨床遺伝学的アプローチの有効性が示され、at risk者の予後の改善に寄与するものと期待されます。
本研究成果は2024年5月25日に国際誌「Amyloid」のオンライン版に掲載されました。
【詳細】背景・研究成果・今後の予定など(PDF 194KB)
【論文】
タイトル:Genetic counseling for at-risk family members with hereditary transthyretin amyloidosis: data from a single center study
著者:Katsuya Nakamura, Tsuneaki Yoshinaga, Akiko Sakyu, Akira Matsushima, Yuka Yonehara, Tomomi Kojima, Masumi Ishikawa, Emiko Kise, Tomoki Kosho, Yoshiki Sekijima
掲載誌:Amyloid
DOI:10.1080/13506129.2024.2357094