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CASK異常症治療への新たな一歩:AIを用いて小脳低形成が起こるメカニズムを解明

2023年04月18日 [研究]

 田渕克彦教授(信州大学先鋭領域融合研究群バイオメディカル研究所ニューロヘルスイノベーション部門/医学部分子細胞生理学教室)らの研究チームが小脳の低形成を伴う神経発達障害であるCASK異常症(小児慢性特定疾病に指定)の病態メカニズムの一端を解明しました。未だ治療法が確立されていないCASK異常症治療への新たな一歩と考えています。本研究成果は、現在治療法が存在しないCASK異常症の小脳低形成に対する治療法開発につながる可能性があります。


【研究成果のポイント】
・小児慢性特定疾病であるCASK(キャスク)異常症の小脳低形成は、小脳にある顆粒細胞のアポトーシス(細胞死)が病態に大きく影響していることを見出しました。
・AI技術を用いた構造解析により、CASK異常症の患者から発見されたCASKのミスセンス変異(遺伝子変異の一種)が、Liprin-α2というシナプスタンパク質との結合を阻害していることを見出しました。
・CASK異常症の小脳顆粒細胞死にLiprin-α2を介した分子メカニズムが関与していることが明らかになりました。


【概要】
 CASK異常症は小児慢性特定疾病に指定されている小脳の低形成を伴う神経発達障害で、X染色体上の遺伝子であるCASK遺伝子の異常によって起こり、知的障害や自閉症症状、てんかんなどを伴うことが知られています。本研究では、CASK異常症のモデル動物を用いて病態の分子メカニズムの解明を試みました。CASKをノックアウトしたマウスから作成した小脳顆粒細胞の培養系を用い、CASK異常症で小脳の低形成が引き起こされる分子メカニズムについて探索しました。CASK欠損小脳顆粒細胞は、時間経過とともにアポトーシスを引き起こすことがわかりました。また、ヒトの患者から見つかった、ミスセンス変異を有するCASK遺伝子を、CASK欠損小脳顆粒細胞に導入すると、CaMキナーゼ内にある複数の変異で、アポトーシスがレスキューされませんでした。そのためCASKタンパク質においてどのような異常を起こしているかを、機械学習を用いたAI技術により構築した3次元構造モデルで解析したところ、これらの変異がLiprin-α2というシナプスタンパク質との結合を阻害していることが判明しました。これにより、CASK異常症における小脳顆粒細胞のアポトーシスに、Liprin-α2を介した分子メカニズムが関与していることが示唆されました。
 この研究成果は、科学誌Cellsに2023年4月18日付で掲載されました。


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プレスリリース(PDF 445KB)


【論文タイトルと著者】
タイトル:Structural analysis implicates CASK-Liprin-α2 interaction in cerebellar granular cell death in MICPCH syndrome.

著者:Qi Guo, Emi Kouyama-Suzuki, Yoshinori Shirai, Xueshan Cao, Toru Yanagawa, Takuma Mori, and Katsuhiko Tabuchi

掲載誌:Cells

論文URL:https://www.mdpi.com/2073-4409/12/8/1177

DOI:doi.org/10.3390/cells12081177

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