教員紹介

しのはら なるひこ

篠原 成彦

哲学・芸術論 教授

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書籍

『感情とクオリアの謎』

 オビの文句はこうだ。
 ・機械仕掛けのクオリアはいかにして可能か!?
 ・哲学のプロフェッショナル集団が気鋭の工学者たちを巻きこみ、「心の問題」に残された最後にして最大の謎に挑む!

 うーん、間違ってはいない。たしかにこれは、哲学でゴハンを食べている人たちが、人工知能学者とロボット工学者を仲間に引き入れて作った本だ。そして、感情とクオリアの謎は、途方に暮れるほど深い。だから、そう、間違ってはいない。だけど、なんなんだ、この違和感は。
 あ、わかった。
 そうやって「心の問題に残された最後にして最大の謎」に挑んでみたら、結果、グダグダになりました、っていうオチが伏せてある。だから私は違和感を覚えるんだ。ま、伏せてこそのオチだから、オビに文句を言うのはスジ違いだね。
 って、私が言うか。
 全体のグダグダ感にダメ押ししちゃってるのは、たぶん、この本の第9章を担当している私だ。この本の中で「親分」呼ばわりされてる学界のご意見番は、ク オリアの謎がその人工的な再現という手続きを通じて解かれることを目指しているのに、組員(?)の半分ぐらいは乗り気じゃなくて、挙げ句、「そんなもん、 言ってみりゃ幻想プロジェクトです」とほざくヤツまで現れる始末。はい、私がほざきました。
 だけど、どうか読者には、こういうグダグダの展開にこそ、問題の難しさと、哲学という業界の風通しのよさを見てほしい。我々が取り組んでいる問題は、ほ んとに難しいんだ。そして、巻末に収録された座談会をごらんあれ。そこには、出席者の「親分」に対する敬意と不同意がにこやかに同居している。ま、「親分」は後半ずっとプンスカ怒ってるけど、あれは、あの人の芸風だから。
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長滝・柴田・美濃編 『感情とクオリアの謎』(昭和堂, 2008年3月) ¥2500.

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