さわき もとえい
澤木 幹栄
教授
教員 BLOG
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最終講義には思いもかけず大勢の方にご来場いただき光栄でした。感謝申し上げます。 場所が学外だったので、いろいろな方がお見えになると予想し、できるかぎり楽しい話をしようと考えた。私の場合、どうしても駄洒落を言わないわけにいかない。皆さんの期待に応えるということもあるが。 それで思い出すのは金田一春彦先生のことである。 先生の講義の第一日目は「私は駄洒落を言うから皆さんそのつもりでいて下さい」というだけの内容だったが、次々に繰り出される駄洒落に教室は爆笑の連続だった。 ところが、そのうちに一人の女子学生が憤然と席を立ち、教室の外に飛び出していった。彼女はそのあと教室に戻ってくることはなかった。 私は何が起こったのか全く理解できなかったが、「世の中には駄洒落を聞くと怒る人がいる」と聞いたことを思い出した。駄洒落で笑わないで逆に怒る人をこのとき初めて見たのである。 今になって考えると、金田一先生は人が笑っているのをお喜びになる気持ちがとても強い人だったので、半分は自分の楽しみのためだったかもしれないが、先生のユーモアは難しい話をとっつきやすくするのにとても役立っていた。そうでなければ生前先生が国民的知名度を得ることもなかったろう。タレント教授と言われる人は今でもいるが、金田一先生のような方はいない。学問的水準でも、ユーモアでも。 最終講義のあとで気になって何人かの方に聞いてみた。皆さん駄洒落以外の私がお伝えしたかったことを正しくとらえていて感銘を受けた。40数年という時を隔てて金田一先生の教えが生きたのかもしれない。