教員紹介

もりやま しんや

護山 真也

哲学・芸術論 教授

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第4回因明科研研究会報告

研究会の概要

2017年3月23日,東京学芸大学において,第4回因明科研研究会が13:00-18:00の時間で開催されました。

最初に,小野基氏(筑波大学)より,ジネーンドラブッディの『集量論注』より再構成される『集量論』第6章および,それと平行関係にある『正理門論』「過類段」のサンスクリット語テキストの想定作業などについて,オーストリア科学アカデミーの室屋安孝氏・渡辺俊和氏との共同研究について報告がありました。そのなかで,シノプシスについて,従来の説とは異なる見解が提示されました。

続いて,師茂樹氏(花園大学)より「定賓による『如実論』十六難と『因明正理門論』十四過類の対応」の発表が行われました。

   

その後,『正理門論』「過類段」の「可得相似」(upalabdhisama)の個所を中心に,沙門宗の注釈と合わせて,解読を進めました。討論の場面で,こちら側が提示した推論式(「音声は無常である。意志的努力により作られたものであるから。壺のように」)に対して,対論者から「その理由は正しくない」という論難がなされます。対論者は,「なぜなら,意志的努力で作られたものではない稲妻などは,他の原因/理由によっても,その無常性が知られ得るから」として,その論難を根拠づけます。また,推論式の形で,その論難を根拠づける者もいたようです。しかし,そのいずれもが,最初に提示した推論式の理由が間違っていることを示すものではありません。立論者は,「対論者が言うことは「可得相似」という間違った論難です」と言えばよいわけです。

このような「可得相似」ですが,テキストは極めて難解です。今回,参加していただいた丸井浩氏(東京大学)をはじめ,参加者の皆さんから,様々な有益な意見が示されました。この個所では,ジャイナ教による樹木の精神性についての推論式も出ており,東アジア仏教のなかでジャイナ教のこと,インドの樹木のことなどについて,彼らなりの理解が示されていたところは,大変に興味深いものでした。

TSP研究会と拡大プラジュニャーカラグプタ研究会

この研究会に続き,3月24日には,志賀浄邦氏(京都産業大学)が中心となり,シャーンタラクシタの『真実綱要』とカマラシーラの『細注』の第9章「行為/業とその報い/結果の関係の考察」のテキスト解読が行われました。

そして,3月25-26日の両日には,拡大プラジュニャーカラグプタ研究会が開催されました。稲見正浩氏(東京学芸大学)が中心となり,プラジュニャーカラグプタの『プラマーナ・ヴァールッティカ・アランカーラ』第3章(知覚章)第3-4偈に対する注釈個所の解読が行われました。長い研究会を通して,解読の方法論が確立されたことで,関連するすべての資料に目を通しながら,読んでいきます。今回,写本欄外の記述が解読できたことは,大きな成果だったと思います。多くの人で一緒にひとつのテキストを読むことの大切さを痛感します。

この両日には,渡辺俊和氏によるnyunaに関する発表,小野基氏によるプラジュニャーカラグプタの年代に関する再検討,中須賀美幸氏(広島大学)によるavasthavisesaに関する発表も行われました。

この4日間に,桂紹隆氏,小林久泰氏・宇野智行氏(筑紫女学園大学),狩野恭氏(神戸女子大学),三代舞氏(早稲田大学)をはじめ,ウィーンやライプチヒなど,海外からの参加者もふくめ,多数の参加者がありました。ほとんど学会のようなものです。会場責任者である稲見正浩氏には,とりわけお世話になりました。本当にありがとうございます。

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