もりやま しんや
護山 真也
哲学・芸術論 教授
教員 BLOG
一覧を見るシリーズ 大乗仏教(春秋社)刊行スタート
全10巻の内容
大乗仏教研究の入門書の定番であった「講座 大乗仏教」(春秋社)の刊行から30年あまりが経過した今、大乗仏教研究の最新の成果を網羅したシリーズが刊行されます。その構成は以下の通り。 第1巻 大乗仏教とは何か 第2巻 大乗仏教の誕生 第3巻 大乗仏教の実践 第4巻 智慧/世界/ことば 第5巻 仏と浄土 第6巻 空と中観 第7巻 唯識と瑜伽行 第8巻 如来蔵と仏性 第9巻 認識論と論理学 第10巻 大乗仏教のアジア 私も第9巻に「全知者証明・輪廻の証明」と題して寄稿していますが、その刊行はもう少し先でしょう。
第1巻 大乗仏教とは何か

編者の一人である斎藤明先生より6月30日に刊行されたばかりの第一巻をご恵贈いただきました。第一巻の目次は以下のとおり。 第1章 大乗仏教とは何か(斎藤明) 第2章 経典研究の展開からみた大乗仏教(下田正弘) 第3章 大乗仏教起源論の展望(佐々木閑) 第4章 大乗仏説論の一断面―『大乗荘厳経論』の視点から(藤田祥道) 第5章 アフガニスタン写本からみた大乗仏教―大乗仏教資料論に代えて(松田和信) 第6章 漢語世界から照らされる仏教(下田正弘・ジャン・ナティエ) 第7章 中国における教判の形成と展開(藤井淳) 第8章 インド仏教思想史における大乗仏教―無と有との対論(桂紹隆) いずれも興味深い論考ばかりです。松田先生が書かれた第5章「アフガニスタン写本からみた大乗仏教」には、前回の「講座大乗仏教」から今にいたるまでに仏教文献学でおきた劇的な変化が次のように書かれています。 「本書の前身シリーズ「講座大乗仏教」の第一巻『大乗仏教とは何か』が刊行されたのは昭和56年(1981年)であった。それから現在に至る30年間に、大乗仏教研究に関連する文献資料の状況は大きく変化しつつあるように思われる。特に1990年代の中頃から現在に至る、サンスクリット語(梵語)とガンダーラ語による新たなインド語仏教写本の発見、特にパキスタンとアフガニスタンにまたがるガンダーラ、およびアフガニスタンのバーミヤーン渓谷における膨大な量の仏教写本の発見は、これまで多くの研究者たちによって積み重ねられてきた大乗仏教研究に加えて、インドの大乗仏教をめぐる、より正確でより重要な情報を私たちに次々ともたらしつつあるからである」(153頁) ここで言及されている写本の解読作業(現在進行中)から、松田先生は大乗仏教の成立についても興味深いコメントをされています。大乗仏教に関心のある方にとって必読のテキストです。