教員紹介

はやさか としひろ

早坂 俊廣

哲学・芸術論 教授

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中国関係

杭州便りその23

浙江図書館での展示会

一年近く中国に住んできましたが、まだまだ分からないことだらけです。いま一番わからないことに、いきなり「雷鋒に学べ」の大合唱が復活したことがあります。確かに今年は彼の没後50年に当たりますが、すごく唐突な感じがして戸惑っています。すご-く薄い知識しかないので、電子辞書に入っている『中日大辞典』(愛知大学/大修館書店)を利用しつつ説明しますと、「雷鋒」とは「解放軍瀋陽部隊工兵運輸隊の班長(1940~1962).1962年8月公務のため殉職・・・・・・.彼の平素の行動および職に殉ずる精神は衆の範とするに足るとして」、全国各地で「雷鋒に学べ」というキャンペーンが展開された、そのような人物なのです。

八つの栄誉、八つの恥

  思い起こせば、何ヶ月か前に、この雷鋒さんを主人公にした小説について、ネット上で若者が「こんな人がいるわけがない」とか何とか発言して、小説の作者が激怒したというような話を新聞で読んだ記憶があります。その時、正直に言って私も「今さら雷鋒でも無かろう」と思ったのですが、中央からお達しが出れば、今さらでも何でも「雷鋒に学べ」が復活するのです。ここ最近の杭州はずーと雨続き(ここ最近の雨続きは、この60年間で最強だそうです)ですが、昨日のテレビでは、雨の中、雷鋒精神に学んだ方たちのボランティア(「志願者」)活動が市内各所で大々的にセレモニーとして行われている様子が放送されていました。   前にもここに書きましたように、中国は「言葉の邦」です。町中の至る所に、様々な「呼びかけ」「訓辞」「キャッチフレーズ」があふれかえっています。もっとも、それを真剣に読んで写真に撮っているような人は私のような者ぐらいで、中国の皆さんはあまり気にとめていないようです。そして、その大らかさが中国社会のある種の健全さを保っているようにも見受けられます。権力者の方々が、或いは善意の人民が「ここに、ちゃんと書いてあるじゃないか! 守れよ!」と声高に叫び始めないことを願ってやみません。

情熱の赤いバラ・・・・・・すよね?

  なお、町中の「呼びかけ」で個人的に一番笑ったのが、右の写真です。「男女平等」は確かに「家庭の美徳」です。ただ、この絵、どう見ても「あたしンち」のタチバナさんたちだよなあ・・・・・・。作者の許可は取ったのかなあ・・・・・・。別のところには「文明的な礼儀正しい言葉を話しましょう」という呼びかけの横に、世界的に有名なねずみさん(ピカチュウじゃないほうです)の絵が添えられていました。もしそれが許可を得ていないのなら、あまり「文明的」でも「礼儀正しい」ことでもありません(どちらも、ちゃんと許可を取っているんだったら、ゴメンなさい。でも、その旨の表示が見当たらなかったもので・・・・・・)。「クレヨンしんちゃん」の問題でもそうですが、人が時間をかけて作り上げたものに対しては、敬意が払われて然るべきだと思います。でも、どうも今の中国には、残念ながらその点に対する意識が希薄で、「やったモン勝ち」の気風があるように感じられてなりません。「人が時間をかけて作り上げたものに対する敬意」、これって、中国の伝統文化を支えてきたものではなかったでしょうか?

見るたびに怒られてる気分になります

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