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高大連携哲学演習 ベジタリアンと命の価値―宮沢賢治『ビジテリアン大祭』を読む

2023年12月 3日開催

2023年11月16日更新

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イベント概要

長野吉田高校と共同開催する今年度の高大連携哲学演習は,宮沢賢治の『ビジテリアン大祭』を素材として,動物の命,植物の命,そして人間の命の価値について,高校生と大学生とでグループ・ディスカッションをする予定です。ほかにピーター・シンガー『動物の解放』(人文書院)も参考文献として用います。

開催日 2023年12月 3日
時間 13:00-15:00 ※日付に誤りがありました。3日が正しい日付です。お詫びして訂正いたします。
会場 信州大学 人文ホール
参加対象者 学生
参加料金 無料
参加者数及び内訳 信州大学学生10名(大学院1,哲学・芸術論コースの学生6名,人文学部1年生3名),長野吉田高校生3名,教員・保護者3名

イベントレポート

長野吉田高校との高大連携哲学演習も5年目を迎えました。今回は,長野吉田高校から教員・保護者をあわせて5名(+幼児2名)の方々に参加いただき,宮沢賢治の『ビジテリアン大祭』とピーター・シンガーの『動物の権利』を素材として,人間と動物の違い,動物と植物の違い,それらを超えて存在する命の価値について,自由なディスカッションを行いました。

最初に高校生の発表で,「シンガーの議論には共感する部分もあるが,その意見を他者に強要することはできるのか」という問題点が提起されました。続いて,大学1年生3名(梅津,鬼原,田邉)の発表では,『ビジテリアン大祭』のビジテリアンの意見,反ビジテリアンの意見が整理され,個々の論点がまとめられたのち,「動物は感情があると思っていてなお肉を食べている人がいるとすれば、なぜそれが可能なのでしょうか?」「自分の家族と猫が死にそうで、一方しか助けられない時、どうするべきでしょうか?」「すべての命は平等に価値があると考えるべきなのでしょうか?」「自分が可哀想だと思ったら、他者にとっても可哀想だと思ってしまうのはどうしてでしょうか?」という問題提起がされました。

高校生・大学1年生の問題提起を受けて,参加者は3つのグループに分かれて,ディスカッションを行います。世代や立場の違いを越えて,普段考えることのない問題に,自由な意見交換がなされました。「成長の過程を見守ったペットと,そうでない家畜の場合には,愛情の違いがあるのではないか」「心理的な距離の違いが,人間同士,人間と動物,を分けているのではないか」「人間であり,家族であるということは,特別なことではないか」「もしビジテリアンが多数派の国に生まれていたら,やはりビジテリアンを受け入れると思う」「同じビジテリアンを訴えるにしても,シンガーのような論調で伝えるのと,宮沢賢治のように開かれた議論のかたちで伝えるのでは違いがあるかも」など,様々な意見が出てきます。

みなさん,それぞれの考えを深める機会になったようで,なによりでした。宮沢賢治はこの話の終盤で「この世界は恐ろしいまでに真剣な世界なのだ」という言葉を記しています。人間・動物・植物の関係をつきつめていった先に,彼が見ようとしたものは,なにか生命の根源に触れる世界の実相だったのだと思います。今回の企画を通して,私たちもまた,その「真剣な世界」の一端を垣間見ることができたような気がしています。参加者のみなさん,ありがとうございました。

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