社会学分野の活動

社会学分野を目指す人へのFAQ

社会学分野への進級について考えている人に、当分野についてよく訊かれる質問(Frequently Asked Questions: FAQ)とその答えをまとめてみました。進路決定の参考にしてください。

最終更新日時:12月6日2:08

 

Q社会学という学問がどういう学問なのか今ひとつよくわかりません。

A:これはよくある質問の筆頭かもしれません。社会学という学問の定義や学問成立の契機について述べても、なお今ひとつピンと来ないと言われることが多いのです。そこで、社会学が扱う問題について述べたいと思います。それは、「この社会は、なぜ今あるようにあるのだろうか」、「社会はどんなメカニズムで動いているのだろうか」、「この社会をもっとよくするにはどうすればよいのだろうか。(そもそもよい社会とはどんな社会なのだろうか)」といった問題です。その中には「社会」という言葉が何度も出てきましたが、その部分を、あなたが関心を持っているさまざまな「社会現象」や「社会問題」に置き換えてみてください。それが社会学が扱う問題です。それに対して、社会学は、社会調査などを通して実証的に考えていきます。現代社会におけるさまざまな「現象」や「問題」について「実証的」に探究してみたい人は、社会学分野に是非どうぞ。

 

Q:社会学は、高校までの「現代社会」や「地理」とは違うのですか。

A:はい。全然違うといってもよいと思います。確かに扱っている対象は、歴史的な事柄よりも現代の事柄が多いですし、地域の地勢や経済についても扱いますが、それにもかかわらず、違っていると言えます。

社会学が扱うのは、「この社会は、なぜ今あるようにあるのだろうか」、「社会はどんなメカニズムで動いているのだろうか」、「この社会をもっとよくするにはどうすればよいのだろうか。(そもそもよい社会とはどんな社会なのだろうか)」といった問題です。社会学は、この社会に関わる何らかの仮説を立てて、それを科学的に検証しようと試みます。高校の「現代社会」や「地理」の知識は、このような問題を解くための手がかりになるかもしれませんが、おそらくその程度に過ぎません。

社会学においては、上記のような問題を扱うさいに、ある「理論」や「視点」から見れば、その問題がどのように見えるかを考えることが重要であると考えます。この点においても、鳥瞰的に広く知識を身につけることを目指す「現代社会」や「地理」の科目とは違うと言えるでしょう。

 

Q:社会学分野は、どのようなことをするのですか。特徴的なことを教えてください。

A:社会学分野で特徴的なのは、何といっても毎年2,3年生が中心に行う社会調査でしょう。信大の社会学分野は、他大学の社会学部/社会学科/社会学専攻と比べても、実証的な社会学を強く指向しています。ですから、調査に出かけていくのは、信大社会学教育の中核とも言えます。

ここから、いくつかの派生的な特徴が生じてきます。2,3年生が協同して調査を行いますが、2年生のときは3年生から教えてもらうことが多いです。3年生になると、逆に2年生にアドバイスをしたりしながら進めていきます。そのため、全体として、学年を越えて仲良くなりますし、コミュニケーションやマネジメントの仕方が上手になっていきます。教員も学生との日々のコミュニケーションを大切にし、研究室全体のよい雰囲気作りに努力しています。

4年生の卒論のテーマは、かなり自由度が高いです。2,3年生のときに培った調査の力を使って自分の卒論を書き上げていきます。

 

Q:今まであまり社会学分野に行こうと思っていなかったので「社会学概論」を取っていませんが、大丈夫でしょうか。入ってから問題なくやっていけるでしょうか。

A:ははは...(笑) 正直ですね。高校の時に「心理学」が学びたいと思う人は多いのですが、「社会学」を学びたいと思う人は、残念ながら少ないです。だから、あなたも1年次に「心理学概論」か「社会心理学概論」を取ったのですよね。あるいは、信大人文学部特有の「文化情報論」に魅力を感じて「文化情報学概論」を取ったのかもしれません。図星でしょ。うちの学生たちも、多かれ少なかれそんな感じですので... (苦笑) しかしながら、大学生になって少し視野が広がると、「いや、心理じゃなくて社会かも」とかいう心境の変化が生じる人も出てきます。それはそれで結構なことで、したがって、このような質問もよくあります。

本当は、「社会学概論」を1年次に取ってくれていて、それが面白いと思ったからという理由で社会学分野を希望してくれる人がいるなら、それは私たち社会学分野の教員にとっては、涙がちょちょぎれて教員冥利に尽きますが、説明会やウェブサイトの情報から、「社会学ってちょっと面白いかも」と思って志望してくれる人ももちろん歓迎します。また、もし時間があったら、辻の木曜日2限の「社会学概論」にもぐりで聴きに来てください。そして、その一端かもしれませんが、社会学について、少しだけ理解し、納得した上で志望してもらうとよいのではないかと思います。

実際、「社会学概論」を2年次に取る社会学分野の学生もたくさんいます。むしろそういう人の方が多いかもしれません。1年次に取っておいてくれるに越したことはありませんが、社会学分野に入ったならば、2年生のうちに必ず「社会学概論」を履修してしまってほしいと思います。そのつもりでいてくれるのなら、これまでの経験からしても、大丈夫だと思います。ただ、2年生まで何もしないというのではなく、進級の面接のときまでに、自分で社会学の本などを読んで興味関心を高めておいてもらえればと思います。

 

Q:信大の社会学は、地域社会学に偏っている気がしますが、自分が関心のあるそれ以外の領域についても研究することができますか。

A:もちろんです。確かに、教育システムの中で、さまざまな地域に出かけていって地域で調査をするという方法が例年採られています。これは、2名の教員で効率的に教育を行うための工夫だと思ってください。社会調査法を習得させるためにはいろいろな方法がありえます。しかし、あれもこれもと提供することはできないので、2,3年生の間は、地域に関わり合いながら調査法を学んでもらうことにしているのです。

しかしながら、このようにして身につけた調査法は、別の領域でも活かすことができます。卒論のテーマは自由度が非常に高いです。個々人が設定したテーマにしたがって卒論研究を進めてもらいますが、そのさいに、2,3年生で学んできた各種の社会調査法が役立つのです。 また、2,3年生の間から、「社会学研究演習」において、各自の関心や進捗状況を報告し、教員からコメントを受ける機会があります。また、2,3年生の間でも、各教員に相談してもらえれば、いつでもその都度適切な指導を行っています。

 

Q:社会学分野では、担当の教員を決めないとのことですが、なぜですか。

A:社会学では、質問のとおり、特に担当の教員(指導教員)を決めることはありません。卒論についても、登録の関係上、便宜的に指導教員を決めますが、実質的には2人の教員がともに指導に当たります。これは、学生の持つ問題関心に対して、2人の教員が多面的にコメントを行うことによって、その学生本人が自らの問題関心に対して深く考察することを促すためです。

卒論に向けての演習科目のほかに、各教員が半期ずつ担当する演習もあります。これについても、どちらの教員の演習も自由に取ることができます。

 

Q社会学か社会心理学か社会学か文化情報論か、迷っています。

A:確かにこれらの分野とは、学問的な意味での近接性がありますので、迷うのももっともかもしれません。しかし、違いをはっきりとさせるならば、次のようなことが、およそ目安となるでしょう。

社会心理学との違いからです。違いの前に共通なことから言うならば、どちらも社会について扱っていることです。しかし、興味関心や視点が違います。社会心理学は、心理学の一分野であり、社会的な場における個々人の心理的要因――認知やパーソナリティなどの個々人の内的要因――の状態やその場での作用に関心の中心があります。また、社会心理学分野では、実験などの心理学的な方法論を学ぶことになります。

一方、社会学の方は、社会現象や社会問題を構成するさまざまな社会的要因――たとえば、社会制度・社会構造・社会ネットワーク・対人的相互作用などの個人の外部にある要因――がその現象や問題に対してどのように作用しているかを解明することに関心があります。また、社会学では、社会現象や社会問題に対する意識、人々の間に特定の意見が流布し支持される現象(世論、流行、投票行動)、階層意識(自分がどの社会階層に入ると思うか、また、それはなぜか)など――これらをまとめて「社会意識」と呼んだりします――も扱います。しかしその場合も、その意識に対して上記の社会的要因がどのように作用するかという見方をします。方法論としては、社会調査が中心となります。

ところで、辻准教授は、社会心理学会にも所属しています。これは、辻が社会意識など、社会心理学との相互乗り入れ領域について研究しているからです。人々の意識について社会(学)的な観点から研究したいという人は、受入可能です。

 

文化情報論との違いは、次のとおりです。文化情報論にも社会学の教員はいますが、文化情報論には他の学問領域の教員もいます。文化情報論は、そのような多領域性が特徴であり、いずれの領域にも共通した情報活用能力の育成を目指した教育が展開されています。

一方、社会学分野は、あくまでも社会学という1つの学問を深く追究します。そして、社会学の基礎教育や調査実習を通じて、現代社会とそこに生きるさまざまな人々に対する深い理解と寛容性、未来の社会を切り拓くための社会学的想像力をもった人材を育成することを目指しています。具体的には、講義科目での学習を通じて社会学的なものの見方や方法を会得し、調査実習でのインタビューや調査票調査(いわゆるアンケート調査)、卒論での実証研究を通じて、優れた人間性と豊かな社会学的想像力を養っていきます。また、多領域である文化情報論と比べて社会学が扱うテーマは狭いのかというと、社会学の学生たちが書く卒論のタイトルなどを見てもらえばわかりますが、テーマはかなり広範囲にわたっており、十分に広いと感じられると思います。現代社会に関わるほとんどあらゆる事柄を対象にしている社会学ですから、むしろ、これまでの卒論タイトル以上にいろんなことがテーマになる可能性があります。社会学分野では、学生のテーマに対して、2人の教員がそれぞれの見地から多面的にコメントし、各自の学びを深化させていきます。

 

Q地域活性化に関心があるのですが、現場に介入するようなアプローチ(以前、文化情報論で中嶋先生が取られていたようなアプローチ)は可能ですか。

A:端的に言えばNoです。社会学分野で地域活性化にアプローチするとしても、現場に直接介入するようなアプローチは取りません。したがって、地域活性化について、どうしても現場介入をしたいということであれば、それは、社会学では無理だと思います。現場への介入をしたければ、NPO法人の取り組みに参加するなどして、お手伝いをするといったやり方を模索されてはいかがでしょうか。

社会学分野で地域活性化を扱う場合は、現実に行われている(あるいは、これから行おうとする)何らかの取り組みなどの効果について客観的な評価を行い、それらの結果をふまえて当該地域に何らかの提言を行うといったアプローチになります。しかし、そういった客観的評価をする前に、「ともかく現場介入だ!」とかいうのは海図のない航海のように思えますし、条件も違う地域なのに「他の地域で成功したやり方だから、そのやり方はここでも成功するはずだ」などと、誰が言えるでしょうか。われわれがすべきことは、客観的な評価を行って、それをもとに提言――どの要因をどのような方向に導くのが社会的効率を上げる(福祉を向上させる)と考えられるか――を行うところまでであり、あとは、その地域の住民なり行政なりに具体的な対応――要因を一定の方向に導くためにどのようなやり方がありうるかを考え実行すること――は任せればよいのです。他大学には、積極的に現場介入を行うタイプの研究者もいるのかもしれませんが、少なくとも信大の社会学教員2名のスタンスはこのようなものですので、そのようなつもりでいてください。

 

Q:先生は、どんなことを考えて学生の選考をするのですか。また、どんな学生に来てほしいと思っていますか。

A:一番大事なことは、学生がうちでできること、できないことを勝手に解釈して、変な期待をしていないかどうかを判断することです。そういう場合には、他のより適切と思われる分野を紹介するようにします。また、分野紹介の冊子の当分野のところに書いておいたような学生に来てもらいたいと思っています。こころざし、やる気、集団活動のできる人とでもまとめられるでしょうか。

また、こちらもご覧ください。

 

Q:ここに載っていること以外の質問があるのですが...

A:辻准教授まで、メールでお尋ね下さい。

(リンクをクリックし、そこに現れる単語2つを半角でタイプしてください。単語と単語の間は半角スペースを入れてください。)

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