マヒドン大学(タイ)における仏教美術のフィールドワーク研修

バンコクへ

 「芸術コミュニケーション特殊講義」の一環として、グローバル人材育成のための学生への短期海外活動支援(知の森基金)の援助を受けて、2月12日より17日までタイ王国のバンコクで人文学部の学生14名(哲学10名、比較文学1名、芸術コミュニケーション3名)の研修を行いました。  12日の8時に成田空港へ集合。タイ航空でバンコクへ。  日本は真冬の寒さでも目指すバンコクの気温は30度を超えています。飛行機から降りた瞬間、むわっとした熱気に包まれ、別世界に来たことを実感。総勢15名でスーツケースをもちながら、階段を上り下りして、空港から市内を結ぶ路線、そしてスカイトレイン(BTS)を乗り継ぎ、近畿日本ツーリストにアレンジしてもらったホテル・エーシア(Asia Hotel)に到着。ラーチャテーウィの駅に隣接した立地は抜群です。  夕方のわずかの時間を利用して、徒歩でサヤーム・スクエアを目指しました。  屋台の様子に歓声、セブンイレブンの発見にまた歓声があがります。言葉が少し違うだけで、自分たちの文化と連続したところがあることを知ることが、異文化体験のスタートでしょう。緊張し続けだった自分のはじめてのインド旅行を思い出し、彼らの姿に昔の自分が重なっていきます。  サヤーム・センターのフードコートにて、各自それぞれの食事を堪能。料金をチャージしたカードで、複数の店舗から自由に食事をとってくることができます。グリーンカレーやトムヤムクン、そしてタイのアイスクリームなどを口に入れ、早速、タイの食事に適応できた様子。各グループで明日の打合せなどをして解散。

アユタヤーの仏教遺跡

 13日には、各グループでバンコク市内にある寺院と仏教美術のフィールドワークを行いました。その成果は、最終レポートから抜粋して後日掲載の予定です。  14日はバスでバンコクから北へ80キロほど離れたところにある古都アユタヤ―に向かいました。スコータイ王朝に続いて、14世紀から18世紀まで繁栄を極めたタイ王朝の遺跡が残されています。  最初にワット・ヤイ・チャイ・モンコンを見学。ガイドのエイさんの説明では、アユタヤー王朝とビルマとの戦争での勝利を祝って建てられたお寺とのこと。ただしアユタヤー王朝は最後はビルマに滅ぼされたわけですから、それも一時的な勝利だったのでしょう。諸行無常の世界。  72メートルの仏塔の中には7つの仏像が安置されていました。それぞれの仏様には、誕生曜日に対応して、人々の願いを叶えるという信仰があるそうです。誕生日は知っていても、誕生の曜日を知っている学生は少数。とりあえずすべての仏像に金箔シールを貼り、手をあわせていました。

ワット・マハータート

 それにしても、アユタヤーの日差しはひときわ厳しい。短いバス移動の時間が貴重な休憩時間です。あとは帽子か日傘か、水分補給か、でしのぐしかありません。  次の寺院はワット・マハータート。  大樹の根元に切り落とされた仏像の頭がとりこまれた写真で有名です。ビルマ軍との戦争で、この寺院にある仏像の頭はことごとく切り落とされた様子。崩れかけた仏塔。それでも、赤いレンガを積み重ねた壮大な寺院建築から、在りし日々、この一帯に熱心な仏教徒たちが集っていたことを知ることができます。  前日にバンコクの黄金の寺院群を見学した学生たちからは、この古びた仏教遺跡の方が落ち着きますね、という感想が相次ぎました。本来は、これより先のスコータイ王朝時代のものと比較して、その様式の変遷を見るべきでしょうが、二つの様式の違いに触れることができただけでも十分な収穫でしょう。  最後に最大の見どころである三つの仏塔が並ぶワット・プラ・シー・サンペットを見学して、この日の活動は終了。

マヒドン大学

 15日はサラヤーにあるマヒドン大学を訪問しました。  バンコクの西に位置するサラヤーまでバスで半時間の移動。喧噪の都市部を離れた郊外の街。そこに広大な面積を占めるマヒドン大学があります。  「マヒドン」の名前は、現国王の父でタイに近代医学をもたらしたマヒドン王子に由来するとのこと。この大学はタイを代表する医科大学としてスタートしながら、医学や健康の理解に不可欠な人文社会学部なども含む総合大学として名を馳せています。とはいえ、日本でそれほど名前が知られているわけではありません。今回は、友人である張本研吾博士がこちらの大学に専任講師として就職されたことから、企画がはじまった、というのが本当のところです。  張本先生のご尽力により、あれよあれよという間に話が進み、当日は人文社会学部(Social Science and Humanities)にて学部長はじめ諸先生方が列席する中で、歓迎セレモニーが開催されました。その後、学生たちは、マヒドン大学の学生たちが企画してくれた交流会に参加し、タイの伝統舞踊の鑑賞や、相互交流の時間で英語コミュニケーション(身振り手振りも交えながら)を実践しました。 あっという間の一日。充実した研修だったと思います。  16日はバンコクの国立博物館を見学する予定が、直前で休館日であることに気づき、急きょ、ウィマーンメーク宮殿の見学に変更。タイの近代化の父ラーマ五世ゆかりの宮殿とそのコレクションを見学しました。夜10時半のフライトで、翌朝6時半に成田着。さて、参加の学生たちはこの旅行で何を手にしたのでしょう?  最終レポートから編集したものを、また投稿します。最後になりましたが、知の森基金からの援助と、人文学部、マヒドン大学人文社会学部の関係各位のご尽力に厚く御礼申し上げます。

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