佐々木寛先生の授業(テーマ)

佐々木先生が開講される授業のテーマは以下のようなものです。これらは授業のテーマ、主題、内容であり、授業科目名ではありません。ご注意下さい。

【明治期日本の小説研究】
明治20〜30年代の言文一致の問題について考えるために、平成17年度の坪内逍遥『当世書生気質』、18年度の二葉亭四迷『浮雲』に続いて、平成19年 度の1セメスターで幸田露伴の小説『五重塔』をとりあげ、語り手と物語世界の関係に焦点をあてて読んでゆく。文学研究の出発点としての、テキストの正確な 読解を信条とする授業である。
 
【ロシア文学の原文講読】
1年次でロシア語の初級と中級を学んだ学部生を対象に、ロシア人の交換留学生や研究生を交えて、ロシア文学の作品を原文で読んでゆく授業である。平成17 年度はツルゲーネフの中篇小説『ムムー』を一年かけて読んだ。18年度度は、ロシアの森鴎外ともいうべき十九世紀初頭の詩人ジュコフスキーのバラード『ス ヴェトラーナ』(1812)、ワシ−リー・リヴォーヴィチ・プーシキン(ロシアを代表する詩人プーシキンの伯父さん)の滑稽物語詩『危険な隣 人』(1811)を読了した。

【ロシアの文学と社会】
18世紀初頭のピョートル大帝の改革にはじまるヨーロッパの文物、制度の移入から、エカテリーナ女帝時代のヨーロッパ文学の受容と摂取をへて、19世紀 20−30年代にロシア近代文学が確立され(プーシキン、ゴーゴリ、レールモントフ)、やがて60年代にツルゲーネフ、ドストエフスキー、トルストイらの 大文豪の出現を見るまでのプロセスを、一国の近代文学の形成という観点からたどってみる。ロシア語の知識は必要としない。—1.ピョートルの改革 2.古 典主義の時代。啓蒙主義の時代 3.センチメンタリズムの文学 4.19世紀初めの文学生活 5.プーシキン 6.ゴーゴリ 7.レールモントフ  8.1830−40年代のジャーナリズムとベリンスキー 9.都市の生理学 10.西欧派とスラヴ派 11.ツルゲーネフ 12.ドストエフスキー  13.トルストイ
 
【日本近代小説の分析】
明治20年代以降、昭和40年代(1880年代末〜1970年代前半)までの日本近代の中篇、短篇小説をセメスターで10本、週替りでとりあげ、作品の語 り手と物語世界の関係に焦点を絞って、受講者に報告してもらう。テキスト分析の筋力トレーニングである。— 森鴎外『舞姫』、樋口一葉『にごりゑ』、芥川龍之介『鼻』、『南京の基督』、『鼠小僧次郎吉』、菊池寛『形』、川端康成『カナリヤ』、『時雨の駅』、『抒 情歌』、『禽獣』、横光利一『機械』、太宰治『駆込み訴へ』、中島敦『悟浄歎異』、『悟浄出世』、伊藤永之介『鶯』、庄野潤三『プールサイド小景』、遠藤 周作『四十歳の男』、『私のもの』、倉橋由美子『パルタイ』、深沢七郎『楢山節考』など。
 
【バフチンの小説言語論・テキスト理論】
現代文学理論の最高峰である20世紀ロシアの哲学者・文芸学者ミハイル・バフチン(1895−1975)の小説言語論、テキスト理論を、1920年代の美 学論考「美的活動における作者と主人公」から始めて、1930−40年代の「小説の言葉」、「小説の時空間」、「叙事詩と長篇小説」、「小説の言葉の前史 より」、1950−60年代の「ことばのジャンル」、「テキストの問題」まで、邦訳で読む。バフチンとの共作といわれるヴォローシノフ「生活の言葉と詩の 言葉」(1926)、『マルクス主義と言語哲学』(1929)、「文学のことばの文体論」(1930)、メドヴェージェフ『文芸学の形式的方 法』(1928)もあわせて読む。ロシア語の知識は必要としない。

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