お知らせ・報告

2017/09/17-23上海蘇州研修旅行について(4日目)

上:ホテル朝食、左の丸いものが葱油餅、右下の茶色い細長い2本がチョロギ漬物 下:水面に家並みと木立が映り込む平江路の運河

9/20未明から窓の外は強い雨です。この日は夕方まで蘇州観光の予定ですが、出発前から案じていたとおり悪天候。せめて雨脚が弱まってほしいと思いつつ、ホテル食堂で朝食。茶蛋や葱油餅にちょっと癖の強い豆浆=豆乳などがありました。学生たちは一見茶色い虫のような物体を警戒していましたが、私が試しに齧ってみると「チョロギ」の漬物でした。日本では紅白の彩をした酢漬けで御節の具材にされることが多いですが、このホテル朝食にあったのはこっくりした茶色なので完全に芋虫っぽい風体です。味はさっくりした歯応えでお粥に合いそうな塩加減の悪くない味わい。学生たちは「チョロギ」の日本語名称も知らず、李先生も初めて目にしたとのことで説明に難儀しました。後日検索したところ、中国語では“甘露子”や“螺丝菜”と言うそうです。

08:00ホテルをチェックアウトする頃には幸い雨はかなり弱まっていました。事前に地図で予習していた通り、ホテル近くの百歩街から小さな運河添いの道を真っ直ぐ進むコースを取りました。観光客があまり歩かないような古びた家が立ち並ぶ住宅街には、朝から開いている地元のスーパーマーケットを利用する人々が行き交い、ペットの小型犬もしばしば目にしました。大通りに近づくと動物病院も複数あり、ペット産業が盛んだという印象です。
ホテルから徒歩30分弱で蘇州中心部の観光スポットの一つ“平江路历史街区”に到着。前日信大留学生O君から「平江路はそれほど見どころがない」とイマイチな評価を下されていた場所ですが、運河に古い町並みに柳の並木という中国南方を代表する風景に、北方出身である李先生は「こういう風景を昔から見てみたいと思っていたんです!」と感じ入っていました。悪天候で傘を差しながらの移動は不便でしたが、“苏州适合雨天去”蘇州は雨の景色を楽しむものだという認識にぴったりの行程になったようです。朝早い時間帯だったので営業している店はほとんどありませんでしたが、その分観光客も少なくのんびり観光することができました。平江路を南から北まで通り抜け、更に次の目的地である“拙政园”に徒歩で向かいます。

上:巨大ケージに1羽でいる愛想が良いボタンインコ 下:拙攻園の蓮池

蘇州のこの界隈は“狮子林”などの有名な庭園が複数ありますが、それを全部観ている時間もないので、それらの脇にある土産物屋が立ち並ぶ通りを徒歩移動します。店先には人間が入れるぐらいの巨大なケージに1羽だけで入っているボタンインコや、これまた巨大なケージに入っている猫など、ペットを使って観光客の目を引こうとする姿勢が目立ちます。
10:00ごろ中国四大庭園の一つ“拙政园”に到着、各自が窓口で入場チケットを購入して庭園入り口へ。さすがに有名な庭園だけあって既に大勢の観光客がいて、フランスからの団体観光客もいるようです。中国庭園の常として小道が入り組んでいるため9人全員が固まって移動するのは不便なので、11:00まで自由行動とし出口で待ち合わせとしました。雨が似合う蘇州の庭園でありますが、人が大勢いる中傘を差しながら入り組んだ小道を移動するのは結構疲れるものです。中の盆栽展示を鑑賞したりで集合時間となり“拙政园”を退出。
近くに蘇州博物館があり、そこも視野に入れていたのですが、入り口を見るとかなりの人数が入場待ちで並んでいるため、やはり当初の計画通り苏州丝绸博物馆=蘇州シルク博物館に移動することにしました。蘇州博物館前から20分ほど歩き、人民路という広い通りに出て、日本の道路形式ではあり得ないような無信号の横断歩道を渡ると、中規模の美術館といった佇まいの蘇州シルク博物館に到着です。

生えかけの頭髪まで忠実再現された辮髪マネキン

地元の名産を紹介する意義を持つ蘇州シルク博物館は、現在入館料は免费=無料で、裏返して言えばあまり観光客が来ないと察することができますが、この日は正に貸切状態。“拙政园”の混雑ぶりとは打って変わって静かな場所でありました。古代の絹織物オリジナルはさすがに展示数が少なかったのですが、レプリカの織物でも十分興味深いものであり、宋代明代清代はオリジナル展示がかなりの数ありなかなか見応えがありました。絹糸作成作業の再現マネキンは辮髪髪型をしていて、頭髪を剃り上げた部分の2mm程度の生えかけなど「そこをリアルに再現?」と学生たちもいろいろ面白がっていました。生きた蚕が桑の葉を食べている様子の展示は、岡谷市の蚕糸博物館を思わせました。残念だったのはミュージアムショップで、絹製品の土産物を数多く販売していたのですが、博物館展示とは全く関係のないデザイン・品ばかりで、レプリカの廉価版でもいいから展示と関わりのあるデザインを使ったものがあれば購入を考えたのにと感じた次第です。

左:报恩寺奥の庭園から見た北寺塔 右:庭園茶室でいただいたお茶

既に13:00を過ぎていたので昼食をとろうと見渡すと、李先生が「あそこの店はどうですか?」とシルク博物館の斜向かいにある、外国人観光客が立ち寄らなそうな小さな定食屋を見つけたので、そこに向かうことにしました。間口は小さい店ですが鰻の寝床のごとく長い造りで、奥の大きなテーブルに座り麺や丼物を各自注文しました。やや塩辛い牛肉面を食べながらこの後の予定を考えたのですが、当初は中国四大庭園のこれまた一つである“留园”をプランに入れていたのですが、皆悪天候で歩くのに既に疲れているし、この場から公共交通機関を使っての移動時間を考慮すると入場料を払っておきながらじっくり見学できないままそそくさ退出しなければならないのはストレスが溜まるだろうと思い、プランの変更を決断。定食屋を出て、博物館に歩いてくる途中で見かけた大きな塔があるお寺に行ってみることにしました。报恩寺というお寺で庭園見学は無料、こちらも観光客がほとんどおらずゆったり歩いて観ることができました。大きな目立つ北寺塔の更に奥にも敷地は続いていて、規模は有名庭園に到底及びませんが池や東屋も設えられて雰囲気十分です。
更にその中に“茶室”があり、お茶の値段を尋ねてみたら結構な値段ではありましたが、休憩と中国“茶室”の雰囲気を体験するためにと全員で入ってみることにしました。“青炒”という緑茶を一人一杯注文すると、グラスに茶葉とお湯を直接入れるスタイルで出てきます。中国の風習に慣れていると特段どうと言うことのない光景ですが、中国旅行初の学生たちはこういう飲み方するのかと驚いていました。そう言えば、日本では熱いお茶をグラスに入れると割れてしまうので良くないと認識されますが、中国では昔からこのスタイルです。何で中国では透明なグラスで熱いお茶を入れるのが普通と見做されているのでしょうかね?と李先生に今更質問したところ、李先生も考えたことがない、これが普通だと思っていたという答でした。観光客がほとんどいないお寺の庭園ですが、茶室には地元のマダム集団らしき女性たちがテーブルを囲んでお茶を飲み、そして持ち込んだ大きな袋入りの“瓜子”=味付きヒマワリの種を食べながら大声で談笑に興じています。日本では喫茶店に自宅から菓子類を持ち込んで長っ尻するのは商売上嫌われる行為ですが、李さんによると中国ではよくある光景とのこと。お茶と茶請けを口にしながら長時間友人とだらだら喋るのが中国人的楽しい暇潰しで、それへの店側の対抗策としてお茶一杯の価格を高く設定している(お湯のお代わりは無料)のだという李さんの説明に納得させられました。茶室の隅ではお経を静かに朗読練習している女性がいたり、茶室での時間の過ごし方もいろいろあるものです。

15:00に茶室を出て报恩寺を後にし、近くの地下鉄駅“北寺塔”へ。初日上海浦東空港で蘇州利用可能な交通カードは買えなかったので、蘇州地下鉄チケットを購入し蘇州駅へ。ここでも前日の上海駅と同様厳重な“安检”を経て待合室へ。するとちょうど近くに小さな駅内書店があったので、学生たちは皆喜んで三国志物や海外小説翻訳など買い物をしていました。改札をして復路の高鉄に乗り込むと、往路とは異なり日本の新幹線のような普通の座席仕様です。学生Hさんの復路チケット座席標示がおかしいという小さなアクシデントはありましたが、無事に席に座ることができ上海駅に到着しました。その後地下鉄に駅に向かいましたが、交通カードで自動改札を通ろうとするとN君がゲートで引っかかりました。自動改札機では情報の混線がしばしば起こり、その度に窓口に出向いてカードの情報をクリアしてもらう必要があります。今回の旅行で学生一人二人は引っかかるだろうなと予想していたため、私が後ろで待ち構えていたのが幸いし、そのまま窓口に連れていき駅員にカード情報をクリアしてもらい無事改札を通ることができました。四平路駅に向かい昨日朝と同じホテルに入り、トランクの受け取りと再度チェックイン手続き、夕食は皆でホテル近くの定食屋に出かけて各自注文して済ませました。
長距離移動、また悪天候などで即興的プラン変更があった一日でしたが、予想していなかったものを目にすることもでき、なかなか密度の濃い観光旅行になったと思います。

ページの先頭へもどる