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伊那市東春近財産区の森林管理を「アナログからスマート林業へ」 ~信州大学と精密林業計測がAIとドローンで持続的黒字経営と環境保全を実現~

研究

図1 長野県伊那市東春近財産区の年度別取組フロー
図1 長野県伊那市東春近財産区の年度別取組フロー
図2 スマート照査法による東春近財産区の持続可能な森林経営
図2 スマート照査法による東春近財産区の持続可能な森林経営
図3 伊那市東春近財産区の位置図と境界巡視
図3 伊那市東春近財産区の位置図と境界巡視

信州大学農学部は、伊那市東春近財産区(管理者:伊那市長、議長:福澤覚志)と技術指導契約を締結し、森林管理に関する技術指導により持続可能な森林経営の確立と地域経済への貢献を目指します。
これは、令和7年度からの東春近財産区と大学発スタートアップ精密林業計測株式会社(伊那市)の委託契約に基づき、同社が持つ、加藤正人特任教授らが開発したドローンとAIを活用したスマート林業技術を、財産区有林に現場実装するため、信州大学農学部との連携により実証研究を行うものです。

東春近財産区は約440haの区有林を管理運営しており、人工林は植栽から50年以上が経過し、伐期を迎えていますが、林業を取り巻く経済環境は依然として厳しい状況にあります。一方、森林の公益的機能の発揮やカーボンストックの増進が求められている中、財産区議会では「財産と環境を守る」を基本理念とする運営方針を策定しました。しかし、資源量の正確な把握や担い手の確保が難しく、従来の人手による巡視や管理だけでは持続的な経営が困難となっています。

こうした課題に対し、スマート林業の先駆者である信州大学と精密林業計測は、学術研究で開発された技術を現場に導入します。両者は、東春近財産区全域(440ha)の森林をドローンで計測し、AIによる単木ごとの樹種・樹高・材積解析を行い、全国初となる「スマート照査法」(注:単木単位で森林を継続的に管理・評価する新手法)による経営改善と透明性の高い森林管理を進めます。また、境界をドローンで巡視し、人手不足に対応する省力化を実現します。

【令和7年度:基礎実施】
1. 境界巡視・現地踏査による現況把握と課題整理
2. 航空レーザによる東春近財産区全体の森林資源量解析
3. 木材生産域・環境保全域のゾーニング
4. ドローンによる藤沢(115ha)・道堰(12ha)地区の単木別資源量解析
5. 持続的黒字経営のための施業提案

【令和8年度以降:展開】
1. スマート照査法の導入による経営計画立案
2. 持続的黒字経営と環境保全の両立
3. ドローンによる境界巡視・資源モニタリングの定常運用化

【期待される効果】
この取組は、大学・地域共同体・スタートアップ企業による全国初のスマート財産区モデルであり、今後は他地域の財産区や地域有林への展開を目指します。科学的根拠に基づく森林経営を通じ、持続的な地域循環型林業の確立に寄与します。

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