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骨形成型オリゴDNAで破骨細胞の分化を抑制して骨代謝を改善

研究

図. 骨形成型オリゴDNAによる破骨細胞分化の阻害と骨吸収の抑制
図. 骨形成型オリゴDNAによる破骨細胞分化の阻害と骨吸収の抑制

信州大学学術研究院(農学系)の高谷智英准教授らの研究チームは、骨形成型オリゴDNAが破骨細胞の分化を抑制して骨代謝(骨リモデリング)を改善することを報告しました。

骨組織は、骨芽細胞の石灰化や分化(骨形成)と、破骨細胞による骨基質の分解(骨吸収)のバランスによって恒常性が保たれています。骨粗鬆症では、両者の均衡が破綻して骨密度が低下し、骨折のリスクが高まります。骨粗鬆症の患者数は、予備軍を含めて国内で1500万人以上と推計されており、安価で大量生産できる治療薬の開発が求められています。研究チームが以前に同定した骨形成型オリゴDNAは、骨芽細胞の石灰化や分化を誘導する18塩基の一本鎖DNAで、骨形成を促進する効果があります。本研究では、この骨形成型オリゴDNAが、破骨細胞による骨吸収に影響するかを調べました。

血球状の前破骨細胞にRANKLタンパク質を投与して培養し、破骨細胞の形成を誘導しました。対照群では、アメーバ状の破骨細胞が形成されたのに対し、骨形成型オリゴDNA投与群では、細胞が血球状の形態に留まり破骨細胞は形成されませんでした(図上段)。同様の試験を、骨基質を模したリン酸カルシウムのプレート上で行ったところ、対照群では破骨細胞による骨基質の分解が観察されたのに対し、骨形成型オリゴDNA投与群では骨基質が全く分解されませんでした(図下段)。これらの結果から、骨形成型オリゴDNAは破骨細胞への分化を阻害し、骨吸収を抑制することがわかりました。さらに詳細な解析から、骨形成型オリゴDNA中のCG配列が、前破骨細胞のToll様受容体9(TLR9)に認識されることで、破骨細胞分化に関わる遺伝子の発現が阻害されることが明らかになりました。

骨芽細胞と破骨細胞を共培養し、生体内の骨リモデリングを再現した系で実験した結果、骨形成型オリゴDNAは、破骨細胞の分化を抑制するだけでなく、骨芽細胞から分泌され、骨粗鬆症性骨折のマーカーとされるRANKL/オステオプロテゲリン(OPG)比を低下させました。すなわち骨形成型オリゴDNAは、骨リモデリング系において、骨芽細胞による骨形成を促進し、破骨細胞による骨吸収を抑制するという2つの作用を同時に発揮することが示唆されました。安価に大量合成可能な骨形成型オリゴDNAは、超高齢社会でますます増加する骨粗鬆症に有用な核酸医薬品としての応用が期待されます。

本研究成果は、2024年11月30日に学術誌Lifeに掲載されました。詳細は以下をご覧ください。

タイトル:Osteogenic CpG oligodeoxynucleotide, iSN40, inhibits osteoclastogenesis in a TLR9-dependent manner
著者:Rena Ikeda, Chihaya Kimura, Yuma Nihashi, Koji Umezawa, Takeshi Shimosato, Tomohide Takaya
掲載誌:Life, 2024; 14(12): 1572
URL:https://www.mdpi.com/2075-1729/14/12/1572
DOI: 10.3390/life14121572

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