大学院総合理工学研究科生命医工学専攻1年の本田莉夏子さんと農学部農学生命科学科植物資源科学コース4年の吉田優香さんが日本植物病理学会関東部会において学生優秀発表賞を受賞
2024年9月13日に、東京農工大学で開催された日本植物病理学会関東部会において、微生物植物相互作用学研究室の本田莉夏子さん(修士課程1年)と吉田優香さん(学部4年)が口頭発表を行い、「学生優秀発表賞」をダブル受賞しました(受賞日:10月8日)。
炭疽病菌(Colletotrichum属菌)は、多種多様な植物に感染被害を起こす植物病原糸状菌です。
本田さんの研究では、本来は病原菌として感染という植物に負の効果をもたらすリンゴ炭疽病菌Colletotrichum fioriniae GCA6から植物の胚軸を伸長させるオーキシン類を新規に単離、同定し、本菌が植物に正の効果をもたらす物質の生産能を有することを示しました。同定したオーキシン類には、4つの既知化合物に加え、3つの報告例のない新規化合物が含まれていました。今後、新規化合物の活性評価を行うとともにオーキシン類の合成が本菌の病原性に関与するか検証し、病原菌としてオーキシン合成能を有する生理的意義の解明を目指します。
吉田さんの研究では、イネいもち病菌やウリ類炭疽病菌などの植物病原糸状菌に保存されたMC69という病原性因子(エフェクター)が、コスモス炭疽病菌Colletotrichum fioriniae CC1においても病原性に重要であることを示しました。本菌のMC69遺伝子を破壊したところ、植物表皮への侵入能が低下することを見出し、植物への侵入段階で重要な役割を果たしていることが示唆されました。また、炭疽病菌から身を守る免疫システムに変異をもつ様々なシロイヌナズナ変異体と本菌のMC69遺伝子破壊株の相互作用を解析することで、エフェクターであるMC69が植物の免疫系のどこを標的に攻撃しているのか探索する方法を提案しました。今後はこの方法を用いて、MC69の植物内標的因子の探索を予定しています。
今回の受賞は、病原菌として植物に負の影響をもつ炭疽病菌から正の効果をもつ新規のオーキシン類を発見した点と、コスモス炭疽病菌におけるエフェクターMC69の重要性およびその免疫抑制機構の解明に繋がる方法を提案した点がそれぞれ評価されました。
受賞演題は以下のとおりです。
「Colletotrichum fioriniae GCA6から単離した植物の胚軸伸長を促進する新規化合物の同定」
〇本田莉夏子 1,桐山寛生 1,大神田淳子 2,3,真壁秀文 2,3,河村篤 3,入枝泰樹 2,3
(1信州大学大学院総合理工学研究科,2信州大学学術研究院(農学系),3信州大学バイオメディカル研究所)
「コスモス炭疽病菌におけるコアエフェクターの重要性とシロイヌナズナ変異体を用いたMC69の標的探索」
〇吉田優香 1,入枝泰樹 2
(1信州大学農学部,2信州大学学術研究院(農学系))