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上原三知准教授が2021年度グッドデザイン賞を受賞

研究

信州大学社会基盤研究所・学術研究院農学系 准教授の上原三知准教授らのグループ1)が取り組んだ「デザイン・サイエンスによる災害からの復興(2011年の東日本大震災からの福島県新地町の復興住宅地計画)」が2021年度のグッドデザイン賞(街区・地域開発部門)を受賞いたしました。

グッドデザイン賞は、公益財団法人日本デザイン振興会の主催で、毎年デザインが優れた物事に贈られる賞であり、日本で唯一の総合的デザイン評価・推奨の仕組みです。製品、建築、ソフトウェア、システム、サービスなど、私たちを取りまくさまざまなものごとに贈られます。

東日本大震災では多くの街が被災しました。集約型の移転を行った自治体では、土地の買収、堤防の嵩上げ工事に10年近い時間を要してしまい、その多くの地区において人口が計画期の希望数から大きく減じてしまいました。上原准教授らが関わった新地町では、「イアン・マクハーグの理論2)」とそれを日本の国土計画に応用するために1980年に国土庁が整備していた「環境区分図とその地図に紐づいた複数の災害リスクランク」をデジタル化して統合分析することで、ボトムアップ型3)で上げられた複数の候補地から最終的な適地を選択しました。このプロセスは2011年から2012年の早い段階までに完了し、2013年7月には被災地で最も早い復興住宅の供用が開始されました。このように新地町は被災地の中でいち早い住宅再建と、人口回復を実現した数少ない自治体の1つとなりました。受賞のポイントは以下の3点です。

1.デザイン・サイエンスを災害リスク評価に活用し、ボトムアップ型で複数の復興住宅の再建を早期に実現した。

2.個別ハザードマップの統合では示せない、複合的な災害リスクの重なり、地域全体の相対リスクを可視化した。

3.複合的な災害リスクを考慮できたことで、工期が短く、魅力的な敷地の開発を4年間で達成できた。

審査委員の評価「国内における災害リスク評価は、浸水被害、土砂災害など専門分野ごとに過去の実績データに基づいたパラメーターを個別に用いて判断するため、根拠となる数値が更新され続ける気候変動期においては信憑性の高い答えを導くことが難しい。本計画は、特定の土地が持つ環境性能(植生、地質、地形、傾斜区分)を災害の視点から数値化し、オーバーレイの手法で災害リスク評価を行うことで、複合的かつ客観的な視点を持った震災復興計画のプランニングを導き出すことに成功している。」

詳細は下記をご覧下さい。

https://www.g-mark.org/award/describe/52729?token=t0goiMzdqU

注釈

1)デザイナー:上原三知 信州大学 社会基盤研究所・学術研究院農学系 准教授/ 総合地球環境学研究所

プロデューサー: 井上忠佳 認定特定非営利法人日本都市計画家協会

ディレクター: 鴇田芳文 元新地町復興推進課長、江田隆三 代表 株式会社地域計画連合

2)エコロジカル・プランニング:流域単位にて、植生・土地利用、地質、地形区分図等の環境区分ごとに複数の災害リスクを相対的に評価し、それらを統合する手法のこと。

3)被災地の多くは複数の被災地区の住民を集約した大規模な住宅移転を実施しましたが、新地町では、被災したコミュニティ単位で移転住宅の場所を探し、個別に再建を実施した。

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