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高谷智英助教らが骨格筋分化を促進するオリゴDNAを同定

研究

図:myoDNの立体構造(左)とmyoDNの筋分化促進作用(右)
図:myoDNの立体構造(左)とmyoDNの筋分化促進作用(右)

 信州大学学術研究院(農学系)の高谷智英助教らのグループは、骨格筋分化を促進するオリゴDNAを同定しました。

 骨格筋は、運動のみならずエネルギー代謝や熱産生などの機能も担う、人体最大の組織です。加齢に伴う筋萎縮は、運動機能を低下させ、要介護状態を招く一因となります。また、様々な慢性疾患が合併する筋萎縮は、生命予後の危険因子としても知られています。骨格筋の恒常性維持には、筋肉の前駆細胞である筋芽細胞が重要な役割を果たしています。しかし、筋芽細胞の分化能は加齢や疾患で減弱することが報告されており、これが筋萎縮の遠因の一つと考えられています。筋萎縮の予防や治療を実現するため、筋芽細胞の分化を促進する分子が探索されてきました。

 研究グループは、生体内で多様な活性を発揮するオリゴDNA(短い一本鎖DNA)に着目しました。乳酸菌のゲノム配列に由来する50種類のオリゴDNAの中から、筋芽細胞の分化を促進する配列を探索した結果、テロメア配列を持つ18塩基のオリゴDNAが、極めて強力な筋分化誘導作用を示すことを見出しました。この「筋形成型オリゴDNA」(myoDN)は、特徴的な立体構造を形成することで、筋芽細胞内のタンパク質ヌクレオリン(用語1)と結合するアプタマー(用語2)として働きます。その結果、myoDNはヌクレオリンの機能を阻害し、最終的にp53シグナル経路を活性化することで筋芽細胞の分化を促進することが明らかになりました。

myoDNは、骨格筋分化を促進する世界初のオリゴDNAとして、今後、筋萎縮の予防・治療薬としての応用開発が期待されます。

本研究成果は、2021年1月11日に学術誌Frontiers in Cell and Developmental Biologyに掲載されました。

詳しい研究内容については以下をご覧ください。

URL:https://doi.org/10.3389/fcell.2020.616706

論文タイトル:Identification of the myogenetic oligodeoxynucleotides (myoDNs) that promote differentiation of skeletal muscle myoblasts by targeting nucleolin

著者:Sayaka Shinji1, Koji Umezawa2,3, Yuma Nihashi4, Shunichi Nakamura1, Takeshi Shimosato1,2,3,4, Tomohide Takaya1,2,3,4*(*責任著者)

著者所属:1Department of Agriculture, Graduate School of Science and Technology, 2Department of Agricultural and Life Science, Faculty of Agriculture, 3Department of Biomolecular Innovation, Institute for Biomedical Sciences, 4Department of Science and Technology, Graduate School of Medicine, Science and Technology, Shinshu University, Nagano, Japan.

【用語】

1. ヌクレオリン:がん細胞の増殖への関与が知られる多機能タンパク質で、抗がん剤としてヌクレオリンを標的とする分子の開発が進んでいる。しかし、筋芽細胞や骨格筋におけるヌクレオリンに関する報告はほとんどなく、その正確な役割は不明である。本研究により、ヌクレオリンが骨格筋分化に寄与していることが新たに明らかになった。

2. アプタマー:遺伝情報を持たない数十塩基の核酸分子(DNAやRNA)で、標的となるタンパク質と特異的に結合する。次世代の核酸医薬品として注目されており、様々なタンパク質に結合するアプタマーが開発されている。

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