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令和4年度「高冷地動物生産生態学演習」を実施しました

お知らせ農場系の実習

牧草の同定中
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ロープワークの実践
ロープワークの実践

1.演習名
「高冷地動物生産生態学演習」

2.演習の目的
高冷地・準高冷地という特殊な環境下において,地域資源を活用した持続可能な農業・食料生産について考える機会を創出することが目的である。また、共同作業の重要性を知り,協調性を培う機会を創出することも目的である。

3.実施日程
令和4年8月29日(月)~9月1日(木)
注)今回はコロナ感染拡大のため,伊那キャンパスで実施。

4.実施場所
農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター(AFC)
構内ステーション(ST)

5.担当教員
今井裕理子,鈴木香奈子,上野 豊,荒瀬輝夫,椎葉湧一朗

6.参加人数
41名

7.演習内容の概要

【1日目】午前中は実習内容の説明後,鎌の研ぎ方を学んだ。その後、実際に研いだ鎌を使って,牛のエサにするために食用トウモロコシの残稈の刈取りを行った。また,飼料用トウモロコシと食用トウモロコシとの形態的な違いを観察した。その後,放牧地周辺の雑木除去を行った。午後は,放牧地周辺に加え,採草地の雑草除去を行った。

【2日目】午前中は牛舎の清掃(ボロ出し)と削蹄の見学を行った。午後は,上伊那農業高校の牛舎やシカ肉解体加工施設を見学し,地域資源を活用した畜産振興に関する高校生の取り組みについて学んだ。

【3日目】午前中は放牧地で寒地型牧草の観察・同定を行った。その後,牛の飼養管理としてボディーコンディションスコア(BCS)について学び,実際に牛の栄養状態を評価した。また,牛を繋留する際に使うロープワークを学んだ後,牛を繋ぐ・引くなどの実践を行った。午後は,乳製品の加工としてチーズができる原理について学んだ後,低脂肪乳を用いたモッツァレラチーズ製造を行った。

【4日目】構内ステーション周辺の自然観察が予定されていたが,雷雨のため,観察予定だった農業遺跡や伊那谷の地形,松枯れ等に関する講義を室内で受けた。また,レポートの作成を行った。

8. 成果

8.1. 全体的な評価
今回の演習について,楽しさの点では大変満足が参加者の44%,満足が51%(図1左),有益さにおいては大変有益であったと回答した参加者が61%(図1右)であった。

畜産関連施設(上伊那農業高校)の見学,チーズ加工,削蹄見学等,普段の実習で行わない内容を体験できたことが,演習の満足度や有益さの主な理由として挙げられていた。また,実践的な内容であったことに対する評価もあった。今年度は,動物コースの2年生と3年生に加えて,他コースや他大学の学生が参加しており,特に他コース・他大学の学生からは,自分のコースや大学では体験しないことができて新たな学びとなった,といった感想が挙げられた。今年度は,コロナの影響により4日間の演習を全て構内ステーションで行ったため,野辺山に行きたかった,高冷地を体感することはできなかったという意見もみられた。

図1.演習の楽しさと有益さについて.jpg

8.2. 各演習内容について
大変満足あるいは満足の評価が多かったものは,乳製品加工,牛の飼養管理,畜産関連施設(上伊那農業高校のシカ肉解体加工施設)の見学,牧草の観察であった(図2)。草地の雑草防除,構内植生観察については普通という回答が比較的多かった。

満足度の高かった乳製品加工,牛の飼養管理,畜産関連施設の見学,牧草の観察では,初めてチーズを作り他学年とも仲良くなれた,牛に直接触れて良し悪しを判断する方法を学べた、加工施設や高校生の取り組みに感動した,畜種や生育環境に応じた牧草の種類を知り興味が出た,といった感想が挙げられた。また,普通の評価が多かった放牧地の整備や雑草防除についても,作業の大変さを挙げる一方で,達成感が大きかった,作業を通じて周りの生態がどのように管理されているのかわかった,という前向きな意見がみられた。構内植生観察については,悪天候により屋外での観察を行えなかったことが,満足度を下げた要因であると考えられる。

今年度の特徴として,実習に加えて普段見ることのできない施設の見学ができた,雑草防除や放牧地整備等の大変な作業と乳製品加工のような楽しい作業のバランスがよかった,協力して作業ができて楽しかったといったように,演習内容の全体的な構成や協同作業から,満足感や充実感を得ている傾向があった。

図2.各実習・講義への評価のアンケート結果.jpg

8.3. 演習後,興味関心が増した事
演習後に興味関心が増した事として高い順に,家畜34%,食料23%,農業19%,環境13%,高冷地6%,その他(牧草、畜産加工業、植物など)4%,野菜1%,ない0%という回答結果になった(図3)。

アンケート結果から,家畜に関して座学で学んだことを実際に体験することで,興味・関心が増したという声が多く聞かれた。また,シカの解体・加工施設の見学を通じて,食料・農業・家畜・環境と分野を跨いで幅広く興味が出てきたという回答が多くみられた。地域の課題である害獣を,地域資源として利用し食べ物に変える取り組みを,高校生が実施していることに刺激を受けたという学生も多かった。各作業を通じて農業や畜産業の大変さや手間を体感すると共に,このような課題を今後どのように解決していくべきか興味を持ったという感想もみられ,農業や食料生産の課題について理解を深め,興味・関心の幅を広げるよいきっかけになったのではないかと考える。また,野辺山に行けなかったことで,高冷地の環境や生態について改めて興味が湧いたという意見もあった。今年度,高冷地を体感してもらうことは叶わなかったが,本演習への参加が農業・畜産業における課題意識を持つきっかけになり,今後の生活や研究活動に生かされることを願っている。

図3.興味・関心が増したこと.jpg

9. 今後の予定と改善点
COVID-19の感染拡大のため,今年度は全日程を野辺山ステーションではなく構内ステーションで実施した。このため,普段構内ステーションで実施されている実習を受けている本学学生からは「野辺山に行きたかった」という声が多く寄せられた。また,普段の実習内容との重複については,「他のこともしてみたかった」という感想の他に「新たな発見や振り返りができた」とする感想もあり,既に実習で行った内容でも工夫次第で内容の充実を図ることができると考える。

今年度は,農業高校への訪問や森林コースの担当教員による補完講義を通じて,畜産・農業に関わる環境から食品加工まで幅広い学びを得ることができた。次年度以降も,他コース教員との協力体制の下で,演習カリキュラムの向上に努めたいと考えている。また,演習内容の見直しを図ると共に,長靴のサイズに偏りがある等の指摘や雨天時の対応(講義室の確保等)については,確実に改善できるよう努めたい。

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