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令和4年度「高冷地生物生産生態学演習」を実施しました

お知らせ農場系の実習

土壌調査に挑戦
土壌調査に挑戦
シクラメンの葉組作業に挑戦
シクラメンの葉組作業に挑戦

1.演習名
「高冷地生物生産生態学演習」

2.演習の目的
高冷地という特殊な環境下における農業と畜産業を組み合わせた複合農業の重要性について学び,持続可能な農業生産について考える機会を創出することが目的である。また,共同作業を行うことによって協調性を培う機会を創出することも本演習の目的である。

3.実施日程
令和4年9月5日(月)~9月8日(木)
注1)今回はコロナ感染防止のため,構内農場で実施。
注2)最終日は午前のみの開催。

4.実施場所
農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター(AFC)
農学部構内農場

5.担当教員
鈴木香奈子,春日重光,荒瀬輝夫

6.参加人数
35名

7.演習内容の概要

【1日目】
今回はコロナ感染拡大のため野辺山ステーションには来場せず,構内農場で実施することになった。午前中に演習内容の説明をオンラインで行った。その後,JA長野八ヶ岳の授精師や人事課の方によるJA長野八ヶ岳の仕事内容について紹介して頂いた。そのあと約30分間の質疑応答を行った。続いて,キャベツの収穫や出荷作業の動画をオンラインで視聴してもらった。午後からは構内農場において,西洋梨および和梨の収穫作業を実施した。また,葉菜類および果菜類の収穫と管理作業を行った。

【2日目】
午前中は最初に高冷地農業の問題や出荷場の様子などについての講義を約1時間行った。その後,構内農場の圃場において土壌の調査を実施した。約1m深さまで堀り,土壌の断面の観察,また室内では土色と土壌酸性度の調査を行った。午後はマメ科作物(ダイズ)とイネ科作物(トウモロコシ)の根の観察を実施した。その後,土壌の調査結果を班ごとに発表して2日目の実習を終了した。

【3日目】
演習は午前中構内農場で,ブロッコリー,カリフラワー,ハクサイの定植と播種を行った。また,シクラメンの葉組作業を行った。午後は伊那市美篶で無農薬無化学肥料栽培を行っている小川文昭氏の水田を見学,栽培についてお話を伺った。この農家見学では,大学ではあまり接することのない栽培方法と農家経営に関する思いに接することができて,学生の満足度は高かったようであった。

【4日目】
実習室での約1時間の講義を行い,構内農場の位置する伊那谷の風土の成り立ちと,農林業と関わりのある身近な自然として「西天竜幹線用水路」と「マツ枯れ」について配布資料をもとに説明した。その後,現地見学として、徒歩にて構外の西天竜幹線用水路(戸谷川の谷を通過するサイフォン式揚水施設の上流側・下流側)まで移動した。移動途中,松枯れによるアカマツ枯損木を実際に見ることができ,クヌギ,キクイモなどの植物についても種名・特徴・用途などを紹介した。帰路はあいにく小雨となったため早めに実習室に戻り,この日の見学内容のふりかえりと,自然の中での危険(熊との遭遇など)についての話をした。

8.成果

8.1.全体的な評価
今回の演習内容について楽しさとしては大変満足が参加者の62%,満足が35%(図1左)であった。有益さに関しては大変有益であったと回答した参加者が76%,まあまあ有益と回答した参加者が21%であった(図1右)。

演習の楽しさと有益さについて.jpg

COVID-19の影響により,野辺山ステーションへ来場しての演習は実施できなかったことに対して残念であったとの声もあったが,演習内容全体についての評価は高かったことはこれらのアンケート結果から分かった。演習内容への高い評価の理由としては,高冷地や準高冷地の農業について知ることができたこと,日頃できない経験ができたこと,新しいことを学ぶことができたことなどが挙げられた。

8.2.各演習内容について
オンラインでキャベツの収穫作業風景の動画を見てもらったが満足した参加者もいたようであるが,普通と回答している参加者も多くいた(図2)。ネット環境の問題が発生していたようで動画内容が理解しにくかったようである。他方,作物根の観察・調査,ならびに土壌の観察・調査,ブロッコリー,カリフラワー,ハクサイの定植と播種作業,農家見学,植生調査・観察は参加者の9割が満足したと回答している。

各実習・講義への評価.jpg

昨年から導入した土壌の調査について,初めて土壌の断面を観察したり,土色や硬さや酸性度などを調べたりする体験をした参加者がほとんどであった。多くの参加者が土壌に関心を持ち始めたようである。また,野菜の定植・播種作業や農家見学,植生調査について日頃実施することがない体験ができ,とても有意義であったと回答する参加者が多かった。

8.3.演習後,興味関心が増した事
演習後に興味関心が増した事について高い順に,農業34%,野菜15%,食料と環境がそれぞれ14%,高冷地13%,家畜16%,食料11%,家畜5%,その他として食糧,労働問題,土壌について5%という回答結果になった(図3)。

興味・関心が増大した事.jpg

農業に関心を抱いた参加者が特に多かったことがこの結果より分かった。高冷地農業が直面している問題についての講義の受講,また農家見学などが農業に対する関心を増加させたようである。今回の演習における様々な体験を通して,野菜,食料,環境が農業に関連していることに気が付き,日本の自給率の向上などに目を向け始めた参加者も多くいたようである。野辺山ステーションへ来場することができなかったが,高冷地農業の問題を知ることができ,今後も関心を持ち続けていきたいとの声もあった。今回の演習で培った経験や知識を活用して,今後の農学の学習に役立ててほしいと思う。

9.今後の予定と改善点
昨年度は宿泊を伴わない形式で実施することができた。しかし,今年度はCOVID-19 の感染拡大のため,野辺山ステーションでの開催は中止した。アンケート結果にも多くの参加者が野辺山ステーションに来場して演習に参加することを希望していたため,とても申し訳なく思う。ただ,今回は演習直前に抗原・抗体検査の実施や健康状態の観察を行い,他の大学からも参加できたことは良かったと思う。

次年度の開催については,どのような方法と対策で実施するかはCOVID-19の感染状況をみながらの本学の決定による。野辺山ステーションに来場できるような状況になることが最良であるものの,演習の目的を達成できるように,今年度に引き続き,高冷地の農業の現状について学び,理解を深める演習内容を再考してより良いものにできればと考えている。

スケジュールや持ち物についての連絡事項の共有ができていなかったようである。この点については改善するべき点があり,次年度に同じようなことがないように心がけたい。

また演習中の説明の聞こえにくさや分かりにくさの指摘もあったため,次年度の演習時には気を付けたいと思う。

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