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令和4年度「高冷地植物生産生態学演習」を実施しました

お知らせ農場系の実習

土壌調査に挑戦
土壌調査に挑戦
トマト収穫に挑戦
トマト収穫に挑戦

1.演習名
「高冷地植物生産生態学演習」

2.演習の目的
高冷地という特殊な環境下における農業について学び,持続可能な農業生産について考える機会を創出することが目的である。また,共同作業を行うことによって協調性を培う機会を創出することも本演習の目的である。

3.実施日程
令和4年8月22日(月)~8月25日(木)
注1)今回はコロナ感染防止のため,構内農場で実施。
注2)最終日は午前のみの開催。

4.実施場所
農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター(AFC)
農学部構内農場

5.担当教員
鈴木香奈子,春日重光,荒瀬輝夫

6.参加人数
37名

7.演習内容の概要

【1日目】
今回はコロナ感染拡大のため野辺山ステーションには来場せず,構内農場で実施することになった。午前中に演習内容の説明をオンラインで行い,農協の出荷場の様子やそのシステムについてオンラインで説明を行った。続いて,キャベツの収穫や出荷作業の動画をオンラインで見てもらった。午後からは構内農場において実習作業を実施した。午後からは構内農場の菅沼水田で糯米の刈り取りとはざ掛けおよび野菜の収穫と管理作業を行った。

【2日目】
午前中は最初に高冷地農業について参加者の学生達と共に議論を行った。その後,構内農場の圃場において土壌の調査を実施した。約1m深さまで堀り,土壌の断面の観察,また室内では土色と土壌酸性度の調査を行った。午後はマメ科作物(ダイズ)とイネ科作物(トウモロコシ)の根の観察を実施した。その後,土壌の調査結果を班ごとに発表して2日目の実習を終了した。

【3日目】
午前中はダイコン,野沢菜,羽広カブの播種とハウス内でイチゴ,シクラメンの栽培管理作業を行った。午後は伊那市美篶で無農薬無化学肥料栽培を行っている小川文昭氏の水田を見学,栽培についてお話を伺った。この農家見学では,大学ではあまり接することのない栽培方法と農家経営に関する思いに接することができて,学生の満足度は高かった。

【4日目】
実習室での約1時間の講義を行い,構内農場の位置する伊那谷の風土の成り立ちと,農林業と関わりのある身近な自然として「西天竜幹線用水路」と「マツ枯れ」について配布資料をもとに説明した。その後,現地見学として,徒歩にて構外の西天竜幹線用水路(戸谷川の谷を通過するサイフォン式揚水施設の上流側・下流側)まで移動した。移動途中,松枯れによるアカマツ枯損木を実際に見ることができ,クヌギ,オオブタクサ,キクイモ,クズなどの植物についても種名・特徴・用途などを紹介した。実習室に帰着後,資料や地図を見返しながら見学内容のふりかえりを行った。

8.成果

8.1.全体的な評価
今回の演習内容について楽しさとしては大変満足が参加者の41%、満足が51%(図1左),また有益さに関しても大変有益であったと回答した参加者が65%(図1右)と全体的な評価は高い傾向にあった。

演習の楽しさと有益さ.jpg

今回はコロナ感染拡大のため野辺山ステーションに来場できなかったことが残念との声が多々あったものの,アンケート結果からは演習内容について高く評価されたことがわかる。このような演習内容への高い評価の理由としては,高冷地や準高冷地地域を含めた作物について学ぶことができたこと,日頃できない経験ができたこと,そして土壌観察や農家見学、植生調査等の実習を通して,多くの事について学ぶことができたことなどが挙げられた。

8.2.各演習内容について
オンライン講義においてキャベツの収穫作業風景の動画を見てもらったが多くの参加者が満足したようであった(図2)。しかしながら,不満と感じた参加者も少数おり、分かりにくかった可能性がうかがえた。他方,作物根の観察・調査,ならびに土壌の観察・調査,ブロッコリー,カリフラワー,ハクサイの定植と播種作業,農家見学,植生調査・観察は参加者の9割が満足したと回答している。

各実習・講義の評価.jpg

昨年から導入した土壌の調査について,これまで土壌を掘り出し,土色や硬さや酸性度などを調べた体験がなかったことから関心を持ち始めた参加者が多かったようである。一方,日頃できない野菜の定植・播種作業や農家見学,植生調査について座学だけでは学べないことを多く学ぶことができたと回答する参加者が多かった。

8.3.演習後,興味関心が増した事
演習後に興味関心が増した事について高い順に,農業と高冷地それぞれ27%、環境18%,野菜14%,食料11%,家畜3%という回答結果になった(図3)。

演習参加後に興味関心が増大した事.jpg

今年度も宿泊を伴わない演習であったため,夜間の講義の時間は取れなかった。ゆえに,講義の時間は1日目の午前中に集中して行った。講義内容は高冷地の農業の特性,出荷場や高冷地農業の現状と問題についてである。翌日の午前中の土壌調査前に約1時間のディスカッションタイムをとり,前日の講義時に提示した課題について意見を述べてもらった。参加者の多くは,その内容を記憶しながら土壌や作物根の観察・調査なども経て,作物の栽培環境を学ぶ重要性について理解を深めてくれたようである。構内農場における野菜の播種・定植作業,農家視察,植生調査・観察などの経験も農業や環境に関心をもつ重要なきっかけになったと考えられた。今後も今回の演習で培った経験や知識を活用して,農学を学ぶモチベーションに繋げてほしいと思う。

9.今後の予定と改善点
昨年度は宿泊を伴わない形式で実施することができた。しかし,今年度はCOVID-19 の感染拡大のため,野辺山ステーションでの開催は中止した。アンケート結果にも多くの参加者が野辺山ステーションに来場して演習に参加することを希望していたため,とても申し訳なく思う。ただ,今回は演習直前に抗原・抗体検査の実施や健康状態の観察を行い,他の大学からも参加できたことは良かったと思う。

次年度の開催について,どのような方法で行うかはCOVID-19の感染状況をみながらの本学の決定による。野辺山ステーションに来場できるような状況になることが最良であるが,演習の目的を達成できるように,今年度に引き続き,高冷地農業の現状について学び,理解を深める演習内容を再考してより良いものにできればと考えている。

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