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令和3年度「高冷地植物生産生態学演習」を実施しました

お知らせ農場系の実習

キャベツ収穫に挑戦
キャベツ収穫に挑戦
土壌調査に挑戦
土壌調査に挑戦

1.演習名
高冷地植物生産生態学演習

2.演習の目的
高冷地という特殊な環境下における農業について学び、持続可能な農業生産について考える機会を創出することが目的である。また、共同作業を行うことによって協調性を培う機会を創出することも本演習の目的である。

3.実施日程
令和3年8月23日(月)~ 8月26日(木)
注)今回はコロナ感染防止のため、日帰りで実施。

4.実施場所
農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター(AFC)
野辺山ステーション(ST)

5.担当教員
鈴木香奈子助教、春日重光教授、荒瀬輝夫准教授、椎葉湧一朗助手

6.参加人数
12名(信州大学農学部)

7.演習内容の概要

【1日目】
午前中に野辺山ST、実習の内容の説明を行った。今回はコロナ感染拡大のため、JA長野八ヶ岳野辺山支所の出荷場の視察は中止となった。従って、午前中の講義の中で出荷場の紹介も含め、高冷地農業の現状について講義を行った。午前中の残りの時間から午後にかけてキャベツの収穫・出荷作業を実施した。

【2日目】
午前中はキャベツの収穫・出荷作業を継続した。2日目では根の引き抜き、ビニルマルチはがしなど圃場の片付けも実施した。根の抜き作業を行いながら、キャベツの正常根と根瘤病に罹病した根の異なりについても観察を行った。午後は、湛水し易い土壌の調査を行った。約1m深さまで堀り、土壌の断面の観察、また室内では土色と土壌酸性度の調査を行った。加えて、圃場では土壌サンプリング手法についても学んだ。

【3日目】
予定ではスイートコーンの収穫作業を実施する内容であったが、スイートコーン生育が遅れ、今回の演習では実施できなかった。しかし、イネ科作物の生育調査の方法、特徴について圃場において説明を行った。午後はベニバナインゲンの根を掘り、マメ科作物の根粒の観察を実施した。

【4日目】
野辺山ST近隣にある矢出川公園における野生植物の観察、野辺山宇宙電波観測所の視察、平沢山付近にある獅子岩周辺の岩や植物の観察、また平沢山登山を行った。午後はGoogleレンズ機能を活用し、上記の観察中に撮影した植物の写真を検索にかけて野生植物の特定に挑戦した。その他の時間は調査のまとめ、レポートの作成を行った。

8. 成果
8.1. 全体的な評価
今回の演習内容について楽しさとしては大変満足が参加者の82%、満足が18%(図1左)、また有益さに関しても大変有益であったと回答した参加者が100%(図1右)と非常に全体的な評価は高くなった。

このような演習への高い評価の理由は、高冷地ならではの作物について学ぶことができたこと、作業は大変ではあったものの、日頃できない経験ができたこと、そして土壌や植物根について学ぶことができたことなどであった。

演習の楽しさと有益さについて.jpg

8.2. 各演習内容について
キャベツの収穫作業については、参加者の約9割が満足と回答した(図2)。作物根の観察・調査、ならびに土壌の観察・調査、ベニバナインゲンの調査、高冷地の植生の調査・観察は参加者の全員が満足したと回答している。一方、スイートコーンの観察と収穫については不満という回答と無回答もあった。

伊那キャンパスにおける実習で体験したことのなかったキャベツの収穫・出荷作業やベニバナインゲンの調査は参加者にとって新鮮に感じたようである。体力的に大変だったとの回答もあったが楽しんで参加していた様子が見て取れた。

今回から導入した土壌の調査について、これまで土壌を掘り出し、土色や硬さや酸性度などを調べた体験がなかったことから関心を持ち始めた参加者が多かったようである。一方、スイートコーンの観察と収穫については残念ながら生育が遅れており収穫や味見は実施できなかった。地上部と地下部の特性については観察する機会を設けたが、収穫・味見などは体験できなかったことから不満に感じた参加者もおり、また無回答の参加者がいたようである。

各実習・講義の評価.jpg

8.3. 演習後、興味関心が増した事
演習後に興味関心が増した事について高い順に、農業29%、野菜26%、高冷地23%、環境13%、食料6%、その他として土壌について3%という回答結果になった(図3)。

今回は宿泊を伴わない演習であったため、講義時間を十分に取ることはできなかった。そこで演習1日目に、高冷地の農業の特性、出荷場や高冷地農業の現状と問題について1時間という短い時間であったものの講義を実施した。参加者の多くは、その内容を記憶しながら、キャベツの収穫・出荷作業、土壌や作物根の観察・調査などを経て、理解を深めてくれたようである。これは、本演習の大きな成果であるといえる。同様に野菜や環境についても関心を持ち始めた参加者がいることがこのアンケート結果から分かった。高原野菜生産において多量の化学肥料の施肥や薬剤、農薬の散布による土壌・水系への汚染の危険性について考える機会を創出した本演習の結果が、今後の農学を学ぶ糧になってくれると期待している。

興味・関心が増したこと.jpg

9. 今後の予定と改善点
昨年度はCOVID-19の感染拡大のため、高冷地における全演習は中止となった。今年度は宿泊を伴わない形式で実施することができた。ただし、本学の学生に限ってしまい、他県の参加者の受け入れはできなかったことに対しては大変申し訳なく残念であった。

次年度の開催については、COVID-19の感染状況をみながら本学の決定による。ただし、今年度の演習を通して、宿泊はできなくても演習の目的を達成できる方法もあることが分かった。ゆえに、今年度に引き続き、高冷地の農業の現状について学び、理解を深める内容の演習内容を再考し、作成したいと考えている。

次年度に向けた具体的な改善点としては、持ち物リストを更に詳細に説明したものにする必要がある。アンケート回答者から指摘があったことであるが、例えば、軍手ではなく作業に適したゴム手袋と明確にする、などである。また、作業に使用する物品についてもメンテナンスをしっかりやる必要があることに気が付いた。これは怪我防止にも役にたつと考えられた。加えて、今回のスイートコーンの生育の遅延による実習内容変更は参加者が残念に感じたことがとても分かった。従って、演習開催時期と作物収穫時期をできる限り合わせられるように尽力できればと思っている。

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