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令和3年度「高冷地動物生産生態学演習」を実施しました

お知らせ農場系の実習

八ヶ岳牧場の見学
八ヶ岳牧場の見学
チーズ加工中
チーズ加工中

1.演習名
高冷地動物生産生態学演習

2.演習の目的
高冷地という特殊な環境下における酪農・畜産業の重要性を知ることに重点をおきながら、高冷地の持続可能な農業・食料生産について考える機会を創出することが目的である。また、共同作業の重要性を知り、協調性を培う機会を創出することも目的である。

3.実施日程
令和3年8月30日(月)~ 9月2日(木)
注)今回はコロナ感染防止のため、日帰りで実施。

4.実施場所
農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター(AFC)
野辺山ステーション(ST)

5.担当教員
今井裕理子助教、鈴木香奈子助教、上野 豊准教授、荒瀬輝夫准教授、
椎葉湧一朗助手

6.参加人数
39名(38名:信州大学農学部、1名:信州大学繊維学部)
※他大学からの受講希望者が9名(日本獣医生命科学大学7名、琉球大学1名、東京農工大学1名)いたが、緊急事態宣言が発令されたため、受入を中止した。

7.演習内容の概要

【1日目】
午前中は野辺山STと実習内容の説明を行った後、牛舎の清掃(ボロ出し、埃はらい)と放牧地での牧草や雑草の観察を行った。今回はコロナ感染拡大のため、JA長野八ヶ岳野辺山支所の出荷場の視察は中止となった。従って、午後の講義の中で、出荷場の紹介、コールドチェーンの概要、高冷地農業の現状を説明した。講義後、班ごとに分かれ、黒毛和種牛の世話(給餌)、キャベツの収穫作業準備、牛道の整備(石拾い、雑木撤去)を行った。

【2日目】
午前中はキャベツの収穫・出荷作業を実施した。午後は、乳製品の加工として、チーズができる原理について学んだ後、低脂肪乳を用いてモッツァレラチーズ製造を行った。また、2日目の給餌担当班は黒毛和種牛の世話(給餌)を行った。

【3日目】
午前中は放牧地の整備(雑木撤去)を行った。その後、八ヶ岳牧場に見学に行く班とキャベツの収穫作業を行う班に分かれた。八ヶ岳牧場では、施設内を見学しながら、場長の説明やビデオによって牛の飼養管理やボディコンデションスコアの見方について学んだ他、搾乳体験をした。キャベツの収穫作業では、根の引き抜き、ビニルマルチはがしなど圃場の片付けも実施した。午後は牧場見学の班とキャベツの収穫作業を行う班を入れ替えて午前と同様に実施した。その後、放牧地の整備(雑木撤去)の続きを行った。また、3日目の給餌担当班は黒毛和種牛の世話(給餌)を行った。

【4日目】
野辺山ST近隣にある矢出川公園における野生植物の観察、野辺山宇宙電波観測所の視察を行った。また、雨天のため平沢山登山は行わず、獅子岩周辺の植生を観察した。野辺山STに戻って残りの時間と午後の時間はレポートの作成を行った。

8.成果
8.1. 全体的な評価
今回の演習について、楽しさとしては大変満足が参加者の76%、満足が24%(図1左)、有益さに関しては大変有益であったと回答した参加者が76%(図1右)であった。

普段体験することのないキャベツの収穫・出荷作業を通じて食料生産を体験できた、伊那とは異なる高冷地農業を学べた、農業の大変さや楽しさを感じることができた、などが演習の満足度や有益さの理由として挙げられていた。また、昨年はコロナの影響で演習が実施されなかったため、参加者の内訳は動物コースの2年生と3年生がほぼ同数で、さらに少数ではあったが他学部生や他コース生が参加していた。このような学年やコース・学部を跨いだ新たな交流が有意義であった、楽しかったといった感想もみられた。

演習の楽しさと有益さ.jpg

8.2. 各演習内容について
大変満足あるいは満足の評価が多かったものは、八ヶ岳牧場見学、乳製品の加工体験、飼養管理、キャベツの収穫作業であった(図2)。放牧地の整備、牧草の調査・観察、植生調査・観察については、普通という回答が比較的多く、放牧地の整備と植生調査・観察については不満という回答もみられた。

伊那キャンパスでは肉用牛の子牛生産が主体であるため、酪農の生産現場で飼養管理を学ぶ機会は限られている。このため、実際に現場を見ながら生産管理者(牧場長)による丁寧な説明を受けたことは貴重な学びの機会になったようである。牧場内を移動する際も積極的に農場長に質問している様子が見られた。また、キャベツの収穫・出荷作業やチーズ加工は初めて体験する参加者が多く新鮮に感じたようである。特にキャベツの収穫・出荷体験は体力的に大変だったが、農家の大変さや作物が市場に出るまでの工夫等を知ると共に、やりがいを感じた参加者が多かったようである。放牧地の整備と牧草の調査・観察については評価理由や感想の記載がなかったことから、他の内容に比べて目新しさがなく、印象が薄かったのではないかと考えられる。また、植生調査・観察については、雨天により十分な観察を行えなかったこと、平沢山に登れなかったことが満足度を下げた要因であると思われた。

各実習・講義の評価2.jpg

8.3. 演習後、興味関心が増した事
演習後に興味関心が増した事について高い順に、家畜23%、農業21%、流通15%、高冷地14%、品種12%、野菜 11%、その他3%としてチーズ(酪農)や複合農業、ない1%という回答結果になった(図3)。

アンケート結果から、家畜に関しては、特に八ヶ岳牧場の見学で飼養環境など多くのことを学び刺激を受けたという声が多かった。チーズの加工では、同じ製造工程にも関わらずうまくできた班と苦戦した班があり、その違いが何によってもたらされたのかという疑問から加工への興味を持った参加者がいた。また、本演習の参加者の多くは動物コースの学生だが、農業や野菜について興味・関心を増したという回答が多くみられた。キャベツの収穫作業体験を通じて、あるいは規格外のキャベツが野辺山STで飼養している牛に給与されていることを知ることで、農業や食料生産の課題、農業と畜産業の関係などについて理解を深め、興味・関心の幅を広げるよいきっかけになったのではないかと考える。これまで机上で学んできた知識が、今回の演習の中で実際に汗をかきながら農業・畜産業について感じ学んだことと結びつき、今後の生活、勉学、研究における視点や姿勢に生かされることを期待している。

興味・関心が増したこと2.jpg

9. 今後の予定と改善点
昨年度の演習はCOVID-19の感染拡大のため中止した。今年度は宿泊を伴わない形式であったが実施することができた。ただし、他県の参加者の受け入れをできなかったことに対しては大変申し訳なく残念であった。

COVID-19の影響によりJAの出荷場見学も中止されたが、植物コースの担当教員による講義を通じて高冷地農業に関する理解を深め、畜産だけでなく農業や環境への興味・関心を高めることができた。次年度以降も演習の目的を達成するべく、他コース教員との協力体制の下で演習内容について再考し、改善に努めたいと考えている。

次年度に向けた改善点として現在提示できる事として、作業前に目的と方法について明確に説明することと、満足度の低かった内容については内容そのもの、または実施方法についての見直しに取り組みたい。

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