Facebook

令和3年度「自然の成り立ちと山の生業演習」を実施しました

お知らせ演習林系の実習

図1:植生の説明。前日の講義と連動して採草地の遷移状況を実感
図1:植生の説明。前日の講義と連動して採草地の遷移状況を実感
図2:人工林管理の説明。林業の仕組みを模式図と写真から学ぶ
図2:人工林管理の説明。林業の仕組みを模式図と写真から学ぶ
図3:林分調査。傾斜を計測。中央のひもは調査区画
図3:林分調査。傾斜を計測。中央のひもは調査区画
図4:データ加工の説明。調査林分の特徴をつかむ手順を学ぶ
図4:データ加工の説明。調査林分の特徴をつかむ手順を学ぶ

1.演習名
「自然の成り立ちと山の生業演習」

2.実習目的
本演習は本格的なフィールド演習の未経験な非農学部生にも、中部山岳域地域における「自然の成り立ち」から森林作業と間伐材加工による「山の生業」までを安全に体験出来る初心者向けのダイジェスト演習として開催する。

3.実施日程
令和3年9月7日(火)~9月10日(金)

4.実施場所
信州大学農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター(AFC)
構内ステーション、西駒ステーション、手良沢山ステーション

5.担当教員
小林 元准教授、荒瀬輝夫准教授、大塚 大助手

6.参加人数
信州大学大学院総合理工学研究科2名
信州大学農学部7名
※他大学からの受講希望者が4名(京都大学2名、北海道大学1名、龍谷大学1名)いたが、新型コロナウイルス感染症拡大の状況を鑑み、受入を中止した。

7.実習内容
 R3自然の成り立ち日程表.jpg

8.概要
本年度は昨年度に引き続き、日程の前半では西駒ステーション近隣を対象として自然の成り立ちを学び、後半では手良沢山ステーションを対象として人工林管理の一端を学ぶプログラムで本演習を開講した。長引く降雨の影響が懸念されたため、安全措置として屋外のプログラムを無理がないように一部変更した。

【1日目】
初めに、開校式ならびに安全講習を行った。演習林各ステーションの紹介、特に2日目の現場となる西駒ステーションを重点的に、荒瀬教員が多くの写真を交えて動植物について講義を行った。
そののち、小林教員から日本における森林区分(原生林・天然生林・二次林・人工林)とそれぞれの成立過程について、古代から近代に至るまでの時代背景とともに説明がなされた。今年度は公開アーカイブである過去の空中写真を使用した西駒ステーションの利用状況の説明が加えられ、具体的な事例を視覚的に得ることができたと思われる。
休憩をはさみ、西駒ステーション近隣の地形図を用いて登山経路の確認と翌日の注意事項を伝達して初日の日程は終了した。

【2日目】
降雨が予想されたため、朝の出発時刻を早めたスタートとなった。今年度は桂小場宿舎から桂小場登山道ルートを経由し、大樽小屋を折り返し地点とした無理のないルートに変更された。移動中は随時小林教員から植生についての説明がなされた。登山道入り口から稜線に至るまでは採草地から人工林へ変化した様子(図-1)を、目的地の大樽小屋付近では主に天然生林で木材収穫が行われてきた状況を実感した。
状況から登山時と下山時で同一ルートを採らざるを得なかったものの、時間変更が功を奏し大きなトラブルなく下山することができた。

【3日目】
明け方に弱い降雨があったため、予定を組み替えて小林教員による人工林の育成についての講義が初めに行われた (図-2)。森林環境学コースの学生が演習を行っている状況写真による説明が試みられており、35度を超える斜面での作業イメージを抱きやすい構成となっている。午後には森林作業道から現場を視察し、林業特有の広大な空間スケールを実感した。
今年度の林業体験プログラムは、1)チェンソーによる丸太切り・薪割り、2)間伐調査(図-3)であった。間伐調査では間伐前林分と間伐後林分それぞれで毎木調査を行い、処理区と比較対象という林分調査での基本的な検討が行えるデータの収集と調査方法に触れた。

【4日目】
小林・荒瀬両教員からデータの取り扱いについて説明(図-4)を受けたのち、受講生は3日目に取得したそれぞれの数値を用いて樹木のヒストグラムを作成した。間伐前後の頻度分布を比較することによって、間伐の効果を視覚的に確認した。

今年度はCOVID-19に限らず、天候にも恵まれず演習プログラムに制限を受け、直前の変更が余儀なくされた場面もあった。しかし、振り返れば演習日程を通してスライドなどの事前説明から実体験(登山、林業体験)といった流れが一貫されていた。このため、演習の目的である安全なフィールド演習は十分に達成されたものと考える。

9.感想・今後の展望と課題
本演習の内容について、受講生からは肯定的な意見が占めた。自由記述欄を抜粋すると、「普段できない体験ができた」、「人工林と天然林の差異がわかった」、「森林系の知識に触れて新鮮だった」などの意見があり、演習目的をよく達成できたと考える。また、受講生は演習参加後に興味関心が増大したこととして林業と森林を挙げており、分野外学生の森林林業への入り口として適当な演習プログラムであると再確認することができた。

一方で、職業的な興味を引いた学生からは、「実際に林業を営む人の意見を聞いてみたい」とする意見も挙げられた。COVID-19の状況下では対面での談話は困難ながら、充実してきた視覚資料の延長として、例えば遠隔会議システムの活用などを今後は検討したい。

« 前の記事へ

お知らせ一覧にもどる

次の記事へ »