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令和3年度「高冷地生物生産生態学演習」を実施しました

お知らせ農場系の実習

キャベツ収穫に挑戦
キャベツ収穫に挑戦
スイートコーン収穫に挑戦
スイートコーン収穫に挑戦

1.演習名
高冷地生物生産生態学演習

2.演習の目的
高冷地という特殊な環境下における農業と畜産業を組み合わせた複合農業の重要性について学び、持続可能な農業生産について考える機会を創出することが目的である。また、共同作業を行うことによって協調性を培う機会を創出することも本演習の目的である。

3.実施日程
令和3年9月6日(月)~9月9日(木)
注)今回はコロナ感染防止のため、日帰りで実施。

4.実施場所
農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター(AFC)
野辺山ステーション(ST)

5.担当教員
鈴木香奈子助教、春日重光教授、荒瀬輝夫准教授、椎葉湧一朗助手

6.参加人数
35名(信大農学部34名、繊維学部1名)
※他大学からの受講希望者が2名(東京農工大学2名)いたが、緊急事態宣言が発令されたため、受入を中止した。

7.演習内容の概要

【1日目】
午前中に野辺山ST、実習の内容の説明を行った。今回はコロナ感染拡大のため、JA長野八ヶ岳野辺山支所の出荷場の視察は中止となった。従って、午前中の講義の中で出荷場の紹介も含め、高冷地農業の現状について講義を行った。午前中の残りの時間から午後にかけてキャベツの収穫・出荷作業を実施した。

【2日目】
午前は、1-3班がキャベツの収穫・出荷作業を継続し、4-6班はスイートコーンの収穫作業を実施した。午後は、湛水し易い土壌の調査を実施した。約1m深さまで土壌を堀り、土壌断面を観察し、土壌サンプルを採取した。この実習内では土壌のサンプリング方法についても学んだ。その後、室内で土色と土壌酸性度の調査を行った。

【3日目】
午前は4-6班がキャベツの収穫・出荷作業を行った。1-3班はスイートコーンの収穫作業を実施した。午後は畜産業に関連する講義を実施、その後牛舎へ移動して清掃・給餌作業を実施した。

【4日目】
野辺山ST近隣にある矢出川公園における野生植物の観察、野辺山宇宙電波観測所の視察、平沢山付近にある獅子岩周辺の岩や植物の観察を行った。天候不良のため、平沢山への登山は中止した。午後はGoogleレンズ機能を活用し、上記の観察中に撮影した植物の写真を検索にかけて野生植物の特定に挑戦した。その他の時間は調査のまとめやレポート作成を行った。

8. 成果
8.1. 全体的な評価
今回の演習内容について楽しさとしては大変満足が参加者の69%、満足が31%(図1左)であった。有益さに関しては大変有益であったと回答した参加者が77%、まあまあ有益と回答した参加者が23%であった(図1右)。これからの回答結果より、演習内容全体についての評価は高かったと考えられる。

 このような演習への高い評価の理由は、高冷地ならではの作物について学ぶことができ、日頃できない体験ができたこと、また今まで知らなかったことを知ることができたこと、などが挙げられた。

演習の楽しさと有益さ.jpg

8.2. 各演習内容について
キャベツの収穫作業の実習は参加者の約9割が大変満足もしくは満足と回答した(図2)。土壌の観察・調査、畜産飼養の仕事体験、スイートコーンの観察・収穫、植生調査・観察についても同様の傾向を示した。ただし、畜産飼養の仕事体験では不満の回答もあり、理由は牛舎の清掃に抵抗があったものと考えられる。一方、作物根の観察・調査については参加者の約8割は満足した様子であったが実習内容に無回答の参加者もいた。時間をかけてキャベツの根瘤病感染の根と正常根の異なりを十分観察できず、この実習内容の意義が伝わり難かったものと考えた。

参加者の多くは、高冷地独特の気候を感じながら日頃経験したことのない圃場作業を行い、農作業の困難さを自身で感じ、この演習に楽しんで参加していたことがアンケート回答からよくわかった。今年はキャベツの他にもスイートコーンも収穫する内容にしたことで異なる作物に触れて楽しかったという意見が多数見受けられた。

今年度から野辺山ステーションの黒毛和種を活用し、身近に牛と触れあえる実習内容を取り入れたこと、またJA長野八ヶ岳の授精師の方から情報を共有して頂き、農協や授精師の仕事の内容、高冷地における畜産業の重要性などの講義を開催できたことが参加者の畜産への興味を抱かせるきっかけになったようである。

植生調査・観察については登山も予定に入れていたが天候がすぐれなかったために中止になったことが残念との回答もあった。また、Googleレンズ機能で撮影した植物を調べることに挑戦したが、ネット状況があまり良好ではなく残念であったとの意見もあった。しかしながら、日頃身近に見ることができない高冷地の植生は参加者にとって興味深いものであったと感じた。

各実習・講義の評価2.jpg

8.3. 演習後、興味関心が増した事
演習後に興味関心が増した事について高い順に、農業20%、野菜19%、高冷地21%、環境11%、家畜16%、食料11%、その他として文化について1%、特にないが1%という回答結果になった(図3)。

高冷地や農業に関心を抱いた参加者が多かったことがこの結果より分かった。高冷地農業が直面している問題についてキャベツの収穫作業実習の前に講義を実施した。その内容を記憶しながら、自分自身で農作業を行ってみて農作業の大変さを実感できた参加者が多くいたようである。高冷地の持続可能な農業について考えてみたいといった回答も見受けられた。また、今回、野辺山ステーションの黒毛和種の世話や野辺山の酪農・畜産に纏わる仕事内容やその重要性について講義を実施できたことから、家畜についても関心を抱いた参加者が多かったようである。今後も野辺山開拓にとって農業と畜産を組み合わせた複合農業の特性や重要性について演習を通して参加者へ伝えられるような実習内容にしたいと考えている。

興味・関心が増したこと.jpg

9. 今後の予定と改善点
COVID-19の影響により昨年度は中止といった結果になったが、今年度は日帰りという方法で本演習を実施することができた。しかしながら、本学の学生に限ってしまい、他県の参加者の受け入れはできなかったことに対しては大変申し訳なく残念であった。

 次年度の実施の可能性については、COVID-19の感染状況も考えながら本学の決定による。ただし、今回のように宿泊はできなくても演習の目的を達成できる方法もあり、今年度に引き続き、アンケート回答からもヒントを得て、高冷地農業について理解を深めることができるような演習内容を更に考えて作成していきたいと考えている。

 次年度に向けた具体的な改善点としては、野辺山ステーションの施設状況についてきちんと情報共有し、必要な持ち物について詳細に伝えることが必要と考えた。また作業に使用する物品についてもメンテナンスをしっかりやる必要がある。メンテナンスを怠ると怪我に繋がるためである。その他に、植生の観察・調査に必要なネット環境の整う場所の確保や使用するアプリの事前説明が必要であると分かった。尚、本演習時は気温が下がり寒い思いをさせたことから、事前に暖房器具のチェックや準備も必要であると分かった。これらの点について改善策を模索し、次年度の演習に備えたい。

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