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平成26年度公開森林実習「山岳環境保全学演習」を実施しました

演習林系の実習

<公開森林実習名>

山岳環境保全学演習

<実習目的>

山岳環境保全に必要な基礎知識と技術を、西駒ステーションから西駒ヶ岳(木曽駒ヶ岳)を(標高1,250m2,956m)をフィールドとして集中実習により習得する。

1.氷食地形など日本アルプスの高山環境の成り立ちについて学ぶ。

2.代表的な高山植物の観察を行い、希少な高山植物群落の保全について学ぶ。

3.高山帯から亜高山帯を経て山地帯までの、植物の垂直分布帯を踏査し、信州の自然の多様性について体感する。

4.高山環境に生息する昆虫類や鳥類の観察、野生動物のフィールドサインの識別方法など、フィールドワークの基礎を学ぶ。

5.コンパスを使用した地図の読みや、変化が激しい山岳気象への対処など、登山の基礎知識を学ぶ。

6.山小屋で宿泊し、し尿処理、ゴミ処理などの山岳環境保全のための対処方法を学ぶ。

7.登山を通したフィールドワークの実践から、チームワークの重要性について学ぶ。

<実施日程>

平成26826()29() 34

<実施場所>

農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター(AFC)西駒ステーション

<担当教員>

泉山茂之教授、中村寛志教授

<参加人数>

17

(静岡大2名、京都大1 名、宇都宮大1名、日本獣医生命科学大1名、筑波大院2名、

信州大農学部9名、工学部1名)

TA1

<実習スケジュール>

初日は本学 食と緑の科学資料館「ゆりの木」講義室にて世界から見た日本アルプスの山岳環境について、高山植物の生活史と保護、野生動物の生態と保護管理などについての講義が行われた。2日目は中央アルプス駒ヶ岳ロープ―ウェイで千畳敷カールに上がり、千畳敷から西駒ヶ岳に至る道中の高山植物について学んだ。千畳敷カールの登りでは、ニホンザルの群れに出会い、親子のサルや草本類を採食する様子を観察することができた。宝剣山荘前で昼食をとり、木曽駒ヶ岳から下り標高2,600m辺りの風当たりが強い風衝地帯には、ハイマツやその周りに生育するガンコウラン、コケモモなど、木本類が多くみられた。氷食地形の場所では雪が融けるタイミングの違いによる植物の成長の違いをみることができた。岩場の多い地帯にはトウヤクリンドウなどの植物が多く生育し、中央アルプス固有種であるヒメウスユキソウもみられ、また学生たちの頭上にはイワヒバリやカヤクグリ、ホシガラスが飛びまわり、さえずる声を聴くことができ、鳥類についても学んだ。宿泊した西駒山荘は改装工事が終わり、西駒山荘に向かう道中ではオコジョやテンの糞を多く見つけ、野生動物の生態を学ぶことができた。3日目は高山帯では這うように生育していたハイマツが亜高山帯に入ると背丈が高くなっていくことを目の当たりにし、ダケカンバ林を抜け、ブナやミズナラ、コブシなどの広葉樹が生育していることで樹林帯に入ったことを確認できた。最終日は西駒ステーションの宿泊施設にて他大学他学部の学生間で意見交換し、レポートを作成して実習のまとめを行った。

<成果と今後>

本演習は調査研究色が多いようにみられるが、受講生にとっては、登山における知識、自然の気候や標高に応じ生育する動植物の営みなど実際に観察しながら講義を受けることができ、山岳環境保全について広い視野からの学びが多くあったことがレポートによりうかがえた。また、北海道から沖縄に至る全国の大学生が本州の中央に位置する山岳地に集まり、各々の気候や環境の違いを情報交換しあえることも、公開集中講義の有意義な点ともいえる。

中央アルプス西駒ヶ岳は、地元の中学校においても多く登山教育が実施されている。そこに信大ルートという登山道をもつAFC西駒ステーションは、天然林が多く残っており、里山から約2,000mの標高差がある広範囲のフィールドで多種多様な野生の動植物が観察できる。この豊かな森林と自然を有する利点を活かし、今後もフィールド教育の実践を続けてゆきたい。

<受講生アンケート>

H26アンケート-山岳環境保全学演習PDF:99KB

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