令和6年12月19日(木)、信州大学長野(工学)キャンパスにて令和6年度男女共同参画セミナー~第5弾~が開催されました。「男女共同参画における工学部の課題とチャレンジ」をテーマに、本学浜野京理事(DE&I推進担当)をファシリテーター、パネリストには、金沢大学副学長・ダイバーシティ推進機構長の長谷部徳子先生、エムケー精工株式会社執行役員管理本部副本部長の佐須田好洋様をお招きし、本学から安彦広斉理事(総務、財務担当)、香山瑞恵副学長・工学部長と、総合医理工学研究科1年生の小野田朱音さんにも加わっていただき、パネルディスカッションを行いました。Zoomによるライブ配信も実施し、132名が参加しました。
金沢大学の長谷部徳子先生からはダイバーシティ推進機構について、設立の経緯や目的について説明があった後、女性研究者を増やすための工夫をお話しいただきました。特に女性が少ない理工系・工学系に関しては、女性限定公募を原則全ての分野でやっていますが、実際は公募に対して実際に採用できた割合がすごく少なく、公募の仕方について課題があることが分かりました。裾野拡大のため、女子枠特別入試というのを実施したところ、すごく女子学生をウェルカムしているんだということが伝わり、一般入試の方で入学してくれる女子学生も増えたとのお話しがありました。また、ダイバーシティ推進パッケージという意思決定層への女性の参画を促進して、ポジティブな循環を作り出そうというようなことに取り組んでおられることも伺いました。
本学の香山瑞恵先生からは、まず初めに、工学部の執行部について紹介がありました。この4月に信州大学女性初の学部長となられた香山学部長は、学部長を含む6名の執行部と、学部長補佐6名と一緒に工学部を運営されています。特に、執行部の6名のうち2名を女性とし、3分の1が女性となるよう、多様性の確保を意識されたそうです。その上で、工学部の課題について、学生の現状と教員の現状をお話しいただきました。まず、工学部に在籍している学生の男女の割合は、この過去5年間ほぼ変わっておらず、学部の構成も入試の方法も変えてないことから、おそらく現在の学部構成や選抜方法ではこの比率は変わらない、ということが考えられるとのことでした。教員については、承継教員121名のうち女性教員は6名で、所属の学科や年代の偏りというのもあり、応募で女性限定公募等をしたとしても少ない、もしくはないというのが現状とのお話しがありました。その後、今後はどのように工学部を変革していきたいかという展望について、香山学部長から様々な提案がありました。
本学大学院生の小野田朱音様からは、所属する梅干野(ほやの)研究室の紹介と、活動内容についてお話しをしていただきました。研究室の男女比が6.5: 3.5と、比較的女子の割合が多い研究室となっているため、大変のびのびと楽しく研究されているそうです。その中でも、博士課程進学者というのはすごく稀ですが、博士課程に進学することを決めた理由は、素直に研究が楽しく、まだ研究を続けたいという思いからだったそうですが、家族も応援してくれて、本当に両親に感謝しているとのことでした。また、博士課程修了後の就職について考えた時に、工学部に女性の先生が少ないということもあるとは思いますが、家庭のイメージが持ちにくかったため、自然と将来の選択肢にはならなかったとのお話もあり、大学としてロールモデルを提示する必要性を知ることができました。一方で、大学院在学中に将来のために学芸員の資格を取得し、来年の春からは学芸員として働きながら博士課程も継続するといった将来を考えられているそうです。
佐須田好洋様からは、まず初めにエムケー精工様の会社紹介があり、その後、社内の制度作りについて、3つほどポイントを挙げていただきました。1点目は、経営層、特に経営トップを巻き込むことの重要性、2点目は、臨機応変な対応で様々な制度をスピード感を持って作るということ、3点目は、ちょっとでいいから常に変化しよう、変化し続けようということです。また、生活に密着した製品を作る際、女性の設計者やデザイナーが当然いらっしゃいますが、男性、女性に関わらず、社員の声を拾い上げる仕組みがあり、社員の意見と市場の声を聞きながら製品作りを進めているというお話しでした。
本学の安彦広斉理事からは、前職の文科省でのご経験からお話を頂きました。TIMSSやPISAという有名な国際調査、また全国学力学習状況調査の結果、男女の実質的な差はないが、理系文系の志向の変化を男女別に見てみると、女子はあまり理系を選ばない傾向があるため、大学博士課程に進むにしたがって少なくなり、女性教員比率が低い、という現状になっているのではないかとの指摘がありました。また、高校生全体の72%ぐらいが普通科に進学する中で、理系コースの女子が高校3年時で16%しかいないため、当然のことながら、大学への理系進学数が少なくなる傾向にあるとのことです。その背景として、学校の先生たちに女性の教員の比率が少ないという点、特に進路選択で大事になってくるのは中学校ですが、その女性の教員の比率を見ると、世界の平均が69.2%に対して、日本は42.2%と低く、その中でも数学、理科の先生の男女比をみると、倍以上女性が少ないというような現状があるそうです。その他、教育現場の方でも、小中学校の校長の女性割合の低さや教育委員会の教育長、教育委員にも女性の比率は少ないという点、さらに、教員免許を取っても教員採用試験の志願者、特に中学校の先生を目指す女性が10年間で6割以上減っているということで、かなり危機的な状況ではないかとのことでした。
多くの方にご参加、ご視聴いただきありがとうございました。
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