学長メッセージ

学長 中村宗一郎
学長 中村宗一郎

 このたび、信州大学では「男女共同参画推進センター」を改組し、「DE&I推進センター」として新たな歩みを始めました。すべての構成員が、その個性と能力を最大限に発揮できる環境を整えることは、これからの大学に課せられた重要な使命であると考えています。その使命を果たすべく、学長の任期の折り返しを迎えた令和6年10月に、重点施策として、三つを掲げました。その一つが「DE&I推進」です。DE&Iとは、多様性(Diversity)を尊重し、すべての人々に公正な機会(Equity)を提供し、誰一人取り残さない包摂(Inclusion)を実現するという、現代社会における普遍的で本質的な価値観です。これは単なる理念の追求にとどまらず、組織の活力を高め、新たな創造を生み出す原動力ともなるものです。大学における教育・研究・社会連携のあらゆる場面において、この価値観が真に根づくことが、未来を切り拓く知の共同体としての信州大学の存在意義を支えると確信しています。

 本学ではこれまで、女性教員の採用促進や管理職への登用をはじめとするジェンダー平等の実現に向けた取組を進めてきました。しかしながら、現状に満足することなく、今後はさらに一歩踏み込んだアファーマティブ・アクションを継続的に推進し、女性が自らの意志で職業的成長を遂げていける環境づくりに努めていきます。こうした課題意識の背景には、長野県における人口構造の変化があります。出生数の減少や若年女性の県外流出が深刻化する中で、生活と仕事を安心して両立できる社会の構築が急務であり、この地域の中核を担う大学としても、社会課題に真摯に向き合い、その使命を果たしていく決意です。

 また、多様な性を生きる学生や教職員への理解と支援も、大学が果たすべき基本的な責任の一つと考えています。わが国では、性的マイノリティの方々を支援する法制度がなお整備途上にあり、教育機関が率先して環境整備と啓発に取り組む必要があります。本学では、全国の大学に先駆けてLGBTQ+の方々が安心して学び、働くことができるよう、ガイドラインを策定しました。今後は、多目的トイレや更衣室の整備といった実効的な施策をさらに進めていきたいと考えています。

 信州大学は、「世界につながる信州大学」を合言葉に、"個性が輝き、多様性が価値となる未来"の実現に向けて、日々歩みを進めています。多様な人々が互いに敬意をもって共存し、それぞれの夢と可能性を実現できる環境を整えることは、地域社会と世界の懸け橋となる大学としての使命にほかなりません。

 DE&I推進センター設立を機に、信州大学におけるDE&Iの取組がさらに深化し、すべての構成員にとって「学び甲斐があり、働き甲斐があり、互いの夢が叶う大学」へと進化していくことを心より願っています。

 今後とも、DE&Iの推進に対し、皆様の一層のご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。

令和7年4月

DE&I推進センター長メッセージ

センター長 関利恵子
センター長 関利恵子(学術研究院社会科学系教授/学長補佐)

 信州大学は、2008年の男女共同参画推進ワーキングチームの発足以来、2016年に、男女共同参画推進室から男女共同参画推進センターへと改称し、組織内の教職員にとって働きやすい職場環境の充実を目指し、女性研究者支援、ワークライフバランス、意識啓発などに取り組んできました。

 しかし、急速に社会が変化する昨今においては、ジェンダー、年齢、国籍、障がい、ライフスタイルなど、さまざまな違いを包摂し、個々の多様性を尊重する組織文化が求められています。

 こうした認識のもと、本学は2025年6月より、センター名称を「DE&I(Diversity, Equity & Inclusion)推進センター」へと改称しました。これは、より広い範囲にわたって'多様性(D)''公正性(E)''包摂性(I)'を重視し、全ての構成員が能力を最大限に発揮できる環境づくりを目指すものです。

 新センターでは、これまでの取組をさらに推進させるため、4つの部門(キャリアデザイン部門、インクルージョン部門、ワークライフ支援部門、広報・ネットワーク部門)のもと、女性研究者の上位職登用、ロールモデルの育成やライフイベントとの両立支援に加え、多様な背景を持つ学生・教職員へのサポート体制の充実、意識啓発活動や研修、地域連携によるダイバーシティ推進にも取り組みます。あわせて、学内外のネットワークを活用し、包括的な支援と構造的な課題の解決を目指します。

 DE&I推進が、単なる'取組'にとどまらず、'実のある取組'となるには、多様な価値観を持つ人が交流し、学び合うことが、その原動力につながると考えています。これからも、多様な学問領域とそれを支える教職員・学生が集う'信州大学'だからこそ可能な取組を、着実に進めて参ります。

令和7年4月