平成29年05月30日 取材

信州大学工学部・天野学部長に深澤センター長がインタビューしました。

【工学部】天野 良彦 学部長

工学部における現状および男女共同参画の方針

深澤センター長(以下「深」:工学部長へのご就任おめでとうございます。 4月にセンター長を拝命した時に濱田学長のご挨拶で「男性・女性に関係なくみんなが働きやすい環境づくりが大事である。」とうかがいました。

そうした観点からでも結構ですが、天野学部長ご自身がお考えになっている工学部における男女共同参画の方針等をお聞かせいただけますか。

天野学部長(以下「天」):基本的なところとしては、お互いを尊重しあう体制というのが大事かな、と。面と向かってしっかり話をすれば解決することが多いと思うので、「向き合って」、というのが大前提だと思います。具体的な取り組みとしては、「女子用の寮」を作っています。若里寮を改修して4階部分を女子寮にして、この10月に入居できるよう準備を進めているところです。以前から、女子学生の要望として「更衣スペースがないので、ほしい」との声がありました。実験の際には"つなぎ"や白衣に着替えて行うことが多いので、今スペースの確保も検討しているところです。女子学生の比率が高くなることを見越して、今後も女子学生へのサポートを考えていきたいですね。女性教員についてはなかなか難しいですね。徐々にではありますが、女性教員も増えて来ています。

深)女子学生が過ごしやすいよう整備を進めていただいているとのことですが、この女子学生が工学部を卒業したあと、何年後かに教員として戻ってくるということはあるのでしょうか?

天)キャリア形成として考えることは大事です。今、ドクターコースは女性も増えており、民間に就職していますが、将来的に戻ってくることを期待しています。待っていてもしょうがないので、自前で育てることも大切かと思っています。  私の研究室でもドクターを出していますが、研究者として大学へ戻るのはなかなか難しいですね。しかし、まずは育てないことにはチャンスもないですから。

深)女性の場合、出産や子育て等のライフサイクルに影響されるので、上のポストに就くのは難しいと思いますが、工学部もそうなのでしょうか。

天)工学部の中だと土木のように実際にモノを動かす領域だけでなく、情報系などシミュレーションで行う領域もあるので、ライフイベントとの両立も可能ではないかと考えますし、実際に出産されて戻ってこられている方もいらっしゃいますね。女性教員も機械とか土木とかはなかなか入りづらいイメージがあるかも知れませんが、最近は建築等で女性の学生比率も高くなっていますね。

深)設計して、建物を建てるというのは格好良いですよね。そうした姿を見て工学部に入学して、ゆくゆくは教員として後進を育てていただける人材になるといいですね。



ワークライフバランスについて

深)ワークライフバランスの推進も男女共同参画の大きな柱ですが、将来的にどういう方向へ向かおうとか、取り組もうとかいったお考えはありますか。

天)勤務時間が長い人が多く、そこは改善しなければと考えています。そうはいっても仕事を減らさなければ掛け声だけかけても、難しい。やはりお互いのサポート体制が必要となりますが、今まで縦割りになりすぎていたことがあるのかな。一緒に仕事して1+1=2ではなく3になれば仕事がはかどるので、そういうふうなことをこれから考えていかなければいけないのかなと思います。そして、なるべく夜に残るのは減らしましょう、と。学生も残っているので夜間については制限しようかなというのは少し考えています。昼夜逆転するのは精神面でもよくないですから。

深)「1+1=3」以上になるくらいの人材を確保されていらっしゃるということなのでしょうか。

天)人員削減を実施しているので、ギリギリです。どこかスクラップアンドビルドしなければもたない。学部だけで閉じないで、外部と一緒にできることをやりながら方策を探る時期にきていると思います。

深)外部といいますと?

天)他学部、他大学。教育に関するものでいえば長野には高専もあるので、授業をクロスで行うとか。お互いにメリットがある形で仕事をカバーできるような、そういう体制をこれから考えていかなければいけません。そうしないとどんどん時間がなくなって、自己実現ができなくなります。

深)長野にはいろいろな学部や大学がありますね。お話を伺って、うらやましいと思いました。

天)大学でなくても専門学校などには工学部の教員が非常勤で講義を一部担当するなどしています。そういう連携もいいですよね。また、信州大学には総合理工学研究科も誕生しました。私は生命医工学専攻ですが、他学部の教員と共同で研究をしています。

深)いろんなところで連携していけば、お互いの学部の状況も理解できていいですね。

天)私自身、工学部にいながらいろんな学部の先生と、もともと連携していて、学部のハードルはない感じなんですが、まだまだ全体でみると学部間で共同できることも多いかもしれませんね。

深)ワークライフバランスに通じる部分もありますよね。一緒にできる領域については共同で行うという部分で。

深)工学部では女性教員を中心に何か活動されていると伺いましたが。

天)イングリッシュカフェを昼休みに開催しているのですが、英語を学びながら、英語だけでなくジェンダーの話題にも取り組まれています。留学生のうち、一人の学生の出身国であるエチオピアでは一日何時間もかかる水くみが女性の仕事とされていて、そのため教育の機会が奪われていることもあると聞きました。そうした世界におけるジェンダーギャップについても議論されているようです。このように留学生や学部の学生を引っ張っていってくれています。

深)そういった活動を伺って女性教員の一人として嬉しく感じます。

天)他文化を学ぶというのは、男女共同参画と通じるのではないでしょうか。男女の違いを知ることや各国との違いを学ぶのは。

深)お話を聞いて、オープンな学部という感じを受けました。他学部の先生からお話を伺う機会はなかなかないのですが、天野学長のオープンなお考えも知ることができました。

天)私の家族では男は私一人、周りの家族みんな女性なので。普段は女性に囲まれています(笑)

今後の男女共同参画に向けた取り組み

深)今後さらに改善したい点等があれば教えてください。

天)もう少し女性教員が増えて、女子学生のサポートをしていければいいなとは思っています。そのためには女性が確実に取れるポストを作らないといけませんが、その点についてはもう少し検討が必要です。専門分野で募集しても女性教員の応募がないといった現実もあります。専門ではなくても、基礎教育とか専門科目ではない実践教育も必要となると思うので、そういうポストも必要となってくるのではないかと考えています。

人数が少ないとはいえ、工学部の女性は活性が高い女性が多く、子育てと研究を両立されている方が多いので、その点ではロールモデルとなりますね。女子学生は領域によっては着実に増えていますよ。就職も女子学生から決まっていきますよね。元気もいいです。企業に勤めた後もこどもを産んで、戻って働き続きている方も多いですよ。

深)工学部が身近に感じられるようになりました。ありがとうございました。

今後、男女共同参画推進センターに期待すること

深)では最後に、男女共同参画推進センターに期待することがあればお聞かせください。

天)以前は工学部で男女共同参画について講演いただいたりしました。これからも話題提供などの機会があれば啓発にきていただきたいと思います。

深)メンタリング研修もe-learning視聴できるようになっていますので、興味ある方はぜひ視聴していただきたいですし、セミナーにも多くの方に参加いただければと思います。

本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。