幹細胞の性質を理解し, 制御する

高島 誠司
教員氏名 高島 誠司
職名 准教授
所属 応用生物科学科
研究分野

生殖工学・幹細胞生物学・再生医工学

研究課題

精子幹細胞に関する以下の研究を進めます。
1) 試験管内での自己複製/分化の制御
2) 脱分化し多能性を獲得する仕組みの解明
3) 精子幹細胞技術の有用家畜への応用

出身校 東京工業大学
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一言コメント

高島研究室は平成26年度発足の新しい研究室です。当研究室では、精巣の組織幹細胞『精子幹細胞』に着目し研究を進めます。この細胞は精子形成に特化しているにもかかわらず、稀にiPS細胞のような多能性幹細胞に自発的に変化します。この細胞のユニークな性質を理解し、自在に操る手法を開発することで、再生医療をはじめとする様々な分野へ貢献を目指します。

研究紹介

幹細胞の性質を理解し、自在に操る

再生医療はこれまで治療が不可能であった傷害・疾患を克服する可能性を秘めており、幹細胞はその主役を担います。iPS細胞等の多能性幹細胞や、各器官に存在する組織幹細胞を用いた再生医療研究が世界中で展開されています。高島研究室は平成26年度に発足する新しい研究室です。当研究室では、精巣の組織幹細胞「精子幹細胞」に着目し研究を進めます。この細胞は精子形成に特化しているにもかかわらず、稀にiPS細胞のような多能性幹細胞に自発的に変化します。この細胞のユニークな性質を理解し、自在に操る手法を開発することで、再生医療へ貢献する事が当研究室の目的です。

 

 
精子幹細胞の能力。(左) 試験管内で増殖するマウス精子幹細胞。(中) 緑色蛍光タンパクを発現する精子幹細胞を移植した精巣。緑色蛍光を発する精子ができている。(右) 精子幹細胞由来の精子でできた仔マウス。子供も緑色蛍光を発する。   精子幹細胞の潜在的多能性。この能力は普段抑制されているが、その抑制機序が破綻すると多能性精子幹細胞に変化する。(左) 精子幹細胞から変化した多能性精子幹細胞。iPS細胞と同様の多能性を持つ。(右) 多能性精子幹細胞からなる「キメラマウス」。緑色蛍光を発する部分は多能性精子幹細胞に由来する。

 

≪研究から広がる未来≫


精子幹細胞は精子の産生に特化した組織幹細胞でありながら、多能性幹細胞のポテンシャルも併せ持つ不思議な細胞です。従って、男性不妊の治療だけでなく、多能性幹細胞への若返りを通じてiPS細胞と同様に種々の疾患への再生医療にも応用が期待されます。また、精子幹細胞技術を畜産分野へ展開することで、優良な肉質を有するウシ・ブタを効率よく生産する技術に繋がります。このように、精子幹細胞は幅広い分野に貢献する事ができる「万能」細胞だといえます。

ストレス性の男性不妊を救う!

日本は晩婚化が進み、それに伴い不妊に悩むカップルが増えてきました。これまで不妊の原因は主に女性にあると考えられてきましたが、実は原因の半分は男性側にあることがわかっています。男性不妊の場合、精巣できちんと精子を作ることができるタイプの患者さんは、生殖補助医療により子供を授かるチャンスが得られますが、精子を作ることができない場合は救うことができません。応用生物科学科の高島 誠司 助教は、生まれつきストレスに弱いマウス (右写真) やパーキンソン病様の症状を示すマウス (右写真クリックで動画再生) が男性不妊を発症することを発見し、これらのマウスが精子をうまく作れなくなるメカニズムを調べています。これにより、男性不妊患者の精巣で精子が出来なくなる理由に迫ろうとしています。


静止画説明:先天性ストレス感受性マウス。寿命は普通のマウスの1/4程度しかなく、背中が曲がっています。このマウスでは、オスだけでなくメスも子供を作りにくくなっています。動画説明:パーキンソン病モデルマウス。健康な個体に比べて動きが緩慢で、しばしば痙攣を起こします。この個体の精巣では精子形成過程が中断され、不妊になっていました。

(掲載期間 平成29年11・12月)