医学系(医学科)
医学の研究領域を超えた
横断的な改革の中で
求められること
学術研究院医学系
田淵克彦教授
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医学系(医学科)
学術研究院医学系
田淵克彦教授
研究領域を超えた共同研究において
お互いのニーズを共有できる場が必要です
大学院改革のなかで、今まさに私たち医学科で始まっていることは、2つあります。ひとつめは学部横断的な形での共同研究です。例えば、医工連携のように、医学部と工学部が共同で研究開発を進めていくものですね。2つめは、医学部の中では「講座間連携」という呼び方をしていますが、学部内の研究室間での共同研究です。
まず、ひとつめの学部横断的な研究について、体制化はこれからですが、すでに医工連携の動きは始まっており、その様々な可能性についての話題もあります。私たち基礎医学の研究者にとっては、ビッグデータの解析やコンピュータシミュレーションがますます重要になってきていますし、これらの技術や実験装置の開発などにおいて、工学との連携が生まれると非常にメリットが大きいと思っています。
私の専門は神経生理学ですが、電気生理に関する装置やイメージング機器を工学部と共同開発できたらいいですね。
これらは、あくまで私たち医学研究の視点からの共同研究の可能性であって、私たちの研究が工学の研究にどのように役立つかということは、彼らの視点に立たないと分かりません。少なくとも私たちにとっては非常にメリットがあると考えています。お互いのニーズを把握する場が、これから必要になってきますね。
信州大学の大学院では、5つの専攻が統合した「総合理工学研究科」を重視していますが、今後ここが受け皿となって、医学の先生と工学の先生がディスカッションし、どのような共同研究ができるかという具体的なニーズの共有も生まれると思います。大学院生の研究のあり方も、大きく変わっていくでしょう。
そして、2つめの改革である学部内の共同研究については、新たな組織編成について話し合いが始まったばかりです。具体的には、基礎医学系を新たな3つのグループに分けて、この内部で研究室が連携し合い、共同研究をしていこうというものです。これまで医学部では、どちらかというと研究室ごとで動いており、小さなグループ内の研究が主流でした。この改革はまだ模索されている段階ではありますが、複数の研究室が個別に持っている研究手法や研究設備を共有することで、個々の研究が活性化されるというメリットが考えられます。
基礎医学の研究と臨床研究を同時に進められるのは
信州大学ならではのメリットです
日本の大学では今、医師をめざす学生に対して、医学部を卒業してから2年間の臨床研修が義務化されています。それによって、基礎医学の大学院にはなかなか人が集まらないという傾向が続いていました。ですが、信州大学は一昨年ほど前から、基礎医学の大学院に入っても同時に臨床研修も受けられるという制度を設置したのです。これは、基礎医学に進みたいという学生にとっては、かなりのメリットになっています。
修士課程の特長としては、遺伝カウンセリングコース、人工内耳コース、スポーツ医科学コースという、信州大学独自の3つのコースがあり、それを目的にした希望者も多くいます。遺伝カウンセリングコースは、全国の国立大学の中で、信州大学が最初に文科省から認められて設置したもので、ここでは遺伝子カウンセリングの資格をとることができます。他の2つのコースも、国立大学では珍しい内容のため人気がありますね。
博士課程の特長として、学生の割合で最も多いのは、臨床の医局で研修をして、外部の病院などで臨床を何年か経験したあと、博士号をとるために入学するという方です。修士の方でドクターコースに進んで博士号をとる人の数も、今後さらに増やしていこうと拡充を図っているところです。一方で、信州大学は留学生を積極的に受け入れてきましたので、修士・博士課程とも、各国からの留学生が多いのも特長です。
研究においてはこれからますます
社会への実用性が問われています
私の教室でも、留学生がほとんどのため、研究室内の公用語は英語です。講義はもちろん、学生同士のミーティングやプレゼンテーションもすべて英語。私自身、アメリカで10年の研究生活を送っており、日本に帰ってからは、前任地にいたときからこのスタイルで続けています。日本以外の先進国の大学では、ほとんどの公用語は英語です。日本だけが母国語を優先していたら、海外の学生は来なくなってしまいますし、国際的な大学を目指すのであれば当然のことですね。信州大学の他の研究科でも、多くが英語を基本としており、日本人の学生にとってもメリットを感じてもらっているようです。彼らが海外で活躍するときに、研究室でずっと英語で過ごしたことはきっと自信につながるでしょう。
私たちの研究科は、個々の様々な選択肢をサポートしますが、基本的には研究者を養成することを中心に据えています。研究者として活躍するにも、学んだことを日本に限らず、積極的に海外で生かしていってほしいですね。また、研究においてはこれからますます、社会の実用性が問われていきます。ただ面白い研究をするというだけでは厳しく、国や企業からの予算をいただいて研究を進めているという意識が必要です。出資者の役に立つ、またはきちんと社会に還元できる客観的な視点をもって、自身の研究を深めていってほしいと思います。
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