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社会科学系

地域社会の課題に立ち向かう
社会人のための
マンツーマン教育

学術研究院社会科学系
金早雪教授

目次
Chapter 1

社会人のための
教育機関が果たす役割

社会に出てからも「学びの場」があるということ、
これも国立大学の地域貢献のひとつです

私が運営を担当している経済・社会政策科学研究科の経済・社会政策科学専攻は、1989年の創設以来、社会人を対象とした、極めてユニークな研究科として活動してきました。おそらく日本で最初の、社会人向けの大学院だと思います。

この大学院が設立された当初から、「生涯教育」ということが言われてきました。これは地域の教育機関が担う、大切な役割のひとつではないかと、私自身は考えています。「リカレント」という言葉がありますが、学校から社会へ巣立って教育は終わり、という一方通行ではなく、社会に出てからも学びの場があり、またそれを社会に還元していくという、循環的な教育のあり方です。

今では、首都圏の私立大学などでも社会人専門の大学院は充実しています。信州大学でも、この専攻から派生して、後に「経営大学院」が長野市に誕生しました。私たちの専攻(コース)は、このなかでもよりジェネラルな社会科学の研究を扱っており、「地域社会の課題」をキーワードに生涯教育を追求しています。

一度社会に出た経験のある方は、ご自身の基盤となっている仕事について、また地域の課題について、多様な問題に直面されます。それらの問題に対して、社会科学の思考方法や調査・分析のスキルをもって、解決の筋道を立てていく。その力を職場や地域・社会に還元していってほしい。それが私たち研究科のめざすところです。少子高齢化が進むこれからの社会の中で、4年間の大学生活、さらにその先の職業生活に続いて、「社会の変化をとらえるためにもう一度学び直したい」というニーズは、今後もなくなることはないのではないか。そんな風に思っています。

Chapter 2

外の世界につながるバイパスとして

院生がこのキャンパスで得られるものは、
信州大学の資源に限ったものではありません

地域の教育機関というのは、もうひとつ、人や地域のバイパスとしての機能も大切です。「地域と地域」をつなげる、「人と人」をつなげる、そういった役割です。学生は、この信州大学のキャンパスで学ぶわけですが、学生が得られるものは、学内の資源に限ったものではありません。「これは今の信州大学にはないけど、ここに紹介できるよ」と私たち研究者が国内外を問わず他の専門家などに媒介することができる。学生は、大学を介して外の、未知の資源につながっていく。そういうバイパスは、特に私たち地方の大学が担うべき役割ではないかと考えています。

また、私たちの専攻(コース)には、30代から60代のさまざまな経歴を持つ社会人が集いますが、院生同士のつながりも、ここで学ぶことの利点になっているようです。それぞれの仕事で専門領域をもつ方たちが、地域の課題を考えるという同じコンセプトのもとで、夜間や土曜日に集まっています。

現在16名の在籍者がいて、文部科学省からは職業を有する社会人を対象として2年間の授業料で3年間または4年間の長期履修を認めてもらっています。やはり、日々の仕事をしながら文献を読む、調査する、ましてや論文を書くというのは、随分時間のかかる作業なので、私たちはこの長期履修制度の活用をおすすめしています。そうすると、例えば3年間在籍することで2学年上、2学年下の院生と一緒になるわけですから、述べ30人以上の知り合いができるわけですね。そこはちょっとにぎやかな、私たちの大切なステークホルダーになっています。

Chapter 3

独自のカリキュラムと
求められる人物像

個々の研究課題を深く掘り下げて、
地域や社会に還元していってほしいです

社会科学の研究範囲は広く、院生の課題も多様です。私たち研究科の院生は、一般企業の方をはじめ、地域活動やNPO活動をしている方、自治体の職員の方、現職の地方議会議員の方、また起業されている方など、それぞれの活動現場をお持ちです。山梨、岐阜、名古屋など県外在住の方もいれば、外国出身の方もいます。

定員は小さいですが、個々の研究課題が多様なため、経済、法律、政治の教員が、基本的にはマンツーマンで指導にあたっています。都心の大学院では、30人のクラスでコースワークで課題をこなしていくという授業もあるようですが、私たちは一人ひとりの研究がどうあるべきかということに重点を置いていますので、そこが特徴と言えるかもしれません。信州人の気質として、地域を盛り立てていこうという勢いは教員にもありますので、「非常に濃厚な授業ができた」という声もいただきます。

ただし、マンツーマン教育を基本とすると、どうしてもたこつぼに陥ってしまう傾向もあります。そのため、月に一度の土曜日、合同授業という形で在籍者全員が集い、各自の研究状況をチェックしあい、意見交換を行っています。それぞれの研究へのアプローチが違うため、研究の質を厳密に平準化することはできませんが、情報共有することで個々の学びを掘り下げる良い機会になっているようです。

私たちが社会人院生に求めることは、30代の方と60代の方とでは異なりますが、やはりどんな形であれ、ここで学んだことを職場・地域や社会に還元していってほしい。それが皆さんへの共通する願いです。

大学院を修了した後も、職場や地域のこと、あるいは家族の介護のことなど、また新たな課題に直面するでしょう。そんなときに、自分の課題解決ということだけでなく、できれば社会になんらかの改善をもたらせるような、そんな解決の道を探っていただきたい。それが、還元ということにつながると思っています。ここで得たネットワークを生かし、お互いにゆるやかな連携のもと、地域に還元することができたら理想的ですね。

金早雪(キムチョソル)
信州大学学術研究院社会科学系教授。大阪府出身。大阪市立大学博士(経済学)。2001年より信州大学経済学部(2016年から経法学部)教授。研究分野は経済政策。現在の研究課題は、韓国の経済と社会(特に社会保障政策)。
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