動物の組織や臓器から作る医療機器

ブタから調製した脱細胞化神経加工材料 (左) 脱細胞化材料を利用した神経突起伸長 (右)
ヒトにブタなどの動物の組織や臓器を移植しても、すぐに拒絶されてしまいます。これは、ヒトの免疫系が動物の細胞を異物として認識することが原因です。一方、動物組織の細胞以外の部分である「細胞外マトリックス」は、ほとんど免疫拒絶されません。ここに目を付けた、動物の組織から細胞だけを取り除いた"脱細胞化組織"を医療機器・デバイスとして利用する研究が、盛んに行われています。応用生物科学科の根岸 淳 助教は、粉末化した脱細胞化組織を動物体内に移植すると、ケガを治すときの生体反応である創傷治癒が誘導されることを見い出しました。粉末化した脱細胞化組織は細胞外マトリックスがバラバラになっており、ケガをした動物組織の状態と類似しているために創傷治癒が誘導される、という仕組みのようです。脱細胞化組織粉末による創傷治癒誘導を利用した神経や筋肉を再生させる研究は、事故の後遺症治療や高齢者の寝たきり解消につながると期待されます。
根岸研究室ではこの他にも、脱細胞化組織加工材料が細胞と混ぜて体内に注入できる点を活かし、乳がん摘出後の乳房組織再建など、体内での組織再生技術を開発しようとしています。
(掲載期間 令和元年 5・6月)