脳震盪の発生メカニズムを探る

神経細胞の軸索に衝撃負荷がかかると局所的な膨張 (=軸索瘤) が出現し、細胞間の情報伝達が阻害される。
柔道、サッカー、ラグビーなどのコンタクトスポーツでは頭をぶつける場面が多々あります。頭をぶつけてすぐには起き上がれなかったり、その時は何ともなかったのにぶつけた後のことを思い出せなかったり、といった経験をしたことがある人もいるのではないでしょうか。これがいわゆる "脳震盪" です。脳震盪を繰り返すと、記憶力や注意力の低下、認知症の症状などを引き起こすことが分かり、社会の注目を浴びるようになりました。頭部を強打したとき、私達の頭の中では急激な加減速により脳が変形し、脳内に無数にある神経線維 (神経細胞の軸索部) がダメージを受けます。しかし、どの程度の衝撃で脳に障害が発生するのか、損傷した脳は回復するのか、という疑問はまだ解決していません。
機械・ロボット学科の中楯 浩康 准教授は、頭をぶつけた際に脳に生じる現象について研究しています。神経線維に対して実際に衝撃を加える実験を行って安全な範囲を数値化 (耐性値の決定) したり、損傷した神経線維に電気的・力学的刺激を与えて脳を活性化する方法について検討しています。これらの研究により、自動車の安全基準の見直しや新たな医療技術の開発につながることが期待されます。
(掲載期間 平成30年11・12月)