高分子合成のエキスパート

髙坂 泰弘
教員氏名 髙坂 泰弘
職名 准教授
所属 化学・材料学科
研究分野

高分子合成化学

研究課題

(1) 大環状ラクトン類の新規重合法
バイオマスの一つである大環状ラクトン(マクロラクトン)は重合が困難ですが、の分子設計をら見直し、従来の技術で重合可能なマクロラクトンを提供します。
(2) 高機能化ラクトンの合成と重合
環構造内に3つ以上の官能基を有するラクトンを合成・重合し、アトムエコノミカルな機能性材料の創製を目指します。
(3) 2-置換アクリル酸エステルの重合化学
ビニル基に直結する置換基を機能化した新モノマーを合成し、そのユニークな反応性を活かした機能材料の合成を目指しています。

出身校 東京工業大学
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一言コメント

精密重合化学を熟知し、それを実現する新しいモノマーを設計するところから、研究をスタートさせます。高分子化学のみならず、有機化学も駆使した高分子合成を行います。

研究紹介

新たな高分子合成の出発点 分子設計・反応設計からつくる新材料

繊維、プラスチック、ゴム... 身の回りの材料は、数百~数千の分子が結合した巨大分子 (高分子) から成り立っています。髙坂研究室では、原料となる分子を自在に設計し、それらを効率よく精密に結合することで、これまでにない新しい高分子材料を創製する研究を進めます。例えば、植物由来の高級脂肪酸を原料とする高分子の簡便な合成法を開発し、バイオマスを利用した低環境負荷のゴムを創製することを目指しています。原料となる分子の設計次第では、思わぬ新材料に出会うこともあり、毎日フラスコ片手に実験を繰り返しています。

 

 
蛍光性高分子の合成研究。蛍光性を示す分子が単純に連結した高分子と、別の分子と交互に連結した高分子とが、異なる蛍光色で発光することを見出した。   β-アミノ酸誘導体を原料に合成した高分子は、強酸性条件・低温で水溶性を示すが、室温以上では不溶化する性質を示した。

 

≪研究から広がる未来≫


一般に高分子材料、特にプラスチックは石油化学工業の産物ですが、髙坂研究室では自然界に存在する成分も駆使した高分子の精密合成を対象とします。持続可能な開発を目指し、新技術の提供に取り組んでいます。また、合成化学の研究では、医療材料や太陽電池等の先端材料から、繊維やゴム等の日用品まで、様々な材料を合成できる点が魅力です。

高分子化学が創る新しい世界

真空ラインで空気に敏感な合成実験中

真空ラインで空気に敏感な合成実験中

繊維、プラスチック、ゴム、接着剤... 現在の日常生活は高分子材料に支えられています。一方、原料である石油資源の枯渇や、プラスチックの製造に必要なレアメタル触媒の稀少化、自然界に投棄されたプラスチックが引き起こす環境問題など、解決すべき課題が数多く存在するのも現実です。化学・材料学科の高坂 泰弘 助教は、これらの諸問題の解決を図るとともに、環境応答性やリサイクル性を有する革新的な高分子材料の開発に取り組んでいます。例えば、様々な化学物質と反応して分解するポリエステルを開発しました。この成果は高分子化学最高峰の国際誌 Polymer Chemistryに掲載され、高坂助教は同誌が選出する世界30名の若手研究者にも名を連ねました (こちら)。開発した新材料は低環境負荷なプラスチック、繊維の開発や医療用途への展開が期待されます。


高坂助教は企業との共同研究にも積極的で、イハラニッケイ化学工業(株)との共同研究ではポリエステルの新合成法を開発しました。高温・真空条件を必要とする上にレアメタル触媒を使用しなくてはならない従来の合成法に比べ、不純物が少ない高品質なポリエステルを低エネルギーで合成できるという特徴があるそうです。

(掲載期間 平成30年 5・6月)