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出生児(153,913名)を対象とした先天性難聴の大規模疫学調査結果を発表
信州大学医学部耳鼻咽喉科頭頸部外科学教室の宇佐美真一特任教授、工穣教授、吉村豪兼講師ら(以下、本研究チーム)は、長野県で2009年〜2019年に出生した156,038児のうち、新生児聴覚スクリーニング(生後数日でのきこえのスクリーニング検査)を受けた153,913児を対象に大規模疫学調査を行い、先天性難聴(生まれつきの難聴)の頻度や原因を明らかにしました。
先天性難聴は近年早期発見、および早期治療が可能となってきましたが、実際に新生児における先天性難聴の割合や、原因についての包括的な検査による頻度のまとまった報告が本邦ではありませんでした。
本研究チームでは新生児における先天性難聴の割合が出生1,000人あたり1.62人であることを突き止め、また難聴が両側でみられる割合が0.84人、一側でみられる割合が0.77人であることを明らかにしました。
さらに、両側性難聴の原因としては遺伝性が、一側性難聴の原因としては蝸牛神経形成不全(きこえの神経の発達が不十分な病気)が最も頻度が高いことを報告しました。本研究結果は、小児難聴を診療する医療機関のみならず、患者家族への情報提供に大きく寄与するものと期待されます。
本研究成果は2024年4月12日に「International Journal of Epidemiology」に掲載されました。
【研究成果のポイント】
●出生153,913児を対象に生まれつきの難聴(先天性難聴)の大規模疫学調査を実施した。
●先天性難聴は出生1,000人あたり1.62人(両側性:0.84人、一側性:0.77人)と認められた。
●両側性では遺伝性、一側性では"きこえ"の神経(蝸牛神経)の形成不全によるものが最も頻度が高かった。
【論文タイトルと著者】
<タイトル> Epidemiology, aetiology and diagnosis of congenital hearing loss via hearing screening of 153 913 newborns
<著者> Hidekane Yoshimura, Takuya Okubo, Jun Shinagawa, Shin-Ya Nishio, Yutaka Takumi, and Shin-Ichi Usami
<掲載誌> International Journal of Epidemiology
<DOI> 10.1093/ije/dyae052