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日本発、歩行リハビリテーションの未来への一歩 パーキンソン病に新たな光明
名古屋市立大学大学院医学研究科の野嶌一平教授(研究当時 信州大学医学部保健学科理学療法学専攻 准教授)は、名古屋市立大学大学院医学研究科の植木美乃教授、同附属病院リハビリテーション科の堀場充哉技師長、立命館大学大学院先端総合学術研究科の美馬達哉教授、明治大学理工学部電気電子生命学科の小野弓絵教授、京都大学医学研究科の小金丸聡子特定准教授らとの共同研究で、パーキンソン病患者の歩行機能を改善する新しいリハビリテーション手法の開発に成功しました。
本研究では、これまで有効な介入手段のなかったパーキンソン病患者の歩行障害に対して、脳の外部から微弱な電流を流すことで脳活動を調整し、歩行機能を改善できることを報告しました。従来、脳への電気刺激は安静状態で実施されていましたが、今回開発したシステムは患者の歩行リズムに合わせた刺激を実現しています。つまり、患者毎の歩行に合わせた最適な刺激が可能となっています(クローズドループ脳電気刺激)。本研究では、週2回の歩行リハビリテーションを5週間実施し、歩行速度や歩行の左右対称性の改善、またパーキンソン病患者の特徴的な症状であるすくみ足に改善が見られました。
本システムは非侵襲・非薬物的な介入であり、様々な病態に応用できる可能性があり、今後対象疾患を広げて臨床研究を進めていく予定です。さらに、超高齢社会を迎える本邦において、歩行機能の維持・向上は高齢者の日常生活の自立に重要であり、地域高齢者を対象とした社会実装にも着手していきたいと考えています。
本研究成果は、2023年6月9日、国際専門誌「Journal of Neurology, Neurosurgery, Psychiatry」に掲載されました。
【研究のポイント】
- ・ パーキンソン病患者の歩行障害に対する新しい歩行リハビリテーションとして、個別化されたクローズドループ脳電気刺激法を開発し、その効果を検証しました
- ・ 介入群では、歩行速度や歩行の対称性、すくみ足の程度などの歩行指標において、対照群と比較して有意な改善が示されました
- ・ クローズドループ脳電気刺激は、将来的に歩行リハビリテーションの補完療法となる可能性があります
【論文情報】
<雑誌>Journal of Neurology, Neurosurgery, Psychiatry
<論文タイトル>Gait-combined closed-loop brain stimulation can improve walking dynamics in Parkinsonian gait disturbances: A randomized-control trial.
<著者>野嶌一平1-2)、堀場充哉1)、佐橋健斗1)、小金丸聡子3)、村上里奈1)、青山公紀1)、松川則之4)、小野弓絵5)、*美馬達哉6)、植木美乃1)
所属
1) 名古屋市立大学大学院医学研究科リハビリテーション医学講座
2) 信州大学医学部保健学科理学療法学専攻
3) 京都大学大学院医学研究科脳機能総合研究センター神経機能回復・再生医学講座
4) 名古屋市立大学大学院医学研究科神経内科学分野
5) 明治大学理工学部電気電子生命学科
6) 立命館大学大学院先端総合学術研究科
(*:Corresponding Author)
<DOI>10.1136/jnnp-2022-329966