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医学部医学科免疫制御学教室の山条秀樹准教授らのグループが、マクロファージの細胞死がもたらす炎症反応についての新たな制御メカニズムを解明しました

2022年09月02日 [研究]

山条准教授

 医学部医学科免疫制御学教室の山条秀樹准教授、大学院医学系研究科(修士課程)2年生 前田健吾さんらの研究グループは、マクロファージの細胞死がもたらす炎症反応についての新たな制御メカニズムを解明しました。この研究成果はThe Journal of Immunology誌 (IF 5.426)に掲載されました。また掲載号の注目論文として、'Top Reads'に紹介されています。

 生体防御に関わる免疫系が働く過程において、時に細胞死が実行されることがあります。これは生体の恒常性維持にとって不可欠な現象です。一方、昨今の研究進展から細胞死の起こる方法にも様々な種類があることが分かり、中には細胞死がきっかけとなり炎症反応を促し、それが慢性化することにより生体の恒常性を乱し病気に繋がることが明らかになりつつあります。
 サイトカイン受容体Fasは、リガンドであるFasLと結合すると細胞死を誘導しますが、これは獲得免疫系の恒常性維持に重要な機構です。事実、Fasシグナル伝達不全は、本来死ぬ運命にあった筈のリンパ球が生存することにより、結果これらのリンパ球が原因で自己免疫疾患を発症することが知られています(図参照)。他方、もう1つの生体防御システムとして知られる自然免疫系におけるFasシグナルが果たす生理的役割については、依然として不明なままでした。
 そこで研究グループは、自然免疫系で働く細胞の1つマクロファージに着目し、Fasシグナル伝達の制御機構と免疫恒常性維持との関連性について調べました。その結果、マクロファージはリンパ球とは異なりFas刺激による細胞死誘導に抵抗性を示すこと、細胞内シグナル伝達分子TAK1を欠損するマクロファージはFas刺激による細胞死に高感受性であること、その細胞死は炎症反応を誘発する性質を持っていることを明らかにしました。さらにマクロファージ特異的TAK1欠損マウスを用いた解析から、欠損マウスが腹膜炎や肝炎を自然発症することを見いだし、この病態がTAK1欠損マクロファージの炎症性細胞死に起因した組織障害によることを明らかにしました(図参照)。以上の結果は、マクロファージが細胞死に耐性であることが、生体にとって不要な炎症反応を抑え生体の恒常性維持に努めていることを示しております。
 本研究成果は、Fasシグナルとマクロファージの生死の運命決定を司る制御機構においてTAK1分子が中心的な役割を果たすことを示したのみならず、TAK1分子の機能欠失と自己炎症性疾患との関連性を示した初の事例となりました。今後、生体防御にとって不要な炎症反応を抑えるための治療法の開発への一助となることが期待されます。



(論文)
Maeda K, Nakayama J, Taki S, Sanjo H.
TAK1 Limits Death Receptor Fas-Induced Proinflammatory Cell Death in Macrophages.
J Immunol. 2022. Epub 2022/08/11. doi: 10.4049/jimmunol.2200322. PubMed PMID: 35948397.

(URL)
https://www.jimmunol.org/content/early/2022/08/10/jimmunol.2200322.long

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