信州大学HOME

  1. ホーム
  2. トピックス
  3. 子どものこころの発達医学教室の本田秀夫教授らによる、自閉スペクトラム症(ASD)の人たちを対象とした長期間の追跡調査結果が英国専門誌に掲載されました

トピックス

子どものこころの発達医学教室の本田秀夫教授らによる、自閉スペクトラム症(ASD)の人たちを対象とした長期間の追跡調査結果が英国専門誌に掲載されました

2022年04月18日 [研究]

 信州大学医学部子どものこころの発達医学教室と横浜市総合リハビリテーションセンター(YRC)の共同研究チームは、横浜市の疫学調査で7歳までに把握された自閉スペクトラム症(ASD)の人たちを対象とした成人期の長期追跡調査(Yokohama Longitudinal ASD Birth Cohort Study; Y-LABiCスタディ)を行いました。このたび、Y-LABiCスタディのはじめての報告が、英国の児童精神科専門誌Journal of Child Psychology and Psychiatryオンライン版に2022年4月11日付で掲載されました。
 調査の対象者は、YRCが実施した、横浜市港北区における1988年~1996年の出生コホート(31,426名)における7歳までの累積発生率調査で特定された278名です。1991年から2010年までYRCに所属していた信州大学医学部子どものこころの発達医学教室の本田秀夫教授が中心となって、ASDの子どもの早期発見・早期支援体制を整備し、この地域で出生したASDの子どもをもれなく把握する条件を整えました。累積発生率調査は、本田教授らが2005年1)に報告しました。
1)Honda, H., Shimizu, Y., & Rutter, M. (2005). No effect of MMR withdrawal on the incidence of autism: a total population study. J Child Psychol Psychiatry, 46(6), 572-579.

 次いで、本田教授の研究グループでは、この研究で把握されたASDの人たちを対象者とした長期追跡調査を計画し、全員が20歳を超えた2017年から2020年にかけて追跡調査が行われました。追跡調査では、YRCの岩佐光章発達支援部担当部長および清水康夫参与が、信州大学の本田教授および篠山大明准教授(信州大学医学部精神医学教室)らと協力してデータ収集および解析を行いました。278名のうち170名(61.2%)から調査協力の同意を得て、成人期の総合的な社会的機能(仕事、住居など自立の度合い、友人関係などをもとに評価)および社会参加や日常生活の実態について、本人または家族への面会によるインタビューを行いました。
 参加者(平均年齢は24.6歳)の心理社会的転帰の内訳は、「とても良好」に該当した人が全体の13.7%、「良好」が25.0%、「まあまあ良好」が31.0%、「不良」が25.6%、「とても不良」が4.8%となり、海外の先行研究よりも転帰が良い人の割合が多い結果となりました。大多数の人が仕事と教育(参加者全体の96.4%)、スポーツ(82.1%)、余暇活動と趣味(98.8%)に参加しており、日常生活で家事やセルフケアを行っている人の割合は年齢と居住地を統制した一般人口(社会生活基本調査(総務省, 2016)から得られたデータ)と同程度でした。5歳時のIQが50未満の人は、それ以外の人より転帰が不良でしたが、IQ50以上ではIQによる転帰の差は見られませんでした。
 本調査に参加したASDの人たちの多くは、住居の確保や就労における完全な自立は困難であっても、地域での社会参加や家事およびセルフケアに従事できていることがわかりました。就学までに出生コホートの疫学調査で把握されたASDの人たちを成人期まで長期追跡調査するというY-LABiCスタディの研究デザインは、できるだけ調査対象の偏りを少なくした信頼性の高い手法をとっているという点で、国際的にも類を見ないものです。ASDの人たちの児童期から成人期までの経過はまだわかっていないことが多いため、今回の報告によってASDの経過に関する貴重な資料が得られました。

プレスリリース(PDF 199KB)

【論文タイトルと著者】
タイトル:Twenty-year longitudinal birth cohort study of Individuals diagnosed with autism spectrum disorder before seven years of age
(出生コホートにおける7歳までの累積発生率調査で把握した自閉スペクトラム症の人たちの20年間の追跡調査)

著者:岩佐光章、清水康夫、篠山大明、今井美保、大園啓子、植田みおり、原郁子、本田秀夫

掲載誌:Journal of Child Psychology and Psychiatry

DOI:10.1111/jcpp.13614

 一覧に戻る 

  • お知らせ一覧
  • イベント公開講座一覧
  • トピックス一覧
    カテゴリ別
    月別でみる
    RSSを取得する
    RSSフィード
医学科 保健学科 入試情報を見る

国際交流・留学

医学科
保健学科

  • 信州大学医学教育センター
  • 信州大学卒臨床研修センター
  • 信大医学部附属病院
  • 医学部地域保健推進センター
  • 臨床研究審査委員会/医倫理委員会/遺伝子解析倫理委員会
  • 研究者総覧SOAR
  • 医学部附属施設・関連団体
  • 信州医学雑誌