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バイオメディカル研究所 川岸裕幸助教、医学部分子薬理学教室 山田充彦教授らの研究チームが新生児・乳児の心不全の治療に適した新規薬物標的を世界で初めて同定しました

2020年11月19日 [研究]

Visual Abstract
Visual Abstract

 信州大学先鋭領域融合研究群バイオメディカル研究所 川岸裕幸助教、信州大学医学部分子薬理学教室 山田充彦教授らの研究チームは、これまで特異的治療薬の無かった新生児・乳児の心不全の治療に適した新規薬物標的を、世界で初めて同定しました。
 先天性心障害を持って生まれた子供の約60%は、生後1年以内に心不全を発症します。この時期の心不全の進行は早く、高い頻度で短期間に致死的状態に陥ります。新規薬物標的は新生児・乳児に特異的に機能を発揮し、心不全の治療に大いに役立つ可能性があります。この標的の刺激は、マウスの新生児・乳児の心収縮力を有意に高め、かつ多くの強心薬で問題となる心拍数増加、不整脈誘発、心筋酸素消費量増加などの副作用をほとんど示しませんでした。標的が働く経路はヒトでも共通して存在し、この標的がヒトの病態モデルマウスの新生児・乳児でも働くことがわかりました。研究チームは今後この経路を選択的に活性化する、世界初かつ日本発の小児心不全治療薬の開発を目指します。
 本研究は、2020年11月12日午前4時(日本時間)に権威ある国際誌「Journal of American College of Cardiology: Basic to Translational Science」のオンライン版に掲載されました。


【背景】
 成人の慢性心不全とは異なり、小児心不全には現在でもエビデンスのある治療薬がありません。その最大の理由は、小児の心不全の原因や病態が多彩で大規模臨床治験が困難なことです。したがって、現在小児心不全患者は成人用の薬を用いて治療されています。しかし成人で安全で有効な薬物が、小児でもそうであるかどうかのエビデンスもほとんどありません。
 もちろん現在は、ほとんどの先天性心奇形は外科的修復が可能です。心移植が必要な場合も、発達した補助人工心臓により待機可能時間を稼げます。また小児心移植も徐々に症例が重ねられており、ヒトiPS細胞由来心筋細胞移植などの臨床治験も始まっています。しかし、これらの外科的治療前後の保存的治療には、やはり小児心不全治療薬が必要です。
 この観点から、研究チームは小児循環の特性を精査した基礎研究から、新薬のコンセプトを提唱する」という方針で研究を続け、今回の成果を得ました。


【研究手法・成果】
 研究には、所定の承認を受けた研究方法でマウスの新生児・乳児を用いました。着目した標的の刺激が、これらの動物の心収縮力を高め、かつ多くの強心薬に認められる心拍数増加、不整脈誘発などのさまざまな副作用をほとんど生じないことを確認しました。また、ヒトiPS細胞由来幼若心筋細胞でもこの経路が保存されており、この経路の刺激はヒト先天性拡張型心筋症の遺伝子変異を導入したモデルマウスの新生児の病的心臓でも、有意に縮力を増強することを確認しました。


【波及効果・今後の予定】
 上記の結果から、新生児・乳児の心収縮力を選択的に高める薬(βアレスチンバイアスAT1アゴニスト)は、ヒトでも副作用の少ない心収縮力増強薬となる可能性があり、この時期の心不全に対する薬が開発される可能性が出てきました。研究チームは製薬企業と協働で、世界初かつ日本発の外来患者でも使用可能な小分子小児心不全治療薬の開発を目指します。


プレスリリース (PDF 239KB)


【論文タイトルと著者】
タイトル: β-Arrestin-Biased AT1 Agonist TRV027 Causes a Neonatal-Specific Sustained Positive Inotropic Effect Without Increasing Heart Rate

著者: Toshihide Kashihara*, Hiroyuki Kawagishi*, Tsutomu Nakada, Takuro Numaga-Tomita, Shin Kadota, Elena E. Wolf¶, Cheng-Kun Du, Yuji Shiba, Sachio Morimoto, Mitsuhiko Yamada†
(*: equal contribution; ¶: Technische Universität Dresden, Germany; †: correspondence)

掲載誌: Journal of American College of Cardiology: Basic to Translational Science

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