養豚場の衛生管理区域における中小型哺乳類の活動パターンを解明―豚熱等の防疫・バイオセキュリティ強化に向けた夜間管理の重要性を提示―
野生動物管理学研究室の池田敬助教らの研究チームは、養豚場の衛生管理区域(Sanitary Control Zone:SCZ)内外における人間および中小型哺乳類の活動パターンをカメラトラップ調査により明らかにしました。
国内で発生が続く豚熱等の感染症対策において、農場内への病原体持ち込みを防ぐバイオセキュリティの強化が強く求められています。防護柵の設置によりイノシシなど大型野生動物の侵入防止は進む一方、柵の隙間から侵入可能なハクビシン、アライグマ、タヌキ、野良猫、ネズミ類などの中小型哺乳類による病原体媒介リスクが懸念されていました。しかし、これらの中小型哺乳類が農場周辺でいつ、どのように活動しているかの実態は十分に分かっていませんでした。
【研究の成果】
本研究チームは、国内の養豚場においてSCZ内外に自動撮影カメラを設置し、人間および7種の中小型哺乳類の撮影頻度と活動時間帯を分析しました。
1.野生動物の侵入は「夜間」に集中
ハクビシン、アライグマ、タヌキ、キツネ、ネズミ類などの多くの野生動物は夜行性の活動パターンを維持しており、人間の活動が減少する夜間にSCZ内へ侵入していることが確認されました。日中の観察だけでは侵入リスクを過小評価する危険性があることが示されました。
2.野良猫等の特有の行動
野良猫は他の野生動物とは異なり、昼夜を問わずSCZ内で頻繁に撮影され、農場環境に順応・定着している様子が捉えられました。また、イタチも昼間に活動する行動が確認されました。
【今後の展望】
本研究結果は、物理的な防護柵の維持・補修に加えて、野生動物の活動が集中する「夜間」に特化した衛生管理(夜間のゲート施錠徹底や隙間対策など)を組み合わせる必要性を示しています。さらに、野良猫等への不必要な給餌防止を含めた「統合的なバイオセキュリティ対策」を講じることが、家畜伝染病の伝播リスク低減に役立つと期待されます。
なお本研究成果は、農林水産省における安全な農畜水産物安定供給のための包括的レギュラトリーサイエンス研究推進委託事業「CSFの新たな総合的防除技術の開発」、清流の国ぎふ森林・環境基金事業:野生動物総合対策推進事業、ならびに2026年度部局推進プロジェクト『信州発アグリトランスフォーメーション(農X)の世界展開』事業の支援を受けました。
本研究成果は2026年8月26日に国際誌「The Journal of Veterinary Medical Science」にオンライン公開されました。詳細は以下をご覧ください。
論文タイトル:Activity patterns of small- and medium-sized mammals inside and outside a sanitation control zone on a pig farm
著者名:Takashi Ikeda, Tomoya Shichijo, Daishi Higashide, Akitaka Omori, Masatsugu Suzuki
DOI:https://doi.org/10.1292/jvms.26-0335

