ニホンジカが捕獲に対して時空間的に回避行動を示した事例を報告
野生動物管理学研究室の池田敬助教らの研究チームは、北海道洞爺湖中島に生息するニホンジカが捕獲に対して時空間的に回避行動を示した事例を報告しました。
ニホンジカは全国各地に生息し、年々、その数が増加しています。それに伴い、農林業被害や生態系被害、交通事故なども増加しており、これらの被害を抑制するために、各地で積極的な捕獲が行われています。
しかし、有蹄類は捕獲に対する回避行動を示すことが知られており、効果的な捕獲を実施するためには、ニホンジカの時空間的な回避行動を把握した上での捕獲計画の立案が不可欠と考えられています。
そこで本研究チームは、北海道洞爺湖中島においてカメラトラップ調査を実施し、捕獲圧[1]や遊歩道、地形と日中と夜間における撮影頻度の関係性を明らかにしました。
その結果、日中は銃による捕獲圧が高い地点を避け、観光客が多い遊歩道から遠く離れた山側で頻繁に撮影されたことから、ニホンジカが捕獲されるリスクの高い地域や人の活動場所を認識していることが示唆されました。
以上より、ニホンジカが捕獲への警戒心を強めている地域では、ニホンジカの時空間的回避行動の把握が、効果的な捕獲計画を立案するための一助になると考えられます。
本研究成果は、2025年2月27日に国際誌「Journal for Nature Conservation」に公開されました。詳細は以下をご覧ください。
タイトル:In the target sights―culling programs influence spatiotemporal avoidance behavior of female sika deer
著者:Takashi Ikeda 1, Yukiko Matsuura 2, Yoshiki Fujisawa 3, Takuma J Watanabe 4, Hiromasa Igota 5
著者所属:1信州大学学術研究院(農学系),2国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所北海道支所,3株式会社ルーラルエンジニア,4一般社団法人エゾシカ協会,5酪農学園大学環境共生学類
[1] 人による捕獲の強度・大きさを表し、ニホンジカの行動に影響する力のこと。