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令和5年度「高冷地域動物生産生態学演習」を実施しました

お知らせ農場系の実習

キャベツの収穫,箱詰め方法を習っています。この後,目の前のキャベツ畑に挑みます。
キャベツの収穫,箱詰め方法を習っています。この後,目の前のキャベツ畑に挑みます。
モッツァレラチーズ製造。よく伸びております。
モッツァレラチーズ製造。よく伸びております。
牧場で仔牛の哺乳を体験。
牧場で仔牛の哺乳を体験。

1.演習名
「高冷地域動物生産生態学演習」

2.演習の目的
牧場や畜産施設見学,飼料作物の管理,畜産物の加工,高冷地野菜の収穫などを通して,高冷地域における畜産と耕畜連携までを重点的に学ぶ。

3.実施日程
令和5年8月28日(月)~8月31日(木)

4.実施場所
農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター(AFC)
野辺山ステーションおよび構内ステーション

5.担当教員
今井裕理子,上野 豊,荒瀬輝夫,椎葉湧一朗

6.参加人数
44名

7.演習内容の概要

【1日目】演習の前半(1日目・2日目)は野辺山ステーションで実施した。午前中は近隣の牧場を見学した後,牧場主による酪農経営に関する講義を受けた。午後はJA出荷場と農家見学を行った後,講義形式で野辺山地域の気候と特徴,高冷地農業として高原野菜生産システムと複合農業について学んだ。また,野辺山ステーションで使用している機械,生産圃場,牧草地,家畜について説明を受けた。

【2日目】午前中はキャベツの収穫と出荷作業を行った。午後は放牧地の管理作業として,雑木除去と牧柵の設置を行った。作業終了後,利用した宿泊施設の清掃を行い,伊那キャンパスへ帰学した。

【3日目】演習の後半(3日目・4日目)は講内ステーションで実施した。午前中は上伊那農業高校を訪問し,牛の飼養管理や鹿肉解体加工について説明を受けるとともに,施設見学を行った。午後は,飼料作物の試験圃場でソルガムの育種について学んだ後,飼料用トウモロコシと食用トウモロコシの形態的な違いを観察した。また,牛のエサにするために,食用トウモロコシの収穫後の残稈の刈取り作業を行った。その後,牧草の播種作業と周辺の雑草除去を行った。

【4日目】午前中は,乳製品加工としてチーズができる原理を学んだ後,モッツァレラチーズの製造を行った。午後はレポートの作成を行った。

8. 成果

8.1. 全体的な評価
今回の演習内容について,演習の楽しさに関しては大変満足が参加者の62%,満足が35%,普通が3%(図1左),また有益さに関しては大変有益が参加者の62%,まあまあが30%,普通が8%(図1右)と全体的な評価は高かった。

1.演習の楽しさと有益さ.jpg

本年度は野辺山ステーションでの宿泊(1日目・2日目)を伴う実施形態であった。このため,実際に高冷地の環境を体感できたこと,高冷地の農業・畜産業の姿を見ることができたこと,普段できない高冷地農業を体験できたこと,友達との仲が深められたことなどが評価の理由として多く挙げられていた。また,実作業を通じて農業のやりがいや大変さを感じたこと,達成感が得られたことに対する評価もあった。なお,本演習の主な受講者は動物コースの2年生と3年生であるが,普段接する機会の少ない他学年と関わることができてよかった,という感想もみられた。

8.2. 各演習内容について
いずれの内容も大変満足または満足の評価が過半数を占めたが,放牧地の管理については他の内容と比べて満足度がやや低く,普通や不満という回答もみられた。

2.各実習・講義の評価に関するアンケート結果.jpg

今年度はJAの出荷場,牧場,上伊那農業高校(鹿肉解体加工施設)での見学を行ったが,これらの見学を通じて,講義だけでは理解しがたいことを理解できた,新たな発見があったという感想がみられた。また,高冷地野菜の収穫・管理(キャベツの収穫・出荷のための調整作業)や放牧地の管理などの作業を通じて,農業現場で実際に行われていることを体験できた点について評価する声があった。一方で,現場での作業については,暑かった,体力的に辛かったという感想もみられた。

8.3. 演習後,興味関心が増した事
演習後に興味関心が増した事については高い順に,食料22%,野菜17%,家畜17%,農業16%,高冷地16%,環境9%,その他(農業と教育)2%,ない1%という回答結果になった(図3)。

3.演習参加後に興味・関心が増大した事に関するアンケート結果.jpg

食料や野菜を挙げた理由の中には,チーズ製造が楽しかった,他の加工品についても知りたくなった,高校生が鹿肉を加工し美味しい肉製品を作っていることに感銘を受けた,といった食品加工への興味関心の他に,普段当たり前に見ている野菜がどのように収穫され流通されるのかについて学べたことや,野菜の物価変動について考えるきっかけになった,といった生産から流通に対して興味関心が増したという声があった。家畜や農業については,畜産経営の厳しさや工夫を知り,もっといろいろな農場の例を知りたいと思った,農業に関わるお金の問題について考えるきっかけになった,などの理由が挙げられた。

アンケート結果からは,食料・農業・家畜・野菜・高冷地・環境と複数回答が多く,横断的に興味関心が増大した傾向がみられた。今年度は見学先で生産現場の生の声を聞く機会が多かったことから,農業や畜産経営,流通といった大きな枠の中で現状や課題について理解を深め,様々な観点から考えるきっかけが得られたものと考えられる。

9. 今後の予定と改善点

本演習では,動物関連だけではなく広く農業に関する知見を広げられるように,野菜生産などを取り入れて実習内容を組み立てた。これに対し,アンケート結果では,様々な経験ができたことを肯定的に評価する声が多くみられた一方で,動物に関する内容を増やしてほしいという意見もあった。このような意見を反映できるよう,次年度以降のプログラムを再検討し,向上させていきたい。

なお,今年度は数年ぶりに野辺山ステーションでの宿泊を伴う演習実施であった。夏季休業中にコロナ感染者が急増する中で演習参加前の健康確認は入念に行ったが,体調不良者が発生した。参加学生に対する体調管理の徹底,慣れない環境下で過度な負荷をかけない実習の進め方,体調不良者への対応策など,工夫しながら,健康に安全に楽しく演習を遂行できる体制作りに努めたい。

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