平成30年度「森林利用デザイン演習」を実施しました
1.演習名
「森林利用デザイン演習」
2.実習目的
本実習の目的は,望ましい間伐方法や運材方法を検討・採用・実践する能
力,すなわち,素材生産に関する将来まで見通した森林経営のデザイン能
力を身につけることにある。実習は,林分状況を把握することからはじま
り,実際に林業機械の操作を行いながら,一貫した収穫技術の流れ,諸機
械の特徴および操作方法を学習する。
3.実施日程
平成30年8月27日(月)~8月30日(木) 3泊4日
4.実施場所
農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター(AFC)
手良沢山ステーション
5.担当教員
植木達人教授,小林 元准教授,齋藤仁志助教,白澤紘明助手
6.参加人数
14名(信州大学農学部12名,山形大学1名,酪農学園大学1名)
7.スケジュール
8.概要
本実習は信大農学部生を対象にしていた実習を他大学の学生も参加できるように,一昨年度より公開森林実習としたも
のである。本実習の特徴として,単一の機械や作業に触れるのではなく,素材生産における一連の工程を連続的に体験
するという点があげられる。このことにより,工程間の結びつきを実感し,路網と林業機械の組み合わせからなる生産
システムとしての素材生産作業を理解しやすくなっている。今回の実習は天候にも恵まれ,予定していたプログラム内
容を滞りなく行うことが出来た。
初日は伊那キャンパスに集合し手良沢山ステーションに移動した後,まず,ガイダンス,班分け,本実習で使用する林
業機械と素材生産システムについての概要説明を行った。続いて,チェーンソーを使用したことのない学生もいたため,
宿舎近くの土場にて受け口の作成などを通してチェーンソーの練習を行った。午後からは「搬出作業実習」を実施した。
実習は4班に分かれてローテーションで行い 以下の5つの作業工程に取り組んだ。路網作設(バックホウ),伐倒
(チェーンソー),集材(スイングヤーダ),造材(チェーンソー),積み込み(グラップル)。括弧内は使用した機
械である。
2日目は前日に引き続いて「搬出作業実習」を行った。さらに,対象林分における間伐施業の必要性を確かめるため,
林分調査を行った。実習地は48年生ヒノキ林であり,生産間伐は初めての林分であった。
3日目の講義では林内路網の役割や路網の合理的な配置,路網と高性能林業機械を活用した効率的な作業システムの導
入により安全性の向上や素材生産コストの削減等が期待できることを学んだ。加えて,実習で使用するハーベスタおよ
び油圧式集材機などの最新の林業機械をメーカーの方から説明を受けた。次に「高性能機械実習」を実施し,以下の作
業工程に取り組んだ。伐倒・造材(ハーベスタ),集材(油圧式集材機),薪割り(薪割り機),チッピング
(チッパー)。ここではハーベスタや油圧式集材機といった最新の林業機械を操作し,その利便性を体感した。さらに,
薪とチップを生産し,いわゆる未利用木材の有効な活用方法を学んだ。夕食時には受講生同士そしてスタッフとして参加
いただいたメーカーの方々との親睦を深めた。
4日目は前日に引き続いて「高性能機械実習」を行った。午後は実習の総括,閉講式を実施した後,伊那キャンパスに
移動し解散した。
9.感想および今後の展望と課題
アンケートからは,林業機械を見学するだけでなく実際に操作を行えるところが新鮮で,林業の機械化の流れや便利さ
を実感できるため,非常に満足度の高い実習であることが確認された。現場で実践的に素材を生産しつつ作業システム
を学ぶということは非森林系の学生はもちろんであるが,日ごろから森林・林業について学んでいる森林系の学生にとっ
ても,大変有意義な体験であったことがうかがえた。さらに,作業の安全性を考えることの重要性を考える良いきっか
けとなったとの回答もあり,経済性だけではなく,労働安全性が高く森林環境を損なうことの少ない作業技術が求めら
れていることも受講生は感じ取ったようである。
今回の実習では作業時間によって長くなってしまった工程,短くなってしまった工程があったため,来年度以降は上手
く作業時間を調整していきたい。今後も安全第一に努めながら,演習内容を充実し大学演習林で実際の素材生産作業を
学ぶ貴重な本実習を継続していきたいと考える。最後になるが,本実習では前田製作所,日立建機日本,イワフジ工業
の皆様にスタッフとしてご参加いただき多大なるご支援を賜った。ここに記して謝意を表する。
スイングヤーダによる集材作業
油圧式集材機による集材作業