先鋭領域融合研究群⼭岳科学研究拠点 加藤正人教授らの研究チームが環境計測分野(Environmental science)とリモートセンシング分野(Remote sensing)の国際ジャーナル「Remote sensing of Environment」に掲載されました。今後の更なるレーザセンシングによるスマート精密林業の実現に向けた取り組みが期待されます。
◆掲載ジャーナル
 環境のリモートセンシング「Remote sensing of Environment 」は、リモートセンシング研究の理論、科学、アプリケーション、センシング技術の国際ジャーナルです。Impact Factorは 9.085並びにCiteScoreは15.1、ジャーナルのランキング(Journal Citation Reports)は、環境科学分野(Environmental science:7位/265誌中)、リモートセンシング分野(Remote sensing: 2/30)です。

◆論文タイトル
  「Terrestrial laser scanning intensity captures diurnal variation in leaf water potential」

◆著者
  Samli Junttila, T. Holtta, E. Puttonen, M. Katoh, M. Vastaranta, H. Kaartinen, M. Holopainen, H. Hyyppa

◆研究の背景
 最先端のレーザセンシングによる山岳地形の詳細な三次元解析と森林動態解析について、当該分野の世界的権威であるHyyppa特別招へい教授ユニットのSamli Junttila博士(ヘルシンキ大学森林資源学部)を2020年2月9日から3月8日の1か月間招へいし,レーザセンシングによる森林の健全度、樹葉の水ポテンシャル把握の国際共同研究を行ってきました(写真1)。


 
写真―1 最先端レーザセンシングゼミナール           Junttila博士との集合写真


◆研究手法
 過去数十年の間に、異常気象や地球温暖化の影響で、干ばつが引き起こされ植物の死亡率は世界的に増加しています。植物の水の動態に関するタイムリーな情報は、干ばつによる植物の死亡率を理解し、予測するために不可欠です。通常は収穫して、破壊的に測定される葉の水ポテンシャルは、水ストレスを測定するために何十年も使用されてきた最も一般的な測定基準です。私たちは森林の広範囲な水分状況に関する情報を取得するために、レーザセンシングによる非破壊の計測手法を開発しました。

◆研究成果
 地上レーザの反射強度から樹葉の水ポテンシャルの変動の割合を推定できることを明らかにしました(図1)。最良の予測TLS強度変数は、すべての樹木(All trees)、マツ(Pine)1、マツ2、およびカンバ(Birch)の水ポテンシャルの変動のそれぞれ70%、71%、および77%を説明しました。最も強い予測因子は主に905 nm波長のレーザ反射強度でした。905_D25(密度変数)、905_p20と905_p60(最大強度と最小強度の差の割合)、および905_min(最小強度)です。

             
           図1 地上レーザの反射強度と水ポテンシャルの変動の割合
 
 研究チームはレーザセンシングによるスマート精密林業の技術開発を進めています。地上レーザ計測から非破壊で樹葉の水ポテンシャルを診断できる技術開発を行いました。今後は、広範囲に航空機やドローンのレーザセンシングでマツ枯れやナラ枯れなど樹木の健康診断のモニタリングに応⽤していきます。