山田明義准教授が主導する共同研究チームのマツタケに関する新たな論文が国際誌 "Mycoscience" に公開されました。
なお、本研究は日本を含む7カ国の国際共同研究の成果です。

 これまで未発見であった東ヨーロッパのマツタケをウクライナで発見しました。これにより、マツタケのユーラシア大陸全体における地理分布を分子系統学的観点から見直し、日本を含む極東とヨーロッパの集団が近縁な一方で、チベット高原山麓の集団は遺伝的に隔離されていることを明らかにしました。これらの広域地理分布を考えるにあたり、分類学的にマツタケの基準となる標本が1925年の新種記載以来指定されないままとなっていたことから、新たに長野県産の標本をエピタイプに指定しました。


【掲載概要】
 マツタケは世界で最もよく知られた食用野生きのこの一種です。代表的なマツタケは、東アジアとヨーロッパの北部・中部地方が原産地です。今回、東ヨーロッパ(ウクライナ)のモミの木の下にマツタケが生息していることを、核ゲノムとミトコンドリアゲノムの9つの遺伝子座の系統解析により確認できたため報告します。日本、ブータン、中国、北朝鮮、韓国、スウェーデン、フィンランド、ウクライナのすべての標本は、内部転写スペーサー領域の系統樹によるとT. matsutakeクレードを形成していました。マツタケのヨーロッパ集団は、β2チューブリン遺伝子に基づいてクラスター化し、ブートストラップ値も中程度でした。一方、ブータンおよび中国産のマツタケは、rpb2、tef1およびβ2チューブリン遺伝子の3つの遺伝子座の解析から、本種の他の個体とは独立したクレードに属し、遺伝的に隔離された集団であることが示唆されました。マツタケは1925年に日本産の新種として記載されて以来、生物学的に利用可能なタイプ標本が指定されていないため、長野県のマツ林から採取した本菌のエピタイプを確立しました。
キーワード:生物資源保護,食用菌根菌,レクトタイプ,集団解析
記事履歴 Received 2022年5月2日, Revised 2022年7月26日, Accepted 2022年7月26日, Available online 2022年9月30日




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